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233 素敵なステーキ


「あの、そんな絶句するほど面白くなかったすか」


 私の渾身のギャグは見事に滑り散らかした。


 『素敵なステーキ』なんて、今時のオヤジでも使わないようなギャグを口走ってしまった。

 すまないね、自分で自分をとめられなかったよ。


 いや、冷静になろう。

 このギャグを言う前に、鉄板に乗ったステーキが運ばれてきたから「鉄板のギャグやりますっ!」と高らかに宣言したのがいけなかったかのか?


 その前振りの完成度が高すぎた故に、素敵なステーキで滑り散らかしてしまったのか…?


「いやっ、あのっ、えっと…」

「アーニャが困ってるよ…」

「すいやせん」


 ここは素直に謝っておこう。


 さて、私のオヤジギャグは置いといて。

 なんとも美味しいステーキだ。

 こんな裏路地みたいな場所に、まさかこんな美味しいお店があるなんて。

 文字通り、隠れた名店、ってやつを見つけてしまったかもしれない。


「これはもしや…」


 んっ?

 3人で食事をしていると、後ろから声をかけられた。


「リン殿ではありませんか…」

「んーっと?」


 振り返ってみると、そこには見覚えのある顔があった。

 

「「 あっ 」」


 私とフレアが同じタイミングで声を上げた。


「「 レイサさん 」」


 なんと、私たちに声をかけてきたのは、ライセルカの領主であるレイサさんだった。

 私からすれば、お米を頂いた神様的存在だ。

 フレアともお互いに面識があるのだろう、フレアもレイサさんのことを知っていたみたい。


「お久しぶりですレイサさんっ!」

「リン殿、お久しぶりでございます。それにフレア様ではありませんか。お久しぶりでございます」

「レイサさん。お久しぶりです」

「ところでレイサさん、お仕事は大丈夫なんですか?」


 レイサさんは領主だ。

 カレーレシピ事件で色々あったけど、あれはレイサさんが多忙すぎたが故に起こった事件だと言っても過言ではない。

 そんなレイサさんが、ライセルカからはかなり離れたシーランまで来ているとなれば、よほどのことがあったのだろうか。


「実は、領主としての地位を息子に受け継がせましてな」

「なんとっ。知らない間にそんなことが…」

「その甲斐もあって、こうして余生を満喫させていただいている所存であります」


 めちゃくちゃいい余生じゃん。

 私も歳とってきたら気ままに食べたいもの食べて、好きなところに旅行して、気長に過ごしたいものだ。


 まぁ、レイサさんの場合はこれまでが忙しすぎただけかもしれないけどね。


「それはそうと、フレア様と一緒にいらっしゃるとは、どうされたのですか? それに、そちらのお方は初めて拝見させて頂くお顔ですな…」

「ア、アーニャです…」

「ふむ。アーニャ殿であるか」

「まぁこの子は私たちの連れといいますか、なんと言いますか…」

「リンさんとは少し旅行をしていたんです。お母様にも許可を頂いていますので、その点はご安心くださいっ」


 お父様ではなく、お母様ね。


 ふっ。

 フレアは、どちらがよりしっかりしているか、よくわかっているみたいだね。 


「ほほほ。いくらリン殿がご一緒と言えど、さすがにこの状況は心配してしまいますな」

「まぁ、周りから見れば結構危なっかしいですよね。これ」

「ですな」

「レイサさんはどうしてここに?」

「もちろん、ここの料理を食べるためですぞ」

「ここってそんなに有名だったの…」

「知る人ぞ知る、と言われておりますな」


 ほぉ〜っ。

 どうやら、私の中で食通ランキング上位に位置しているレイサさんに言わせても、ここの料理は相当美味しいらしい。


 というか、私のさっきのオヤジギャグ聞かれてた説ある?

 つらくない?


「って、レイサさんは食べ歩きでいろいろな街を巡ってるってことですか?」

「そういうことになりますの」

「もしかして他の隠れた名店的なのも知っていたりっ…!?」

「いえいえ。ここにはつい最近着いたばかりで、あまり巡れていないのですよ」


 むむっ…?

 最近っ…?


「最近って、いつですか?」

「ここ10日ほど前であろうか…」


 10日が最近なのかは置いといて、確かに街一つにある料理屋を回るにしてはまだ少ない日数かもしれない。

 レイサさんのことだから、片っ端から店を回りたいのだろう。


 それはそうと、もし10日前に着いたのなら、盗賊が事故にあった事も何か知っているかもしれない。


「あの、道中で事故か何かを見たり聞いたりしましたか?」

「事故、でありますか…」


 レイサさんが頭を触り、何かを考え始める。


 記憶を捻り出そうとしてくれている。

 ……というわけではさそうだ。


 むしろ記憶に鮮明に残っているけど、それを私たちに言うか言わないかの選択に迫られてる感じだ。


「むむっ、場所を変えましょう」

「えっ、簡単に人に言ってはいけないことでしたら、全然大丈夫なんですけど…」

「いえ、しかしリン殿はご存知でしょうからな。いずれお聞きになることでしょう」

「私がご存知…?」


 私が何かを知っている…?


 あれ、私の記憶ないなった?

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