25 私、ドラゴンと合体します
どういう訳か、そんな訳でテラリアと融合することになった。
魔法陣を破壊するだけなら別に融合しなくてもいいじゃん。
と思ったけど、どうやらユウトは魔法陣の力で侵入者を撃退するような仕組みを作っていた可能性があるそうだ。
その撃退システムは奪略された魔力に比例して強力になるというのが筋だろう。
だから、融合してお互いの魔力、つまりは力を底上げさせる必要があるらしい。
ドラゴンと融合というとんでもない事態を前に、肝心の理由を聞いていないままだったよ。
ちなみにカミサマは腹が減ったとやらで早々に帰っていった。
なんだあのジジィ。
これは私もジジィ呼びが定着しそうだ。
「妾のいた世界では融合はありふれた魔法での。あのジジィと解決策を考えていた時、ちょうど今のような状況を作って戦うということに決まったのじゃ」
「テラリアって、なんか、すごいね………」
「まぁそれほどでもあるまい。妾も最初は魔力が有り余っていたんじゃがの。あのジジィと連絡するのに膨大な魔力を使う上に、ジジィが転生させたマヌケの作ったバカな魔法陣のせいで、妾の魔力の回復も中々追いつかんでの」
「あのジジィ災厄だね……」
「リンもそう思うじゃろ?」
「うん。1発殴るべきだと思うよ」
「じゃろ? じゃろ? 妾はリンとは仲良くできそうじゃ。ふふふ」
テラリア可愛いよ。抱きしめたい。
なんか改めてみると、すごく可愛い。
推せる。
犬派か猫派か聞かれたら、ドラゴン派と答えてしまうレベルには推せる。
「それでテラリア。融合ってどうすればいいの?」
「待っておれ」
テラリアが私の胸の前に飛び込んできた。
反射的に受け止めた。
えっ、可愛い。飼いたい………。
硬いはずなのに柔らかさを感じる……。
あったかい。
それに、鱗のような羽のような、なんだろうこの感触。
はぁ癒される…………。
「リンよ。いつまで妾を撫でておる」
「あっ!! ごめん……つい………」
「ふん。まぁよい。撫でられるのは嫌いではない」
かっ………かわいい………!!!
ドラゴン尊い……っ!!!
「ね、ねぇそんなことよりさ、融合ってどうするの?」
「見ておれ」
すると目の前にいたはずのテラリアが消えた。
え、私の推しが消えたんだけど。悲しいよ。
『リン。聞こえるか』
「テラリアっ! どこにいっちゃったの!?」
『妾はリンの中にいる』
「これが融合!? なんか、言われてみればすごい魔力を感じるんだけどっ!」
『融合魔法は使ったものが、その対象に融合する。融合というよりは憑依に近いかもしれぬな。それに、頭の中で妾に念じれば声に出さずとも会話できる」
便利な機能だ。
『えっと、こうかな?』
『聞こえておるぞ』
うぉー! すごい便利な機能だこれ!
いつでも推しと会話できる………!!
『リン。考えていることもわかるぞ。推しとやらは妾のことか?』
「な、あぁ!! なんでもない!! なんでもないよ!!!」
思わず声に出る。
『そんなに慌てるでない。あと言うのを忘れておったが、妾がリンの体を動かすこともできる』
すると、私の体が自然と、しかし無意識に動く。なんか変な感じだ。
『こうすることもできるでの。まぁリンの許可がなければもちろん勝手に動かしたりはしないから安心せぇ』
『テラリアのことは信頼してるし、大丈夫だよ!』
『そうか。ならよかった』
『テラリアにひとつお願いがあるんだけどいい?』
『言うてみろ』
『テアって呼んでいい?』
『……! 妾は構わん』
「やったぁ! テア! よろしくね!」
『声に出さずともわかるからそうはしゃぐでない。全くリンは…』
テラリアって言いにくかったから良かったー!
なんか、もっと仲良くなれたような気がする。友達っていいね。
『(テア……っふふふ。悪くないの)』
『うん? 何か言った?』
『なんでもない。そろそろ例の場所に着くぞ』
そんな会話をしているうちに、目的の場所に着いたみたいだ。
探知魔法を使ってみる。
うん。なんの反応もない。
『やつも頭は良かったんじゃろう。探知魔法を阻害する魔法も仕掛けてある。ありえんほど魔力を溜め込んでいるのじゃ。阻害せん限りは丸見えじゃ。それに、溜め込んでおる魔力に比例してその阻害の力も強くなっておる』
『うーん。そっか…』
『リン。今は妾がおる。今リンが使ったのはリンの魔力じゃろ? 妾の魔力も込めてみろ』
そういうと、体の中に別の魔力が流れてくる。
これがテアの魔力……。すごい……。
っ……!
なにこれっ……!!
なんか、すごい……!
テアの魔力を感じた後、再びその魔力も込めて探知魔法を使う。
っ!? なんだこれ!?
扉の中から、あり得ないほどの魔力反応がある。
この魔力量は、頭がおかしい。
もうそんな程度の感想しか出てこない。
『全くバカなことをしよって』
『ほんと同感だわそれ』
これは先が思いやられるぞ……。
『テアさ、もしかして戦闘は得意だったりする?』
『まぁリンよりかは得意じゃろう。妾の前世は争いばかりであった。しかし人間の体では勝手が違うものでの。もしリンにこの体を託されたとしても力になれるかはわからんぞ?』
『いいよ。テアを信じる。それに、私なんて脳筋で誤魔化してきただけで、戦い方なんて1ミリも知らない。それならまだテアに任せたほうが勝ち筋はあると思うんだ』
『む。なら少しだけ時間をくれ』
そう言うと私の体が動き出す。体が軽い。テアが考えていることはわからないが、私の体が様々な動きをする。
『ふむ。しかしこの体は思い通りに動かせるな。余程あのジジィに気に入られたんだろうの』
『なんか嬉しいような嫌なような……』
『ふふふ。まぁ強い身体で困ることはあるまい。ちなみにじゃが、魔法はどの程度使えるのか?』
『うーん、私も前世の記憶があるから、おそらくこの世界じゃ誰も出せない威力を出せるし、テアの世界でも少しは戦えるような魔法は使えると思うよ』
『ふむ、それは心強いな。では、もし敵が出た場合は妾が足止めし、隙を作る。妾が合図したらリンは最大火力で魔法を放ってくれ。あの部屋も多少強力な魔法を使ってもそう簡単に壊れはせんと思うしの』
『わかった。もし敵を倒した後、この洞窟が崩壊しそうになった時は、私の魔法で転移するね』
『了解したぞ』
『じゃあ、開けるね』
私は、古びた扉の前に立つ。先程のように大きくはない。人が2人通れるくらいだ。
扉に手を当てる。
やばいな。体が、精神が、拒絶してる。
この扉の中に入ることを拒絶している。
『リン。今は妾と2人じゃ。妾を信じろ』
そうだ、私は今テアと2人なんだ。2人で戦っているんだ。
テアのことを頭に強く浮かべる。
扉が開き始める。
『第一段階は突破じゃ。扉が開いたら、来るかもしれんぞ』
ゆっくりと、着実に開いていく。
が、何かが襲ってくる気配も、仕掛けが動いたような気配もない。
………
…
「あれは…」
『噂の魔法陣じゃな』
そこには直径30mほどの魔法陣が、部屋の真ん中、その床に描かれていた。




