17 噂の虎狩り1 (ノイン視点)
冒険者を経験し、内政事情も抜け目がなかった俺は、文句なしでこの街の領主を引き継ぐことになった。
今年で43だ。
冒険者をやめて10年以上も経った。
当初はもう少し冒険者をしたかったのだが、23の時に冒険者ギルドで知り合ったサリナという女性に一目惚れして、3年後結婚した。
28の時に子供を授かったため、少し経った時に仕方なく冒険者をやめて領主になったのだ。
当初は貴族でもないサリナと結婚することを街の貴族に批判的に扱われたのだが、どうにか結婚できた。
権力はあまり使いたくはなかったが、国王の言葉を借りると、貴族どもは目をつぶるしかなくなったのだ。
この街は良心的な貴族も多いものだが、やはりどうしても欲に塗れたやつがいるのは、どうしようもないことなのか。
どうせ俺の子供と結婚させて金と権力を得たいと思っている奴らもいるのだろう。
………何も知らないくせに。
まぁこの街は平和で、それ以来特に大きな騒ぎもなかった。
多少のゴタゴタはありそうだが、これからも安寧に暮らしていける。
そう考えていた。
「ノ、ノイン様!!!」
いきなり扉が開いた。
この街の門兵のエルだ。
何事だ。
「エルか。どうしたんだ騒がしい」
「タイガーが討伐されまして………その…タイガー……を街まで運んできているようなのですが………それが……」
タイガー? 最近見なかったとはいえAランクの魔物が出たことにそこまで慌てる必要はあるのか?
「タイガーなら森の奥に数ヶ月前にも出ただろう。何をそんなに慌てている」
「いえ、そ、その………タイガーというよりはむしろ……タイガーを討伐した…少女に問題が……」
少女? 何を言ってるんだ?
少女がタイガーを討伐? 聞き間違えか?
「馬鹿を言え。周りの冒険者たちが倒したのをからかっているんだろ。全く。息抜きは必要とは言えほどほどにしておけよ」
「ノ、ノイン様! ですから!!」
「なんなんだまったく…」
何を言ってるんだ全く。
「ノイン様! 信じてくれないかもしれませんが! 少女が2人で森から来たと思ったら、片方の少女が大型5m級のタイガーを片手で引きずって来たんです! そしてその後、そのタイガーに収納魔法を使って!! しかも無詠唱で!!」
まさか………何をからかっているんだ。
いや、しかしエルはここまで冗談を言うやつではない。
となると…
本当にそんなことがあり得るのか??
そんな化け物がいるなど、国王様からも聞いていないぞ……
「もう…何が…何やら……現場を見た私にも…理解ができません………」
「もうよい。わかったから、お前はその少女に気付かれないように見張っておけ。報告も忘れるな。もしカイルがいればあいつにやらせるのだがな。あいつは今、例の場所への巡回でいないんだ。やつが帰ってきたら報告してすぐに向かわせよう」
「り、了解しました!」
これはまずいかもしれない。
カイルよ……早く帰ってきてくれ………。




