32 広がる輪
てなわけで私はお腹が空いたので帰ることにする。何せ昼飯を食べてない。
ノインさんはと言うと、国王に報告するとのことで、使いっ走りの人に手紙を渡していた。
私のことが詳しく書かれているらしい。
ちゃんと可愛く書いてよね。
それにしてもほんとにお腹すいた。
ぅ〜〜! カレー食べたい。
イリアさんにカレー作ってもらお。
まぁ実際はセルニアさんが作ってるんだけど。
「ただいま〜」
「あら、リンちゃん」
「リン! おかえり」
「リンお姉ちゃん!」
家族総出で、何事もなくお出迎えだ。そして相変わらずセルニアさんはどこに行ってるの。さっきまでみんなで避難してたよね。なんでもういないの。
「いやぁ、お腹すいた。イリアさんご飯作ってくれない?あ、今日は友達もいるから、2人分お願いしたいんだけど………」
「構わないわよ」
「できるって! よかったねシーナ」
「ありがとうございます!」
………
…?
沈黙が流れている。
「ねえ母さん? シーナってどこかで聞いたような気がするんだけど」
「シーナさん……私もどこかで聞いたことが……」
次の瞬間、2人の顔が驚愕に変わる
「「ま、お、お、領主さまの御令嬢!?」」
今更だけど、私の横にはシーナがいる。
私が帰ると言ったとき、ノインさんに「わたしもリンとご飯食べたい」と駄々をごね出した。
いや、あんたさっきまで死にかけてたでしょ。家族団欒しなさいよ。と思ったけど「なに。せっかく体も良くなったんだ。当分は好きなことをするといい」とノインさん。
甘やかしすぎちゃダメだよ。
そしてテアは相変わらずシーナの腕の中だ。道中なにやら私のことで盛り上がっていた。
私にそんな盛り上がる要素ある?
「初めまして。シーナ・デューセルと申します。私は領主の娘ではありますが、今はリンの友達として、来させてもらいました。どうか、かしこまったお気遣いはおやめください」
「え、え、え、っとそんな急に………言われても……えっと………」
セリが慌てている。
「シーナおねえちゃんはリンおねえちゃんのおともだち?」
「そうよ。リンは私の命の恩人であり、大切な友達なの。あなたのお名前はなんていうの?」
「わたしセア! シーナおねえちゃん。よろしくおねがいします!」
「うん。こちらこそよろしくねっ」
セアは相変わらずコミュ力半端ねぇよ。
私にも分けてくれ。
「シ、シーナ様! 娘が失礼を……」
「あらやだ。イリアさん? こんな可愛い女の子とお話ができるんですよ?どこに失礼なことがありますか?」
ダメだ。シーナは廃人の部類かもしれない。
可愛いものに目がなさすぎる。
普通は我が子が領主様の娘様と喋ってたらイリアさんの反応になるでしょ。
「まぁまぁ、イリアさんも、シーナは私の友達として来てるんですから、そんなにかしこまらないでくださいよ」
「リ、リンちゃん……いつの間にシーナ様とお友達に……」
「まぁ、色々あってね」
「色々って……リンちゃんまだこの街に来たばかりでしょ。それに、シーナ様の抱いているそちらのお方は…?」
「あぁ、この子は私の新しい家族だよ。テアって言うんだ。可愛いでしょ?」
「てあ! かわいい!!」
真っ先にセアが反応する。テアの元へと駆け寄る。テアが「くすぐったいじゃろ」と言っているけど、相変わらず尻尾がゆれている。かわいい。
セア×テアか。なんか似てるね。ちっこい2人がじゃれあってると、見てるこっちまで癒されるよ。
そしてその横でセリは口をパクパクさせている。
「セーリーーー!」
「な、なに!?」
「なんにもないよ」
「な、なによ! なんなのよ! リンは今なんなのよ!!」
テンパってるセリもかわいい。
そのあと各々が改めて自己紹介して、みんなで食事をとることになった。
「ほんとに、リンちゃんのおかげでカレーの売り上げが好調になってきてね」
「わたしも初めて聞いた時はびっくりしたけど、実際にみんな美味しいって食べてくれるから余計驚いたわ」
私はカレーに卵を入れることを提案したのだ。
辛いのが苦手な人は、卵や牛乳を入れて食べる。
当たり前のことだ。逆に、なんでこの世界の人たちはカレーに卵を入れようともせず、辛いから食べれないとか言ってるの?
信じられないよ。
「もうリンちゃんには感謝しきれないわね」
「もしかして、皆さんもリンに助けてもらっているのですか?」
「そうよ。全く。この恩はどうやっても返せる気がしないのよ。返すどころか知らない間に増えていくのよ」
「私もリンに助けられたので、その気持ちわかります」
「シーナ様もリンちゃんに?」
「えぇ。私に至っては命を助けていただいて」
「リンちゃんは、また人の命を救ったのね。私たちも命を救ってもらったのよ」
「ちょ、ちょっとイリアさん! そんな大袈裟に言わないでくださいよ! それにシーナも! あれは本当にたまたまうまくいっただけで………」
「ふふふ。妾もリンに助けられてのう。あのままじゃったら、今ここに妾はおらんかった」
「ちょっと、テアまでなに言ってるのよ!」
「ふふふ。事実じゃろ」
「もーーーっ!!」
私が皆んなの間に挟まったことで、みんな会話が弾み、打ち解けることができた。
一方、夜遅くに帰ってきたセルニアさんがシーナさんの存在を知り、衝撃で気絶したのはあの場にいた者だけの秘密になった。




