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224 クリームシチュー


 まずはバターを弱火で溶かして…っと。


 そこに小麦粉を少しずつ加え、ダマがなくなるよう注意しながら、捏ねるように一つの塊を作っていく。


 ……よしっ。

 

 あとは牛乳を少しずつ溶かしながら、この塊を延ばしていく。


 常に混ぜ続ける必要があるからなかなかに重労働だけど、この一手間がより美味しく作れるような気がするんだよね。


 あとは少し塩を加えれば…


 っと。ホワイトソースの完成だね。

 これさえ作っておけば、グラタンにもできるし、ドリアにだってできる。


 けど今日は…。


 鶏肉を一口サイズに切り、炒めて火を通す。

 そこにゴロゴロに切った野菜たちを加えて、軽く火を通す。


 あとはさっき作ったホワイトソースを加えて、少し牛乳を加えながら濃度を調整する。

 そこに、セリが獲ってきてくれたホタテをふんだんに入れる。

 最後に軽く塩を入れて味の濃さを調整。

 ブラックペッパーを加えて少しだけ味に輪郭を持たせる…っと。


「よしっ! できたっ!」


 ふっふっふっ。

 名付けて『絶品っ! ホタテのクリームシチュー』ってとこかね。


 にしても見た感じ淡水っぽいけど、まぁ味がホタテなら、ホタテということで問題ないよね。


 さて、できたとはいったものの、まだもう少しかな。

 あとは弱火で少し煮込んで、ホタテの旨味や野菜の甘味などをじっくりとシチューに移せば完成だね。

 ほぼ熱風で温めてるようなもので、直火じゃないから焦げないとは思うけど、念には念を入れて、シチューと鍋の間を少し風魔法で覆っておこう。


 文明の利器ってやつね。


 さてと。

 

「リン・フォーセル! 出撃しますっ!!」

「「「 来たなっ!? 」」」


 ─────ズバババババババ!


「「「 せこっ!? 」」」


 特大タンク&バカデカ噴射口付きの水鉄砲だ。


 そして私の頭には、紙でできた立札のようなものが付いている。


 可愛らしい水鉄砲でキャッキャうふふするのも楽しいけど、やっぱりこうでなくっちゃね。


「諸君、遊びはここまでだ。ここからは本気の戦いをし────冷たっ!?」

「今よっ!」

「総員かかれっ!」

「らじゃーっ!」

「ちょっ…! 決め台詞言ってるところでしょうがっ!」


 どうやらルール説明など不要みたいだ。

 おかまいなしで頭上の札を目掛けて攻撃してくる。


「私を倒して見せよっ! さすれば褒美が待っ─────冷たっ!?」


 私が喋り出した時こそがチャンスだと言わんばかりに狙ってくる。


 多少はキメさせてよ。

 




「あーっ…疲れた…」

「「「 いぇーいっ! 」」」


 もうヘトヘトだ。

 よわいアラサーの私には限界だよ。


 やってる途中で、これ私の勝利条件なくね? って気づいた結果、どんどんヤケクソになって徐々に本気になっていった。

 その結果1時間ほど激戦を繰り広げた。


 最初は水鉄砲だけを使っていたものの、徐々にお互いが本気になり、段々と魔法の片鱗が見え始めた。

 もちろん反則級のものは出てないが、そのうちタンクに自動吸引機能がついたなんてのは可愛い方だ。

 一番衝撃的だったのは、セリとシーナが水流を操作して、フレアをその上に立たせて上空から背後からあらゆる角度からどんでもないスピードで私の頭上を狙ってきたよ。


 あんた一応、国のお姫様だよ。


 ちょっと転んで「きゃっ…!」からの白馬の王子様に「大丈夫かい?」みたいなセリフが定番ってもんでしょ。

 鉄砲片手に暴れ回るお姫様なんて、そうそう居ないよ。


 まぁけど言われてみれば、運動神経は突出していた。

 学年の体力テストなんてのも、割と上位に入っていた記憶がある。


 もしかして…


 案外、脳筋の血を受け継いでいたり…


 だっ…だめだ!

 そ、そんな縁起でもないこと考えるのはっ…


 しかし何度思い返してみても、あの動きは脳筋の片鱗が…


「リンさん!」

「あばしっ!?」

「今なんか失礼なこと思ったでしょ」

「ぐっ…お、思ってない…」

「ふーん?」


 フレアにまじまじと顔を見つめられている。

 

 あれだけ遊んだのに、とんでもなくいい匂いが…


「ふ、フレアさんっ…近いですっ…」

「ふーん…」


 …ふぅ。

 助かったよ。


 フレアはいつも落ち着いているように見えるのに、たまにこうやってとんでもなく距離を近づけてくる時がある。

 セリもよくやられて、その度にガクガクになってたことも、今となってはいい思い出だね。


 今となってはいい思い出……どころか、人間兵器のような攻撃をさせるぐらいには距離が縮まったということだ。

 

「ねぇリンお腹すいたーっ」

「こらセリ。はしたない声を出すんじゃありません」

「えーっ。だってお腹すいたんだもん」


 そんな声を出していると、ダメ男に引っかかっちゃうよ?


「これはなんていう料理なのかしら」

「シチューって言うんだ。正確にはホワイトシチューってやつかな」

「初めて見るわね…」

「だよね、意外と定番なスープだったりするんだけど。こっちにはあんまり馴染みがないみたいで」

「リンさんっていつも不思議な料理を思いつくよね」

「ま、まぁね」


 普通に料理しただけで、こっちの世界にない発想だったりするから本当に困る。

 もはや私みたいなほぼ素人な人間が、料理人として大成しそうな勢いだよ。


「そういえばさ、3人って貝類は食べるの?」

「食べない」

「わたしも食べないわね」

「たまに出てくるかも」


 フレアがたまに食べるくらいか。

 

 さすがは王宮の料理人だ。

 貝なんて、見た目だけでいえば、食べたくないと言う人も少なくはないからね。


 そういえば私が高校の頃、雑学好きな化学の先生が「アサリは海の掃除機」「フィルターに詰まったゴミを食べてるも同然」なんて過激なことを言っていた気がするよ。


 それを聞いた子が貝を食べれなくなったなんてのも、いい思い出……ではないけど、懐かしい思い出だね。


「「「「 いただきまーすっ! 」」」」


 少し火で炙ったパンと共に、クリームシチューをいただくとしよう。


 ……ふふ。


 味の感想は、知る人ぞ知る、ということで。


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