253 交渉…?
「美味しいっ……!」「まぁ、なんとも美味しいケーキでしょう」「ウチまでいいんかいな…にしてもほんまに美味しいな…」
さて、3人にはアリシアさんのケーキを召し上がってもらっている。
ミルクケーキを出そうと思ったが、カロリーのことを言った手前、あんなカロリー爆弾を出すわけにはいかない。
というわけで、3人には抹茶ケーキを出した。
どうやら抹茶そのものが初めてだったらしく、特にカレナさんがだいぶ気に入ってくれたみたいだ。
そのうち、抹茶探しの旅もしないとだ。
私も、抹茶自体を飲む習慣はなかったけど、抹茶味のものはよく食べてた。
抹茶アイスとか久しぶりに食べたくなってきた。
…って、そんな話は置いといて。
「それで、さっきの話なんですけど」
「グレイス王国から、潤滑油をいただけるという話ね?」
ルナ様は抹茶ケーキに夢中だ。
代わりといっちゃなんだが、カレナさんが話を聞いてくれている。
「あれも便利なものなんですけど、やっぱり使いすぎるとあまり良くないというか」
「そうね。わたくし達としても、代替品を日頃から研究しているの。実際に、これまで頼り切っていたことで今回のようなことになっているわけだから」
環境が云々という話ももちろんそうだけど、便利なものに頼りすぎるというのも、あまり良くないという話だ。
「カレナ様、ちなみに、今回の件はどこまで話せるんや?」
フィリアがカレナさんにそんな質問をした。
私たちは国からすれば部外者だ。
けど同時に、あまり聞こえがよくないかもしれないけど、国の中でも特に大切なものを守るために力を貸す、という立場でもある。
なぜそんなことが起きたのか、どういった管理だったのか、これからどうするのか、などなど、ある程度のことは把握しておきたいというのもまた事実だ。
「フィリアさんとリンさんが知りたいことは、全てお話しすると約束しましょう」
「「………えっ?」」
あれっ?
そんな簡単に話していいの?
国同士が自分達の秘密を隠し合いながら言葉巧みに…みたいなんじゃないの?
「私たちはすごく助かるんですけど……だ、大丈夫なんですかそれ」
「もちろんですよ。そもそもわたくし達としては、グレイス王国とは仲良くさせて頂いていると自負しております」
確かに、交通の便があまりに悪すぎるだけで、両国の交友関係は私でもわかるぐらいに良い。
なんせ、食事に生肉を出してくるぐらいだ。
食あたりぐらい、あの国王ならなんとかなると思ってるんだろう。
…まぁ実際なんとかなるんですけどね。
「ちなみに、私って料理人なんですけど大丈夫なんですか?」
「ふふ。ただの料理人がこんな扱いされないわよ」
「げっ。バレてました?」
「フィリアさん相手にここまでできる料理人も、そもそもフィリアさんが護衛に付く料理人も、ね」
そりゃそうだ。
「けど、わたくし達としてはそこはあまり重要ではないのよ」
「と、言いますと?」
「リンさんが料理人であろうと、仮に料理人でなかったとしても、グレイス王はリンさん、そしてフィリアさんを国の人間として認めて、わたくし達の元へと導いてくださった」
なるほど。
「ここの道中を考えればわかったでしょう? それほど楽な道のりではなかったはずよ。そうまでして巡り合わせて下さった方よ。信じない方がおかしいわ」
うん、一理ある。
常識的な強さで考えると、ここまでの道のりはそれなりに大変なものだ。
「けど、もし私たちが使い捨ての駒で……」
「失礼かもしれないけど、リンさんだけならそのような考えになるかも知れないわね」
「けど、フィリアと一緒となればそうはならないと」
「ふふ。わかっているのに言わせないで欲しいわね」
フィリアは国にとって貴重な人材だからね。
「もちろん、あんなに美味しいものを食べさせてくれたんだもの。わたくしの中ではリンさんは素晴らしい料理人よ」
「えへへ」
こんな可愛いお姉さんに褒められると、つい顔が緩んでしまう。
そういえば、カレナさんもドワーフだったりするのだろうか。
というか、ルナ様もドワーフ…?
言い方が良くないかもだけど、ドワーフって、もう少し野生みのあるイメージだ。
この2人から、今のところドワーフ感は感じられない。
キッズと、上品で綺麗なお母様……いやお姉様だ。
そう、改めて言おう。キッズとお姉様だ。
「それで、今の状況を説明するわね」
「はっ、はい!」
現実に戻ってきた。
ひとまず、ドワーフ云々は置いておこう。
「この国にはいくつか鉱山があるのだけれど、潤滑油の原料はそこで採れるの」
まぁ、石油だか鉱物だかは分からないけど、そんなところだろう。
「けど、今は1つの鉱山からしかその原料は採れていないの」
「つまり、他の鉱山は枯れてしまったということですか?」
「ええ。とはいえ完全に枯れたというわけではなく、少量は採れているの。今はそこでギリギリ賄っているという感じね」
まぁ、石油といったものは有限だ。
無限に湧いてくるものではなく、そのうち枯れてしまうというのは当たり前の話だ。
「それで、今主要になっている鉱山も枯れてきたということですか?」
「いえ、違うの」
「えっと?」
「実は、鉱山の奥にガスが充満してしまっているの」
「ガス…?」
「えぇ。ガスと言っていいのかもわからないけど、奥に入ると次第に力が抜けて、倒れる、そして最後には死んでしまうの」
うーん…
何かのガスで中毒になってしまうということかな…?
さすがの私とてガスと言われると、どう対処していいかわからない。
息できないと、さすがの私も死んでしまうよ。
「それで、原因とかはわかっているんですか?」
「今、調査しているんだけど…」
「中に入れないから、調査という調査はできていない…と」
「えぇ。お恥ずかしい限りよ」
「いやぁそれはさすがに無理ですよ…フィリアはどう思う?」
「リンちゃんはウチをなんやと思ってんねや? さすがのウチも息せな死んでまう。そういうリンちゃんはどうなん」
「同じく」
イオなら、もしかすると可能性あるかも…?
「リンちゃんが思ってるのも、恐らくあかんと思うで」
「そうだよね」
イオもダメっぽいか。
『妾も行ってみないことにはわからぬな』
『まぁそりゃ私もそうだけど』
『しかしまぁ』
『分身体ならなんとかなるかもね』
『ふっ。同じことを思っていたようじゃな』
どうやら、テアと同じことを考えていたらしい。
分身体なら、中に入ることは可能だ。
戦闘になると少し困るけどね。
「とりあえず交易云々は、またゆっくりと話し合うとして、私たちをその鉱山へ案内してもらえませんか?」




