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「リンさん? あなた正気なの?」

「もちろん」

「フィリアさんからも何か言ってあげて」

「いやぁ、ウチにはもう止められへんのです」

「フィリアさんが止められないって…一体どういうことなの…」


 もちろん、毒ガスに飛び込もうって話じゃない。

 とりあえず近くまで行けば何かわかるかもしれないからね。

 まぁ、偵察みたいなものだ。


 もしかすると、ハーフフェアリーのセシアなら何かわかるかもしれない。

 最近セシアはずっと、テアの妹であるロアと一緒にいる。

 サリナさんがセシアに学院での研究を与えて以来、ずっとロアと2人で引きこもって研究している。

 まだそこまでの時間が経ったわけではないけど、かなりお似合いのカップル(?)だ。


 なんてことを考えていると、しばらく黙り込んでいたカレナさんが口を開いた。


「わたくし達は包み隠さずお話しすると誓いましたわ。けれども、それとこれとはまた別です。あなた方お2人を危険な目に合わせるわけにはいきません」

「ですよね」

「けどカレナさん。こうなったリンちゃんは、そう簡単には引きませんよ」


 フィリアが私を呆れたように見てくる。


 何よその目は。


「それは困ったわね…好奇心があるのは良いことだけれど、あまりに危険すぎるわ」

「もちろん私が解決するなんて、おおそれたことは言えないですけど、何かわかることがあるかもしれませんし」

「ならば、約束してちょうだい。わたくしが指示した場所までしか行かないと」

「それは、安全だと保証されている場所まで、ってことですよね」

「えぇ。そこまでは確実に毒の効果が及ばないことはわかっているわ」

「………わかりました。約束します」


 とりあえず、その場所からどこまで把握できるかはわからないけど、確実に毒の効果が及ばないと言うことは、私が毒を受けられないということだ。


 困ったもんだ。


 この脳筋ボディでも耐えられるかどうか気になっていたけど、それはまたこっそりと一人で実験することになりそうだね。


 とまぁ何も、私だってただ毒を喰らいたいだけではない。

 もし毒の成分とかがわかれば、そこから繋がる話もあるということだ。


 例えば…


「あの、その毒の被害に遭った人というのは今どうなっているんですか?」

「そうね。良くも悪くも、体質や毒にさらされていた時間によるから、個人差があるの。良くて咳程度、最悪の場合は死んでしまうわ」


 なるほど。


「つまり、毒の効力によって今も苦しんでいる人がいるということですよね」

「えぇ。もちろん面倒を見ているのだけれど……」


 あとは察してくれ、ということだ。


 カレナさんはこんなに優しい人だ。治療してあげたい気持ちはあるのだろうけど、解毒できるほどの優秀な治癒師になればなるほど、国にとっては貴重な人材だ。


 そしてなにより、毒が伝染しないとも限らない。


 つまり、治癒師としてはあまり腕のない者たちや、メイド、家族などが世話をしたりしているのだろう。


 まぁ聞いた感じ、細菌性やウイルス性のものではなさそうだから、実際のところ感染はしないだろうけど。


 さて、私は薬剤師でもなんでもないから、薬を作ることはできないけど、脳筋魔法で毒の成分を体から抜いたりできるかもしれない。


 てか、出来なければあの神様をぶん殴ってやろう。

 こういう時のための脳筋魔法だ。


 しかしまぁ魔法でゴリ押したとバレると、ちょっと困る。

 どう説明すりゃいいか考えるのも面倒だ。

 

 うーん…


 んっとー…




 あっ…!

 

 私の知り合いの治癒師(架空)を登場させ、適当に誤魔化そう。


 私が実際に目の当たりにした毒の特徴や、吸ってしまった人の症状などを治癒師(架空)に伝えて毒の成分を分析してもらい、薬を作ってもらった、とカレナさんにはそう伝える。


 そしてその薬を飲ませる。

 もちろん、薬の中身は適当に用意した苦い粉末だけどね。


 そんで、薬を飲んでる最中に、こっそり治癒魔法でも使って治してあげよう。


 架空の知り合いのことは、相手の希望で正体を明かさないことにしとけば、問題なかろう。

 

 カレナさんも、謎の治癒師(架空)が正体を明かしたくないと分かれば、そこまで追求して来ないはず。


 ふっ。

 私、天才だ。


 まぁ人を騙すのは少し心が痛む。

 特に、カレナさんのような出会って早々確実にいい人そうなオーラが出てる人を騙すなんて、尚更だ。

 

 けど私の場合は、何でもかんでも馬鹿正直に話すと、とんでもないことになりかねない。


「リンちゃん」

「あっ、ごめん」


 危ない。また1人の世界に入っていた。

 

「明日、朝ご飯を食べてから出発にしましょう」

「そんな急に大丈夫なんですか?」

「えぇ。ちょうど我が国が誇る魔法師も帰って来るところだし、護衛も万全よ」

「ほほう…」


 つまりこの国の最大戦力にほぼ等しいと。


 これでとんでもないのが来たらどうしよう。


 ……良くも、悪くも。

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