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227 久方ぶりの


「ということはつまり、盗賊に攫われてしまったと」

「家族とも離れ離れになってしまったんだね…」


 今、少女たちが地面に絵を描いている。


 なんの絵かといえば、自分たちの境遇だ。

 自分たちの言葉で話すことができない今、こうして絵を描いて説明してくれているというわけだ。


 もちろん、読み書きができれば文字を書いてくれればいいんだけど、残念ながら読み書きはダメみたいだ。


 この世界では、会話ができても読み書きできないことが結構ある。


 にしても、この違和感はなんだろう。


 なんというか、会話すらできないという人は、この世界でも珍しい。

 よほど小さい時から、会話すらさせてもらえない状況にいなければ、ちょっとした会話すら困難、ということにはならない。


 それに、私とフレアが会話していた時も、私たちの会話を気にする様子はなく、どちらかと言うと私たちの声よりも、表情や緊張感といった、音になっていないモノを見ている様子だった。


 フレアが最初に話しかけた時も、フレアの発した声とのラグがあったような気がしたし…


 そんなことを考えていると、フレアが再び話しかけてきた。


「もし13日しか経っていないのなら、会話くらいはできそうだけど…」

「私もそこに引っかかってたんだよね」


 フレアもどうやら同じことを考えていたようだ。


 そう言えば、何かしらのショックによって突然に言葉が話せなくなったり、突発的に難聴になったりする可能性もあるんだっけか。

 

 けど、精神的なショックなら、私の治癒魔法では治せない。

 

 どうしたもんかね。


「んっ? これは…?」

「お城?」


 少女が続いて書いたのは、城だ。


 もしかすると元は貴族出身だったとか?

 けど、それなら村で攫われる理由がわからんし…


「んーっと、これは偉い人で、これはキミね?」


 絵と少女を交互に指差しながら、確認をとる。

 どうやら間違いないようだ。


「うん?」

「なにこれ」


 偉い人が、何かの魔法を使った。


「「 えっ!? 」」


 直後、絵にあった少女の口と耳をぐちゃぐちゃにした。


「ねぇフレア…これって…」

「リンさん、治せない?」

「やってみる」


 もしかすると、何かしらの魔法により、声を出すことや、音を聞くことを、奪われたのかもしれない。


 うん。

 私がなんとかしてあげられる可能性が見えてきた。


 けど、どうやって伝えよう…


 治癒と言えど、さすがに本人の許可なしで、勝手に身体に魔法を施したりするのはダメだ。

 

「フレア?」


 フレアが枝を持ち、少女がぐちゃぐちゃにした箇所を、改めて綺麗に描いた。

 そして、私の手を握り、再び少女の方を見た。


 少女は一瞬固まったが、私たちの意思を理解したのか、強く頷いたあと、私とフレアが握っている手に、自分の手を重ね合わせてきた。


 く〜っ。

 フレアに感謝だ。


 にしても、こういうことは最近テアに頼りっぱなしだったからなぁ…。


 セリの妹のセアや、シーナを治した時の感覚を取り戻さねば。


 失敗は許されないね。





 まずは体内に流れている魔力を感じ取る。


 …全体的に見た感じ、人と比べても魔力量に変化は無しと。

 

 次に首元のあたりを注意深く見る。


 すると、僅かながらに何やら魔力が乱れている場所が見えた。


 比較のため、試しにフレアの首元を見てみるものの、このような乱れはなかった。


 こいつが犯人みたいだね。


 見たところ、何かの魔法陣が付与されているように見える。

 こいつの詳細はわからないけど、とりあえず、魔法陣に直接魔力を流して破壊してみる。


 身体に少しでも流れれば危険だから、ここは細心の注意を払い、魔法陣だけに魔力が流れるように集中する。


 すると、一瞬ノイズのような流れが生じた直後、魔力の乱れは消え、フレアの状態と同様、綺麗な魔力が流れ始めた。

 

 次に耳元に注意してみると、これも先と同様、何かの魔法陣が付与されている。

 テアならこの魔法陣を壊したとて再現できるだろうけど、今の私の技量では魔法陣を再現して作ることはできない。

 

 証拠品として抑えておきたいところではあるけど、仕方ない。

 少女の身体を元に戻してあげることが最優先だ。


 耳元にあった魔法陣に直接魔力を流し、魔法陣を破壊した。


「どうかな?」

「……声がっ……聞こえるっ」


 そして少女はハッと我に帰り、再び声を出した。


「声がっ……! 出せるっ……!」


 良かった。

 うまくいったみたいだ。

 

 今のところ、身体に変化は見られないし、魔力も正常に流れてるっぽいね。


 すると、他の子供たちも、少女の笑顔で察したのか、皆が涙している。


「まだ泣くのは早いよ。小さい子からやっていこっか」


 声は聞こえていないものの、私の意図を察したのか、何も伝えずとも1番小さい女の子がやってきた。

 といっても、そこまで年齢差があるわけじゃなさそうだけど。

 見た感じは10歳程だろうか。


 私がそっと瞼に手を当てると、女の子は瞼を閉じた。

 まるで、未来に見えたわずかな希望を感じ取っているかのような表情をしている。

 

 しかしその表情は、どこか悲しそうでもあった。

 

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