240 旅と気持ちの締めくくり
「リンさん…」
「あぁ、大丈夫だよ。魔物とかじゃないから」
アーニャが心配そうに、降り立ったテアと、その横にいるロアのことを見ている。
「ねぇテア、怖がるからさ、ほら」
「む? よかろう」
テアがいつも通りの肩乗りサイズに縮んでくれた。
「ほらね、怖くないでしょ?」
「こっ、こわく…ない…です…?」
「順番が逆だからそれ」
「ほんとよ」
セリとシーナに突っ込まれた。
いや、今回ばかりは私は悪くない。
「あれっ、ロアもできるんだ」
「リンはあっしのことをなんだと思ってんだーっ!」
「ごめんって」
ロアは、なんかちょっと雑になっちゃう。
「ひっ…」
ロアの魂の叫びを聞いて、アーニャたち子供がビビり散らかしている。
「こらっ! あんまり大声出さないの」
「す、すまんって… ほら、あっしは怖くないじょ?」
ロアが可愛い(?)動きをしながら、子供達に近寄る。
……それが仇となったか。
一定の距離を保つように、子供達がさらに後ずさる。
こりゃダメだ。
テアとの感動の再会もほどほどに、少し打ち解けてから出発といこうかね。
さてさて今回は、テアの背中にみんなで乗っていこう作戦だ。
ロアもいるので2組に別れよう。
アーニャは一度空を飛ばせたから、ある程度慣れているかもだけど、他の子達はどうなんだろうね。
ジェットコースターとか絶叫系がいけるタチなら、問題はないんだけど。
「すごーいっ!」
「空を飛んでるっ!」
「もうさっきの場所が見えないっ!」
よかった。
どうやら、アーニャ以外は絶叫系がいけるタチだった。
「リ、リンさぁっん……っ…」
「半泣きじゃん」
「だ、だってぇっ!」
「そういや、今日はやけに速いな」
もしかして、私との再会が嬉しすぎて、テアのテンション上がってる?
ボルテージが速度に比例しちゃってる感じっ?
……って冗談は置いといて。
『ごめんね』
『リンのダメなとこがまた始まった』
『ほんとよ。そろそろ来る頃だと思ったわ』
『ダメなとこってひどくない!?』
『ひどいも何も、あの子達はリンに謝って欲しいわけじゃないんだし』
『そうよ。あの子達より気持ちの整理ができてなくてどうするの』
2人からお説教を喰らった。
途中からフレアも目で会話に参戦してきた。
さすがの私も気持ちを切り替えざるを得ませんよ。えぇ。
私のへなちょこメンタルが鍛えられたところで、そろそろ王都が見えてきた。
透明化した状態で王城の裏庭へと降り立った。
国王に許可ももらってあるので、最近はこの裏庭がお気に入りの転移スポット兼離陸場だ。
さて、周りに人がいないことを確認してと。
「とうちゃーく」
「もう慣れてしまったわね」
「色んなことをお母様に報告しないと…」
「さすがに落ち着かない…」
シーナとフレアは何もなさそうだけど、セリは相変わらず城にビビってる。
それぞれが一旦お別れを告げ、シーナはサリナさんのところに、フレアは王妃であるマイシアさんのところに、セリは転移してイリアさんところへ帰っていった。
また後で3人とは合流するとして、ひとまずはアーニャ達を送り届けないとね。
「リンさん…? ここはどこですか?」
「んーまぁ、家の近所の公園みたいなもんだよ。とりあえずこっちおいで」
まずはアーニャ達を、安心安全の裏ルートから城の外へと案内する。
実は、王城と宮廷魔術師団、それに王国騎士団がそれぞれ隠し通路のようなモノでつながっている。
安心安全というのは、その道を知っているのはごく少数で、誰かに見られたりとかすれ違ったりすることは基本的にないからだ。
さて、目指す場所はフィリアの元だ。
道中、子供達はギラギラの装飾に目を輝かせている。
アーニャだけは、何か嫌な予感がしているのか、めちゃくちゃ緊張しているようだ。
ふっ。残念ながら、その嫌な予感は正解だ。
けど、お互いのためにここがどこかは言わないでおこう。
少し歩くと、宮廷魔術師団の敷地に入った。
間もなくして、いつも使っている応接室へと子供達を連れていく。
「ここでしばらく待っててくれる?」
「はっ、はいっ…」
子供達と共に、魔術師団の応接室へと入る。
私が迎えに行ってもいいんだけど、流石にこの子達だけにしておくのは、色々とまずい気がする。
それに、アーニャも「絶対にどこにも行かないで…」と言わんばかりの目で私をまっすぐ見つめている。
ま、フィリアにはさっき連絡したから、そろそろくると思うんだけど…
「リンちゃん、おかえり」
「あっ、フィリア。ただいま」
無言でフィリアが近づいてきて、私の胸のあたりに顔をうずめてきた。
ちなみに、私の胸にはうずまるほどのモノは付いてない。
んっと?
「近くない?」
「ひっ、久しぶりのリンちゃんの匂いっ…」
「子供達が見てるんだけど」
そういえば、こいつはトンデモないやつだったよ。




