228 作戦と休息
子供たちの治療がおわり、4人の子供たちは何やら安心したのか、とてつもなく安らかな顔をして、スヤスヤと寝ている。
てなわけで、今はと言うと、リーダー格っぽい少女と色々な話をしている。
まぁ、私が勝手にリーダーと思い込んでるだけかもしれないけど。
そしてこの少女、名前はアーニャちゃんというらしい。
この中では1番年上のようだ。
「どこの誰かも全くわからないってのは分かったんだけど、本当になんでもいいから覚えてない?」
「覚えてないかもですっ…」
「何かの模様とかでもいいんだけど、ダメそう?」
「うん…ごめんなさいっ…」
「謝ることじゃないよ。私だって、アーニャにとって嫌なことを思い出させたくはないんだけど、何せ情報がないと何も手を出せないというか…」
「わたしたちはリンさんに感謝しかありませんっ! 思い出したくないと言われれば、そうかもしれません」
いろんな話を聞いたけど、とてもこの年齢で受け入れられる域を超えていた。
なんで異世界ってのは、こうも人間の扱い方がなってないんだろう。
社会が悪いのか、個人が悪いのか、どちらとは言えないけど、奴隷や人身売買といった非道的なことが絶えない。
まぁ、私のいた世界もかなり昔まで遡ればそういう風習や文化はあったんだから、どの文明も一度は経験する、ということなのかね。
「けど、リンさん達のおかげで、もう決して取り戻すことはできないと思っていた、普通の生活を取り戻すことができますっ!」
「ま、まぁまだ環境が良くなったとは言えないんだし…」
「そんなことありませんっ! 間違いなく良くなりますっ!」
とりあえず、元気を取り戻してくれたようで、一安心だよ。
「にしても、移動はほとんど目隠しをされていた……か」
「それに、とてつもない揺れと衝撃で気を失って、気づいたら5人まとめて放り出されていたんだよね」
「はい。何が起こったのかはわからないんですが、目を覚ました時には手や足につけられていた枷は折れていました」
「そこから自分たちで目隠しを外して、彷徨っているうちにこの場所を見つけたと」
どうやら、この洞窟を見つけてからは13日が経っているようだけど、それ以前に彷徨っていた時間を合わせれば、もう20日ほどは経っているそうだ。
「その事故があった場所がわかれば、何かわかるかもしれないね」
「けど、わたしたちも必死に、なるべく遠い場所を目指して歩いてきたので…」
「場所はおろか、方角も怪しいって感じか」
「はい…」
うーん。
どうしたもんか。
「全部で9人いたんだよね?」
「はい。その中には、あの子のお姉さんもいました」
あの子というのは、この少女の次に治療をした、1番小さい子だ。
何かひっかかる表情だと思っていたけど、きっとお姉さんのことを考えていたんだろう。
「ちょっとギャンブルだけど、可能性はゼロじゃない」
「どうするの?」
「多分、私たちはいまこの辺なんだよね」
地図を広げ、現在地と思しき場所を指さした。
「こんな大きい地図…見たことないっ…」
「ふふふ。特別に貸してもらったんだ」
実はこれ、本来は王城の中に保管されている地図だ。
私が旅行するから地図が欲しいと言ったら貸してくれた。
改めて考えたら、やっぱりおかしくね?
さすがの私も、原本じゃなくてコピーを作らせてと言ったんだけど、コピーされたら困るだとかなんだとか言っていた。
それに、王城の防御よりも私の防御の方が信頼できるだとかなんだとか。
そのうち私の収納魔法が、国宝の保管庫になったりしないことを祈るばかりだよ。
「ここから1番近い街は…」
「リンさん……ここって……」
「ぐっ……しばらく行きたくなかったけど……」
地図に示された、ここから1番近い街。
そこには間違いなく、シーランと描かれていた。
まぁ、グダグダ言っていても仕方がない。
私の考えはこうだ。
まずは盗賊ども、いや、クズ共も怪我を負っているはずだ。
そいつらが目指す場所は、まず街だろう。
村や集落などでは、治療環境が整っていないことが多いからね。
それに、街であれば多少よそものが街に入ったとしても、人の数が多くてあまり目立たない。
村だと警戒されてしまって、思うように治療を受けることができないだろうからね。
というわけで、シーランに向かい、クズ共の情報を探るわけだ。
なんなら、あそこには知り合いがたくさんいるし、むしろラッキーだったかもしれない。
あくまで、私は仮面を付けた状態で民衆の前に出たから、素顔はバレていないはずだ。
ま、一部の教会の人間や冒険者ギルドマスターであるリーシャさんとも知り合いだ。
それに、治癒を受けるとなれば教会だ。
ヒルドさんはまだ教会に残っていると言っていたから、そこからも情報を得られるだろうね。
もしクズ共がシーランに来ていれば、情報はほぼ確実に手に入るだろう。
「さて、とりあえずはこの子達が体力を取り戻してからだね」
「うん。アーニャも寝た方がいい」
「そだね。ずっと気を張っていたんじゃない?」
「はっ、はいっ…」
「って言っても、私たちが警戒させちゃったのも申し訳なかったね」
「い、いやっ! そ、そんなことっ…むしろ勝手に貴重なお食事を盗んでしまって…」
「あれは放ったらかしてた私にも責任があるから、気にしない気にしない」
「ありがとうございますっ…」
「なっ、泣かないで!?」
アーニャが目に涙を浮かべている。
「ひとまず、休みな。この洞窟にはすでに防御魔法を張っていて、私たち以外は入れないから」
「うん。わたしたちの友達にも事情を話したりでここから居なくなったりするかもだけど、安心してね」
「あっ…ありがとうございますっ…!」
アーニャが深い深呼吸をし、目を閉じ、眠りについた。
さてと。
ひとまずは、身体を休めてもらってから、行動開始だ。




