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247 ワルフ国王


 ─────ギギギギィっ……


 重たい扉が開く。


 国王と言うからには、どんなおっさんが待ち構えているのだろう。

 うちの国王に引きを取らないという噂だから、変であることに違いはないと思うんだけどな。


 変なおっさんは、良い方向に進んでくれてれば多少は問題ないんだけど、悪い方向に進んでしまうと、とんでもなく距離を置きたくなる。


 さてと、ダンさんの後を追うように歩みを進めるも、肝心の国王の姿は、座っている上に逆光がすごいせいか、あまりよく見えない。


 こういう時は途中まで行ったら、とりあえず片膝をついて頭を下げると…

 貴族様の礼儀は、一通りシーナに教わった。

 まぁ、うちの国王には不要な礼儀だけど。


「オモテをあげるが良いぞっ!」


 ……んっ?


「フィリア?」


 隣に同じく片膝をついていたフィリアに聞いてみる。


「ウチちゃう。まぁ、そらそういう反応なるやろな」

「フィリアっ! 待っておったぞ!」

「相変わらずですなぁルナ様は…」


 ルナ様…


 そしてこの声質は…


「おっ、女っ…!?」


 目の前には、国王とはとても思えない風貌の女性が座っていた。


 一言で表すならば、キッズだ。


 うん。この表現で間違いねぇ。


「むむっ!? そなたが噂の料理人であるなっ!?」

「は、はい…」


 フィリアがルナ様と呼んでいた国王の顔が、ぱぁっと明るくなった。


「る、ルナ様…初対面のお客様にはもう少し………」


 朝から兵士に説教されてる国王。


 うん。間違いなく変なやつだ。


 ─────ドタドタドタドタッ


「リンっ!」

「ひゃいっ!?」


 顔っ……!

 近っ…!!


 いや、そもそも大丈夫なのこれ。

 私が悪者だったらどうするのこれ。


 てか、これが国王なのマジですか?


「フィ、フィリアぁっ…」

「ふはっ。洗礼やな」


 いや、ダンさんも兵士の皆さんも、そんな流暢に見守ってる場合で……きゃぁっ!?


「なっ、何をしてるんですかっ!?」

「んっ? 匂いを嗅いでいるんだぞ?」

「かっ、嗅いでどうするのっ!?」

「……くんくん」


 いや、うちの国王に引きを取らないって言ったやつ誰?

 うちの国王より変人レベルが上なんだが?


「むむっ…! 何かを隠し持っておるなっ!」

「ひゃいっ!?」


『テアっ!? もしかしてバレた!?』

『妾のことを感じ取ったということかえ?』

『それ以外ありえなくない!?』


 わけがわからんが、私の中にいるテアの存在がバレてしまった…?


「リンちゃん、ラーメンが食べたいってことやで」


 フィリアがこそっと耳打ちしてきた。


「えっ…? と…?」


 それ、色々と大丈夫?

 

 …って、隠し持ってるってそういうこと…!?

 ねぇ、私の収納魔法って匂い漏れるの?


「さっ、さすがにここで出すのは…」

「むっ…であるな…吾輩とて冷静さを欠いていた。すまなんだ」

「い、いえっ…」


 いつまで経っても、どう立ち振る舞うのが正解なのかわからない。


「にしても、やはりあいつの手紙にあった通りなのだなぁ…」

「と、仰いますと?」

「やつの手紙には『見かけによらないやつがくる。だいたいフィリアと同じだから好きなようにしてくれ』と書いてあったのだ」


 いや、あんたそれで大丈夫なの。

 私は一応、あんたの国では一級の魔法師なんだが。


 私が裏切りでもしたらどうするつもりよ。


「というか、なぜ私がこの場で今すぐ出せることを…?」

「う、それはだな…」


 ルナ様がきょどっている。


 そんなルナ様を見てか、おそらく執事であろうお爺さまが私に話しかけてきた。


「ほほ、リン様。グレイス国王様のお手紙に、いつでも出せるよう準備してあるから好きなタイミングで召し上がるように、と書かれてあったのですよ」


 あーなるほど。

 つまりさっきのくんくん事件は演技だったと。


 正直、かなり焦ったよ。


「いや、それはそれで色々と大丈夫なのですか?」

「と、申されますと?」

「私が毒をもっていたりとか…とんでもないものが入っていたりとか…」

「まさか、グレイス国王様がそのようなことをするとは思えませんな」


 あらっ?


「ねぇフィリア、うちとの友好関係っていい感じなの?」

「ん? まぁお互い近いからな。交易も全くないわけやないし、実際うちの国にある綺麗な装飾品やら建築物も、ワルフ王国のモノも多いし」

「あっ、そうだったの」


 意外と両国の関係はバッチリだったらしい。


「それではっ! フィリアっ!」

「仕方ないですなぁ。ちょっとだけですよ」

「わーっはっはっ!! リンもどうだ?」

「は、はいっ…?」


 いや、何が始まるんだよ。


 って、ルナ様はもう奥にある部屋へと小走りで向かっていった。


「それでは、こちらの方へ」


 執事のお爺様が私たちを誘導する。


「あの、何が…?」

「すみませんなリン様。しばらくルナに付き合って頂けませんか?」

「あ、まぁいいですけど…」


 横にいたフィリアを見てみる。


「いや、あんたもめっちゃノリノリやないかい」

「ばっ…バレたか…」


 フィリアも笑みが抑えきれてない。


 なんなの? 今からどんな楽しいことが待っているの?


「それと、今日は急ぎの公務が残っておりまして…」

「わかった。1時間くらいなら大丈夫やな」

「助かります」


 いや、大丈夫なのそれ。


「私怒られたりしませんか…?」

「いえ、これも立派な国王様の公務ですので、お気になさらず楽しんでくだされ」


 よくわからないまま着いていくと、今までとは少し違い、かなり落ち着いた雰囲気の部屋に案内された。

 王城なのにとてもカジュアルな感じで、むしろ心地よくさえ感じる。


 さて。そこで待ち構えるルナ様は、超絶笑顔は言うまでもなく、とあるモノを握りしめていた。


 それはこの世界にきて、初めて見るものだった。


「──────トランプ……!?」


 そう、それは紛れもなく、トランプだった。

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