24 魔力奪略計画
「ホッホッホッ」
懐かしい声が響く。
カミサマじゃん。
「テラリアにリンか。ようやくお前らが巡り会ったのじゃな。とは言ってもリンには1週間少ししか経っておらぬようだ。予想より早かったのう」
「ようやくなのか早いのかどっちだジジィ。お前もいい加減にせんと、しまいにそこから引きずり出して2度と口が聞けぬようにしてやるぞ」
「ノホホ、相変わらず元気が有り余っとるのう。テラリアは」
「殺すぞジジィ」
テラリアが、怖い。
見た目はちっこいぬいぐるみみたいなドラゴンで、かっこ可愛いのに。
言っていることが怖い。
このオジサンも一応カミサマだよね??
「あ、あの………」
「すまんな。リン。妾はこのジジィに騙されて偉い目に遭ってな。リンにもそのうちわかる時が来よう」
「えっと、私は異世界に転生できたことに感謝してるから、多少の面倒ごとなら大丈夫だと思う」
「見ろジジィ。こんな真面目で優しい他人想いの可愛らしい女の子をお前はまた騙しているんだろ?お前に良心は無いのか?」
「まぁテラリアよ、そう怒るでない。リンよ。すまんがリンには言うていなかったことがあってな。この世界についてのことじゃ」
ま、まぁ今から異世界転生するぞっー! って時に、そんな片っ端からその世界について説明されても困るよね。
私なら間違いなく面倒くさくなって途中で聞くのをやめると思う。
てなわけでカミサマがこの世界について説明してくれるらしい。
今なら多少長くても聞けそうだ。
「この世界は今のまま放っておけば生き物が棲めなくなってしまうんじゃ。まぁ、人間についても例外ではない」
「え!?」
いきなり衝撃的すぎない?
もっと可愛げのある世界じゃなかったの?
みんなやたら平和って言ってたよね???
「リンは、この世界のことを調べておったじゃろ? ワシも見ておった」
冷静に考えたらそのシステム怖くない?
あんなことやこんなことしてる時でも覗かれてるってことじゃん………。このオジサン気持ち悪いよ………。
カミサマの信頼が一気に地の底へと落ちた。
「安心せい、見たといってもそこらへんのモラルは弁えておる。四六時中詳細まで監視しておるわけじゃない」
「うぅ………ほんとですか………」
「もちろんじゃ」
「このジジィの言うことはあんまり信じるなよリン」
「テ、テラリア………。わかった。そうする」
「ってオォい! ワシも腐っても神じゃて! 2人してそんな悲しいことは言わんでくれ」
「黙れ神外」
「人外みたいに言うでない」
なんか、夫婦漫才みたいでほっこりする。
「それで、リンよ。英雄について調べたと思うのじゃが、思うように情報が出んかったじゃろ?」
「うん。なんか不自然なほどに曖昧な情報しかなくて」
「まぁ、そうじゃろうな。色々と説明せないかんのじゃが、とにかくその英雄の話をするとしようかの」
そう言ってカミサマはこの世界にいた、過去の英雄の話を始めた。
名前は、カンダ・ユウト。どうやら私と同じ日本人の転生者で、このカミサマが転生させたらしい。
同じ日本人と言っても、別世界の日本があるそうだ。
「えっと、私の住んでた世界以外にも日本があったという事ですか?」
「そう言うことじゃ。お主らにとっては少し変かも知れんがな」
パラレルワールド的なことかな。
「ジジィ、さっさと本題に入れ」
「ま、まぁつまるところ、いろんな世界の中からユウトを見つけての。そやつ、どれをとっても言うことなしに完璧な人間だったんじゃ。それでユウトの願いを叶えてやっての。リンと同じような感じじゃ」
結局分かったのは、日本人はどの世界でも異世界転生に憧れてるってことだね。
うん。私はすごくいいと思うよ。
「それでの、ユウトをこの世界に転生させたのじゃが、問題が起こっての」
「その問題に妾が巻き添えをくらった」
「ま、まぁその話は後じゃ。ユウトは元いた世界に帰る方法を探し始めたんじゃ」
「えっとつまり、ホームシックになっちゃったってこと?」
「そういうことになるのう」
まぁ私も職場にずっといればホームシックになってたし……まあ気持ちはわかるけどさ。
自分から異世界に転生しておいて、元いた世界が恋しくなって帰りたくなるって……。
「まぁその気持ちは分からなくもないんですけど……世界が恋しいって……何かあったんですか?」
「わからん。ワシも数えきれんほど転生させてきたが、あんな行動を起こしたのはユウトが初めてじゃった」
「でもそれとこの世界に生き物が棲めなくなるのとなんの関係があるんですか?」
「ヤツは頭が冴えていた。何やらワシにも詳細はわからんかったが、元いた世界に帰れるかもしれないという魔法を編み出したのだ。じゃが1つ問題があっての」
さっきまでのふざけた感じではなく、カミサマが急に重たい顔になる。
「ヤツには魔力が足らんかったんじゃよ」
「うーん、ということは失敗したってことですか?」
「いや、失敗と言うべきか、何と言うかの」
「それじゃあ成功したんですか?」
「成功もしとらん」
どういうこと?
「ヤツはその魔法を発動させるために、別の魔法を編み出したのじゃ。それがこの世界の問題に災厄を引き起こしての」
「えっとそれは」
「この世界の生物から魔力を奪う魔法じゃ」
………。
そんな魔法…………。
っ!? ってことはもしかして……
「カミサマたちがどう呼んでるのか知らないんですけど、魔力欠乏症というものはそれが原因だったと言うことですか?」
「その通りじゃ」
おーい! ユウトくーん!
そんな人体実験みたいなことダメに決まってるでしょ!!!
本物の馬鹿なの!?
「とは言え、その集めた魔力はどうしても複雑での。使うことができなかったんじゃ。それで何度か実験しての」
「何か嫌な予感がするんですけど、それってもしかして…………魔人ですか。」
「そうじゃ」
ユウトは、人を集めては魔力を適合する様に融合できるか、実験をしていたらしい。
「最初は失敗での。融合した直後には死んでしまっておった。しかし何度か実験しているうちに成功したみたいでの。魔力を得たものは歓喜し、そのことを仲間に伝え、何人かの仲間がまたユウトの元へと集まった」
「でも、魔力を得るなんて話、信じる人がいたの??」
「まぁその実験を成功し魔力を取り込んだやつが、どうやら王国の人間でな。最初にどうやってそれほどの人間を実験に使えたのかは知らんが、あとは大事にならないように一部のものだけに話がいったようじゃ」
「けどカミサマは人を監視できるんじゃないんですか?」
「さっきも言ったろう。本当に詳細までは見ることはできん。ワシにもわからんことはわからんのじゃ」
カミサマの信頼度が少し回復…っと。
「そして4人に魔力を融合させたんじゃが、しばらく経って魔力が暴走してしまっての。要するに人間の器では受け止め切れなかったということじゃ」
魔力は器に入っているとイメージしやすい。その器から溢れてしまえば魔物になる。それは人間とて同じこと。
「それを偶然見たワシは、別の世界におったテラリアを呼んでの、対処させたのじゃよ」
「妾はそんなこと一切聞かされていなかったのだがな」
「ホホホ。それはもう謝ったじゃろうて」
「妾は平和な世界で暮らしたいと言ったはずじゃ。あれのどこが平和だったのか言うてみろ」
「そりゃお主の元いた世界から比べれば、あんな些細な事など日常茶飯事じゃろ。むしろここは、あれが大事になる世界じゃ。よっぽど平和だと思うがの?」
「気に入らんジジィだ」
「テラリアのいた世界ってどんなだったの……」
「ふん。まぁその話はまた今度してやらんこともない」
怖い……興味本位で聞かない方が良かったかも………。
「えっとそれで、私はどうすれば?」
「よく聞いてくれたぞリン! その言葉を待っておった!」
先程の暗い話から一点、明るくなったカミサマは私に向かってこう言った。
「テラリアと融合魔法を使って一緒に戦ってくれんか?」
………うん?
「えっと、融合って言いました?」
「そうじゃが?」
うん?わからないよ?
「どういうこと?」
「そのままの意味だが?」
「ジジィそれじゃ伝わらなくて当然だ。おかしいのは口だけにしておけ。頭までおかしくなっては会話すらできん」
なんかこの2人話し方も似てるし、夫婦感が半端ないし……
なんか見ててほっこりするよ。
「すまんのリン。そのままの意味じゃったんだが…。実はテラリアがいた部屋の奥に、ユウトが実験で使っておった部屋が隠されておる。そこにある魔法陣が人々から魔力を奪略しておってな。それを破壊して欲しいのじゃ」
「それだけならテラリアでもできるんじゃ?」
「残念であるが、妾の力では到底及ばん。魔法陣に込められた魔力が想定外でな。何せ200年近くも溜められているのだ」
うーん、何で200年もほったらかしてたの?
もっと早いうちに対処できたと思うんだけどど……。
「どうして私なの?」
「リンほどの力を持った女はなかなかおらんかったからの。融合魔法は同性でなければ使えんのじゃ」
「えっ、でもテラリアはドラゴンじゃないの」
「そんなことは誤差のうちじゃ。生き物という点ではドラゴンも人間も同じじゃ。ただ性別だけはどうも違うての。魔力そのものの波長が違うんじゃよ」
なんかよく納得できないけど、そういう世界観ってことね。
「だけど魔力の波長が違うなら、生物が違うという要因の方が波長にズレがありそうだけど…」
「まぁ、簡単に言えば魔力は極微小ながら実態として存在しておっての。リンの元いた世界ではDNAというものがあったと思うんじゃが、あれに似たような仕組みでの。要するにある生き物の魔力があった場合に────────」
なげぇ。いつまで喋ってんだ。
「そういうわけなのじゃが、ここでひとつ問題があっての、先ほど言った─────」
「もうその話はよい。こっちまで頭が痛くなるからやめろ」
ナイスよ。テラリア。
とりあえず話を戻そう。
「えっと、話はわかったんだけど、それなら私やテラリアよりも強い人を転生させてこればいいんじゃないの?」
「それにはワシらにも条件があっての。リンはここに転生したときにワシが聞いた要望を覚えておるかい?」
んーっと、確か魔法は使いたいけど痛いのは嫌だとか言ったような………。
「ワシら神は願いを聞き届けることしかできんのじゃ。つまり、リンが男に生まれ変わりたいと思っていなければ、ワシらが勝手に男として転生させることはできんということじゃ。それは何に対してもそうじゃ」
「妾はこのジジィの価値観にハメられてこの世界に連れて来たのだがな」
「ホホホ。テラリアが力を欲すれば、お主にも力を与えられたのじゃが、ただ平和に暮らしたいと言うただけじゃ」
「ふん」
「じゃがリンはこう言うた。─────
─────『魔法をぶっぱしてみたいとは思うかな。かっこいいじゃん。あ、でも痛いのは嫌だから、丈夫な体がいいかも。』と」
たしかにそんなことを言った気がするけど………
「じゃからワシは魔法をぶっぱできる魔力に、痛みを無効化し、物理的にも強靭な肉体をリンに授けた」
はぁ〜〜〜ん! 理解!
どうりで虎を蹴っ飛ばした挙句、カイルさんの刀を素手で受け止めたわけだ!
こんな女の子がどこにいるのか、誰か説明してください!!!
もうちょっと普通の女の子になりたいよ……。
「ホホホ。わかってくれたかの?」
「痛いほど実感しました」
「この様子ではリンもジジィに騙されたんだろう。この騒動が終われば妾と一緒にコイツらをぶん殴るぞえ」
「はい! 喜んで!」
「ちょま、またんかいて!」
うん、このカミサマやっぱりダメだ。
人が気持ちよく寝てるときに脳内に語りかけてくる時点でダメだと気づくべきだった。
何かよくわからないが、私はドラゴンと融合して戦うことになった。
ストックが100話まで溜まりました。
めでたいので2話投稿しましたw
70話以上も余裕があるので、後から修正するときに便利ですね。
今のところ、投稿しているモノには大幅な変更点はありません。




