236 それぞれの価値
エルフ村に長居したい気持ちもあるが、一旦は目の前の問題解決からだ。
そういえば帰り際に、私とフレ魔力を村にあった鏡に通すように、イオに言われた。
どうやら、これに魔力を通しておけば、村への入口を感じられるようになるらしい。
あと、基本的に入口になっていた魔力膜は、普通の人が通れば何もないそうだが、なんらかの悪意を持った人間が通った場合、防御魔法が発動される仕組みになっているらしい。
判断基準が謎なところだけど、魔法を作ったのがイオなら、まぁ納得だ。
迷子になる心配無しってワケね。
というか、イオの独断で大丈夫なの? と思ったけど、どうなんだろうね。
もしかすると、イオはエルフ族の中でも相当な地位があるのかもしれない。
ちょっと抜けてるところあるけど。
「じゃあレイサさん、またお店教えてくださいね」
「もちろんですぞ。それに、ワシもまだここに滞在するつもりじゃ。できる限りのことをしておこう」
「いやほんとに無理だけはしないでくださいね…」
「ほほ。今となってはただの食を巡る爺さんじゃ。期待はせんでくれ」
いや、エルフ族の情報を国に任され管理してる爺が言うセリフじゃないよ。
さて、日が落ちて少し暗くなってきた。
私たちも、目立つよう適度に散歩をしつつ、宿へと向かう。
「とりあえず1日目は収穫なしだったかぁ…」
「うん。収穫なし、とは言えないかもだけど」
「それはそう」
エルフ村なんて大収穫もいいところだよ。
「あっ、あの…」
「「 どうした? 」」
アーニャがめちゃくちゃ怯えながら話しかけてきた。
いきなりどうしたんだろう。
「フレア…さん…って…」
「うん?」
「お姫…様…なのでしょうか…」
あ、もしかして内緒にしたつもりが聞こえてた…?
私が治癒したせいで、耳がよくなりすぎた……?
冗談はさておき、ここは潔く姫を認めるべきか、はたまた適当に誤魔化しておくべきか…
フレアとしては、あまり自分の立場で威圧をかけたりすることが好きじゃない子だから、やっぱり今のまま、頼れるお姉ちゃん的な存在のがいいのかな?
「うーん…」
フレアの方を少し見てみると、フレアも少し困ってそうな顔だ。
「あっ、あのっ! 困らせてしまったのでしたら、すみません…」
「ううん。大丈夫」
「もしフレアさんがよろしければ、今のままでも良いのでしょうか…」
「それだっ。賛成っ」
おぉっ。
2人でうまいこと解決してくれたみたいだ。
変に気を遣われるのはちょっとね。
「それで、リンさん…も…」
「あ、私?」
「フレアさんとも領主様ともお知り合いってことは、リンさんも……それにフレア様もリンさんって…」
フレアの私に対するさん付けは、治りそうな気配ないからね。
呼ぶ時さん付けになるだけで、敬語で話してくるわけでもないし、私も慣れてきたよ。
「フレアとは友達だよ。友達同士で旅行してるだけって感じ?」
「うん。他の2人も友達」
うんうん。
友達というのはいいものだね。
アーニャもなんとか納得してくれたみたいだ。
この場合は、納得というか自分に言い聞かせてるというか、なんとも言えないところだけど。
「あっ、シーナとセリにも報告しておくか」
軽く2人に報告しておく。
防御魔法の範囲をかなり広げてきたし、食料も結構置いてきたから、ざっと話を聞く限りでは、向こうも問題なさそうだ。
「報告…? 今晩はここに泊まるんじゃ…」
私がセリとシーナに報告していると、一見すれば黙り込んでるように見える私を見て、アーニャが声をかけてきた。
「んーっと、そういや言ってなかったか」
「リンさん達はテレパシーが使える。どれだけ離れてても問題ない」
「そっ、そんなことができるんですかっ!?」
「ふふふ。ほんとは最初アーニャ達に会った時に使おうと思ったんだけどね。一方的に話しかけられたら余計怖がらせちゃうかな、って思ってね」
「そ、そんなに…わたしたち如きに気を遣って頂いていたなんて…」
「わたしたち如きってなんよ。アーニャ達はまだまだこれからでしょ」
「そんなことありませんっ…わたしたちは生きてるだけで邪魔だって…」
「「 なにそれ 」」
そんなひどいこと誰に言われたの?
もしかしてどっかの貴族とか?
「お父さんもお母さんも言ってました…」
「はぁっ? なにそれ」
「ひどい。それ本当なの?」
「はい…」
いくらなんでも、それは親として最低すぎるんじゃない?
「そういえばアーニャって、どこの村にいたの?」
「わかりません…」
まぁ確かに、この世界には村に名前がないことも珍しくはない。
私も勝手にチーズ村だとか名前をつけて呼んでいるから、判別つくっちゃつく。
実際に、村の名前なんて気にしたこともなかった。
「あのっ、これは他の子達に内緒にしてもらえませんか…」
「うん?」
「どうしたの?」
「実は、お父さんとお母さんが夜中に会話しているのを聞いたことがあって…お金がないから、わたしを売りに出すって…」
「「 ……え? 」」
「わたし、お姉ちゃんが2人いるんですけど、わたしは昔から出来も悪くて、ドジで、生活魔法も使えなくて、力もなくて畑仕事も役に立たなくて、だから」
「もうわかったから。大丈夫だよ」
フレアがアーニャを抱きしめた。
にしても、これが本当なら、最低な家族だ。
というかアーニャのような子供の立場ですらそう感じたと言うことは、わりかし本当なのかもしれない。
これはちょっと困ったな。
最初は家族の元に返してあげたいと考えていたけど、どうやらそんな単純に解決する問題じゃなかったみたいだ。
「となれば、アーニャ以外の子達も…」
もし同じように、モノとして売られた子供達が今回の被害に遭っているというのなら、目標を変える必要があるか…。
「わたしからもお母様に頼んでみる」
「ありがとフレア。助かるよ」
アーニャ達はとりあえず、孤児院的な場所にお世話してもらう感じになりそうかな。
ただ、王都に孤児院はないみたいだから、少し離れた街にお世話になるかもしれないね。
警備は厳重なところが良いかもだ。




