表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
246/256

246 門前


『ねぇ見て、あの子達可愛くない?』

『ほんとだ…姉妹かな?』

『それは違うって。きっとどこかの貴族様よ…!』

『けどそれならもっと護衛が…』

『バカね! お忍びなのよ! きっとあの馬車に乗っているお爺さまがお強いのだわ…!』


 さて、無事に6日目の朝に着いたのだが、あまりにも朝早すぎて、まだ門が開いていなかった。

 さすがに叩いて開けてもらうわけにもいかないので、大人しく列に並んで待つことにした。


 そういうわけで、さっきから絶妙に惜しいお姉さんたちの会話を聞いているが、魔法も使ってないし身分も明かしてないのに、なんかむず痒いところをついてくる。


 もしかして、私から王者の風格ってやつが出てる?


 ま、冗談は置いといて。

 フィリアとも、さすがに世間話程度の内容しか話していない。

 こんな大勢の前で国の運営がどうだの、禁忌魔法がどうだの、エルフだドラゴンだとしゃべれば、さすがに怪しまれることは間違い無いからね。


「あっ、そろそろちゃうか?」


 フィリアが何かの気配を感じ取ったのか、ぼそっと呟いた。


 すると、門の隅の方にある扉が開き、門兵らしき人が出てきた。


 ぱっと見、ドワーフぽさはない。

 身長が低くて、体格が少しゴツくて… みたいなのを想像していたけど、見慣れた人間の形(?)だ。


「お待たせ致しました。只今より開門とさせて頂きます」


 すると、ガラガラガラガラと大きな音を立てて、門が徐々に開いていく。


「おーっ」


 この感じ、まさにアレだ………


「何を関心してんのや」

「いや、過去の記憶を思い出してね」

「またわけのわからんことを」


 過去の記憶。


 もちろん、開店前に凸したラーメン屋の記憶だ。


 11時オープンのくせに、11時に行けば間違いなく3時間待ち必須のラーメン屋なんてのもあった。

 そういうときは10時前ぐらいから並んでいたものだ。


 今か今かと待ち侘びた先にあるのは、静かな空間に鳴り響くシャッターが開く音と、暖簾をかけた際に鳴る、これまた心地の良い音。


 今まさにそんな気分だよ。


 さて、門が開き徐々に人が中へと流れ始める。


 荷馬車はもちろんながら、観光に来たのであろう人たちもいれば、何かの依頼を受けたのだろう冒険者らしき人たちもいる。


 それに、なんかしらの職人っぽい人も結構いる。

 さすがはドワーフの街だ。


「はっ…!? こっ、こ、これはフィリア様…!?」

「よっ! 久しぶりやな」

「ど、どうしてこんなに早くに…!?」

「ホルグに会いたくて、つい急ぎすぎたんや」

「かっ…!」


 フィリアよ、あんまり仕事の邪魔になるようなことを言うのはやめよう。

 あんたは自分が可愛いということを、自覚しといた方がいいよ。


「んっと、フィリアの知り合い?」

「うちが来る時、いつもお世話になってる門兵さんや」

「なるほど」


 つまりフィリア担当ってことか。


「どうもホルグさん、初めまして。リンと言いますっ!」

「むむっ、あなたが…」


 ホルグさんが驚いたように私の姿を見る。

 もちろん、今回の客は料理人と言うから、もうちょっとオジサンっぽいのを想像していたのかもしれない。


「では、こちらの方へどうぞ」


 色々と落ち着きを取り戻したダンさんに、門を潜った先にある少し大きめの部屋に案内された。


「ではフィリア様。お手紙をお預かりします」

「んーっと、リンちゃんが持ってたっけ」

「あっ、これか。私が持ってます」


 ホルグさんに手紙を渡した。


「もしかしてリンさんも魔法がお得意なのですか?」

「えっ、ばっ、ばれっ…えっ…?」

「これは失礼。収納魔法を無詠唱で使えるとなれば、将来頼もしい人材になるでしょうな」

「あっ、あぁ〜。まぁ魔法はほんの少し嗜んでますので…」


 そういえば忘れてたよ。


 収納魔法くらいはみんな無詠唱で使えるけど、ある程度魔力の扱いに慣れていないと使えない。

 学院にいるから無意識に使ってしまうけど、一般市民からすれば少し難易度が高い。


「ただいま、国王にご到着を伝えておりますので、しばらくお待ちいただけますでしょうか」

「あっ、そのことなんですけど」

「どうかされましたか?」

「元々は2日後に到着する予定だったわけですし、国王様にも色々と予定があると思うので、私たちは2日間観光させてもらいますよ」

「あっ…えぇっと…」

「んっ…?」


 ホルグさんが言葉を詰まらせている。


「それでしたら、問題ございません」

「大丈夫なの…?」


 フィリアの方を見てみるも、フィリアも満更でないような顔をしている。


「ま、まぁリンちゃん。国王様の性格的にな。今日行っといた方がええ」

「そ、そんなもんなの…?」


 お客様を待たせてはいけません!的な感じで、もしかしてめちゃくちゃ他人思いの優しい人だったり?


 もしや、昭和の営業マンみたいな思考回路してない?


 しばらくすると、門兵の1人が慌てて戻ってきた。

 

「いっ、今すぐにご案内するようにとのことです!」

「今すぐ!? そんな朝イチから大丈夫なんですかっ!?」

「今すぐでございます!」


 伝えに来た門兵も、必死の形相で私たちを連れていこうとしている。


「では、こちらへ」


 ホルグさんに案内してもらうも、気持ちさっきより速足になっている。


 なんだかみんな、忙しないよ?


 門から城までは特別なルートで繋がっており、一般市民の目を気にすることなく、城までたどり着ける仕組みらしい。

 さすがはドワーフの街だ。

 私としては街中を見ながら、なんてのが良かったけど、まぁこれはこれで探検みたいでワクワクする。


「そういえばここ1週間、国王様の話題が出なかったけど、どんな人なの?」

「会ってからのお楽しみや」


 いや、なんか怖いんだけど。

 うちの国王に引きを取らず、お相手さんも相当だとか誰か言っていたような。


「グレイス王国より、宮廷魔術師団長フィリア様! 料理人リン様! ご到着でございます!」


 いや、私の肩書き弱っ。


 ─────ギギギギィっ……


 そんなことを自分で突っ込んでいると、重たそうな扉が、重たそうな音を立てて開いた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ