30 約束
目の前には、完全に透明化から解放されたシーナがいる。
しかし、私が魔法で眠らせているので、起きることはない。
起きて早速体力がなくてしんどそうなシーナは見たくないので、起こす前にヒールをかける。
ちょうどその頃、ノインさんとクレア、カイルさんまでシーナの部屋やってくる。
カイルさん暇なの?
その後、ゆっくりとシーナにかけた魔法を解除する。
テアが「リンもなかなか非常識な魔法を使うのう」と言っていたが、私はイメージしただけだ。
すると、シーナが目覚ます。
「シーナ。おはよう! もう大丈夫だよ」
「リン……?」
どうやら、あの意識朦朧としていた中でも私のことを覚えてくれていたらしい。
なんとも嬉しいことだ。
「シーナ………!!!」
「お姉さま!!!」
私が2人に笑顔で頷く。
すると、以前は歯を食いしばってただ見つめることしかできなかったノインさんとクレアが、シーナの元へと駆け寄り、抱きしめる。
「シーナ……シーナ………すまなかった……」
「お姉さま……もう……もう…」
「2人とも、やめてちょうだい。くすぐったいわ…」
うん。元気になったみたいだね。
シーナの魔力を調べてみると、器に9割以上の魔力が入っている。
というか、私が多目に入れといたのだ。
もうあんな思いはしてほしくない。
かといって10割入れてしまうと、もしもの拍子に魔人化してしまう可能性があるかもしれない。
あの時わかったのだが、この世界の人たちの魔力は器に2割程度しか入ってなかった。だからまんべんなく5割近くまでしておいたのだ。
もちろん個人差はあるけど、許してね。
もし魔力が余れば、もう一度分配すれば良いと思っていた。
しかし、なんとこれまたちょうど良いことに、世界中に5割ほど配布し、私とテアに魔力を補充したところでバケモン魔法陣は壊れた。
そして、もう一つ気づいたことがある。
魔力の自然回復についてだ。
どうやら、魔力は自然に回復する。
これは当然の仕組みだ。
しかし、自然回復する最大値は器の大きさではないことがわかった。
自然回復の最大値は、自分の経験した最大魔力量までだった。
つまり、今この世界の人たちの魔力の最大値は、器の容量ではなく、器の5割程度になっている。
魔力の自然回復スピードについてはまだ要検証だが、どうやら個人差がある。
シーナの場合は、バケモン魔法陣に取られていたとは言え、人より自然回復が遅いことが予想される。
もし自然回復量が多ければ、透明化する前に自然回復できていただろう。
だからこそ私は9割程度の魔力をシーナに込めた。自然回復のスピードを補うために。
決してシーナを脳筋にしたかったわけではない。
信じてよ。
ちなみに私の回復力は、尋常じゃなかった。
さて、家族団欒も終えたところで、シーナが私に尋ねる。
「リン。本当にありがとう。私がお礼できることなんて、今は何もないかもしれないけど、もし私にできることがあったらいつでもいってくれるかしら」
「それなら、約束、覚えてる?」
すると、シーナは微笑む。
「もちろんよ? リンはもう私の大切な友人よ」
「っ……!!!」
「それにそちらの可愛らしい子も、私の友人ね。すごくかわいいわ」
「ふん。妾が可愛いのは当然じゃ」
テアが可愛いなんて、シーナは見る目があるね。
「それで、リン。シーナの元にいなかったお前が、どうやってシーナを救ったんだ? いやそれ以前にその…ドラゴンについてだが………」
まぁそうなるよね。
どこまで話していいのやら。
『どう思う?』
『妾はこの世界に来て以来閉じこもっておったからな。この世界についてほとんど知らんのじゃ。じゃが、転生したことについては黙っておいた方が良かろう』
『私もそう思ってた。やっぱテアと私は気が合うね!』
『たまたまじゃ』
「えっと、まぁ別に話したくないわけではないんですが、歴史的に少しまずいことになるので、知らない方が良かったとなる可能性もあります」
「それほどか?」
「それほどだと思います」
「では、一部の人間だけに話すというのはどうだ? 私だけでも良い」
「私はノインさんにというより、シーナの家族に知って欲しいと思ってます。シーナにとっては自分が苦しめられていた原因だし、ノインさんやクレア達は、家族が苦しめられきたんです。とても耐えられるものじゃなかったと思います」
私がテアを失ったら、もう立ち直れないかもしれない。それほどに私はテアに惹かれているのだ。
いや、ノインさん達はそれ以上の苦痛を、何年間も味わってきている。
見ず知らずの人に今回のことを話すつもりはないが、この人たちは別だ。
「ノイン達の家族の話だ。俺は関係なさそうだな。終わったら呼んでくれ」
「カイルさんにも聞いて欲しいと思っています」
「なぜだ?俺は関係ないだろう」
「カイルさんがあの洞窟の見回りをしてくれていたおかげで、私とテアが出会うことができたんです」
「それは務めだからな。たまたまだ」
「まぁ、いいじゃないですか。事実ですし。それに、カイルさんだって、ノインさんは大切な友人なのでしょ。そんな友人が悲しんでる姿を見て、何も思わなかった訳じゃないと思います」
「………」
「というわけで、ここにいる皆さんにお話ししようと思うんですが、1つだけ約束を守ってくれますか?」
「リンの頼みだ。娘を救ってくれた手前裏切るわけがなかろう。」
「私も、お姉様を助けていただいたご恩を裏切ることはできません」
「俺も、問題ない」
ノインさん、クレア、カイルさんが約束を交わしてくれる。
最後に
「友達が嫌がることをしないのは、当たり前よ」
シーナがそう私に微笑んだ。




