12 私、化け物でした。
ギルドマスターに奥の部屋へと連れてこられた私は、現在、水晶玉らしきものの前に座らされている。
「これが何かもちろん知っているだろ?」
「えっと、ごめんなさい。村にはこんなのなかったので。知りません」
「はぁ…? なんちゅう村だ…」
「すいません…」
どうやらこの水晶玉は、話を聞く限り便利アイテムだ。
この水晶玉には個人情報が記録されており、国を跨いでその情報が管理されているらしい。
私が昨日商業ギルドで登録した市民カードも、どうやらこれに情報を入れて作られているらしいが、急いでいたためあれは仮発行のようなものだったらしい。
本登録するには水晶玉に手をかざし、同時にその人物の魔力を登録する必要があるそうだ。
指紋みたいなものってことだね。
てことは、魔力は少なからずみんな持っているということになる。
一度登録してしまえば、市民カードをかざすだけで情報が出てくる。
そしてこの水晶は遠い昔の偉い人が生み出した魔道具らしい。
さらに便利なことに、その人物の持つ魔力量まで測定できるという。
さすがに体重や体脂肪率までは測定できないそうだ。よかった。
「じゃあ、この水晶に手をかざして魔力を込めてみろ」
言われるがままに手をかざす。
するとモニターのようなものが表示され、それを見たギルマスの顔が明らかに引き攣る。
「ま、魔力量が………測定不能……?」
「あ、あの…」
「お前さん、リンと言ったな。何をしでかした?」
「え!? 私何もしてませんけど!?」
「…………。そうか…。だが、明らかに魔力量が多すぎる。これで測れないということは、この国、この世界の想定する最大値では測れないということだ」
「えっと…あの……」
これが大っぴらになれば、色々面倒くさそうだ。
私は平和に異世界を満喫したいだけなのに………。
「この話は…内密にしてもらえませんか」
「すまないが、領主のノインには伝えさせてもらう。そのうちノインの元へ行ってもらうことになるだろう」
えー、めんどくさい…
どうしてこうなった…
そもそもカイルって人はどうして私の魔力を感じ取れたの…
「控えめに言ってもお前はこの街の脅威だ。その…見た目は完全に…あれだが…」
「まぁ言いたいことはわかりますけど、私は別に街を破壊したり人を殺したりするつもりはありませんよ。こればかりは信じてもらうしかありません」
「そうだな。こんな見た目の女の子がそんな残虐な行為をするとも思えん。とりあえずは信じるとしよう」
よかったー。
まぁ自分から進んで騒ぎを起こしたくもないしね…。
「そういえば、この近くの森が広範囲で焼けていたらしいんだが…。もしかして………」
「な、なにもシリマセン」
セーフ。誤魔化せた。
なんやかんやでようやく市民カードに冒険者として登録された。
冒険者の仕組みはとてもわかりやすい。
Eランクから始まり、D、C、B、A、S、S+の7段階に分かれている。
魔物の討伐や依頼を達成することでランクが上がる仕組みだ。
詳しい基準は説明されたけど、わすれた。別にランクを上げる理由もない。
しかし、S+の人は現在ではいない。
S+とは、英雄の存在と同等レベルらしい。
ちなみに私は、ギルマスが「タイガー…どうしたもんか…」とつぶやいていたが、とりあえずはEランクからスタートすることになった。
魔物討伐に関しては、依頼になくても常時受け付けているらしい。
ちなみにタイガーはAランクだった。
そりゃあれだけ混乱するわけだ。
私が部屋を出ると、騒ぎも何やら鎮まっているようだ。
助かったぁ。
「おい」
「は、はい!?」
「さっきはすまなかった」
あーっと、カイルって人だっけ。
とりあえずこういう時は下に出て謝っとこう。
「あ、いえ、こちらこそすいませんでした」
「謝る必要はない。怪我はないか?」
「怪我?」
「…? 俺の刀を素手で受け止めていたんだぞ…?」
あぁ…そういえば……
え? 刀を素手ってやばくない?
え? 私の手大丈夫………?
恐る恐る左手を見る。
大丈夫だ。ちゃんとついてるよ。左手。
さっき水晶玉にかざしたじゃん。
ビビらせないでよ………。
「さっきのは運良くたまたま止められたみたいで、その、なんともないです」
「……」
気、気まずい……
運良く片手で刀止められるって何………
「あの、1つ質問してもいいですか? それで今回のはなかったことということで」
「あ、あぁ、なんだ」
「どうして私の魔力が感じられたんですか?」
「あぁ、それか。それは……」
そうしてカイルさんは探知魔法についてを教えてくれた。
どうやら魔力を感じる魔法らしい。
カイルさん曰く、私からは魔物が発するオーラとは別次元のオーラが出ていたそうだ。
だから私を魔人だと勘違いしてしまったとのこと。
確かに。魔力を制御できないのが魔人という伝承があった。
私を魔人だと思うのも仕方ないのかもしれない。
「それって、私でも使えますか?」
「お前さんの名前は………えっと…」
「あ、リンって言います」
「リンか。すまないな。俺はカイルだ。俺はこの街ではギルマスの次に魔力が扱えてな。その俺でも普通の人間や動物の魔力を感じることはできないんだ。魔物や魔人といった、魔力が極端に溢れているものしか感じられない。今のリンからは魔力は感じ取れないのだ」
なるほど。
要するに魔力を感知できる精度があるということか。
「まぁそのなんだ。最初は明らかに異常な魔力量で切りかかってしまったが、こんな女の子が魔人だなんてな。冷静さを欠いていたのだろう。本当にすまない」
「もう謝罪は十分受け取りましたから。大丈夫ですよ」
「そうか。俺の家に探知魔法についての魔導書がある。確か魔導書庫にもなかったはずだから、俺の家に来るといい」
魔導書…?
魔導書庫…?
「あ、あのカイルさん。私田舎出身で、魔導書とか聞いたこともないんですけど、どういうものなんですか?」
「なに? リンはそれだけの魔力を持っているのに魔法は使えないのか?」
「え? 魔法なら多少は使えますけど、魔導書は見たことないです」
「なに…?」
「え?」
え、なに…
え…
「魔法を使うには魔導書を読んでその魔法を理解する必要があるんだが…」
「え、っとその…村の人たちに教えてもらったのでできるようになったというか…」
「な……」
え? なんで???
魔導書に書いてあるなら人から聞いても同じじゃん……
「普通、魔導書には何も書かれていない」
どういうこと?
「人間にはそれぞれ適性属性というものがあってな。その適性に当てはまらない場合は魔導書に書いてあることは何も見えないんだ」
なるほど。
つまり火属性に適性があれば火属性の魔導書は見れるけど、水属性に適性がなければ水属性の魔導書はどれだけ見ても何も書かれていないということか。
誰だよ魔導書作ったの。めんどくせぇよ。
「人から聞いただけでは適性があるかどうかもわからない。適性がないのにいくら教えても無駄だからな。それに、同じ魔導書でも人それぞれ違うことが書かれている。その魔法を使うための理解の仕方は人それぞれ違うからだ」
なるほど。これはなんかわかる気がする。
問題に対する解答は一通りしかないが、それに至る思考は人によって、当たり前に違う。
でも、私が治癒魔法を使用できた時の仮説を考えてみるなら、過程よりも結果が大事なんじゃなかったっけ。
結果がわかってて強くイメージできれば魔法は使える。
おかしくない?
だけどカイルさんが嘘をついてるようには見えない。
うーん。
あ、でも過程のイメージが多少雑になっても、魔力を込めれば誤魔化せるんだった。
つまり脳筋プレイができるってことだ。
てことは、カイルさんを含めて普通の人たちは、魔力量も微々たるものだから、しっかりイメージしないと魔法が発現できないということなのかな。
結果だけをイメージする脳筋プレイだけでは魔力が足りなくて魔法が発現できないと。
ますます私やばくない? 私、やっぱり脳筋なの?
なんかショックなんですけど……
「探知魔法の適性を持っているやつには、ある法則性があってな」
「それって?」
「魔力量が多いということだ」
「つまり強い人しか使えないということですか?」
「まぁ、そうなるな。これは俺が探知魔法の魔導書を開いた時に書かれていたことだが、要約するとどうやら自分の魔力を外部に放出し、魔力と魔力が干渉した時にそれを察知する魔法みたいだ」
つまりは、レーダー探知機のような感じか。
わかりやすくていいな。
……
仕組みが分かれば脳筋でいけるんじゃね?
「ちょっとやってみます」
「さすがに無理だと思うぞ…」
………
身体から薄く広く魔力を放出…
その魔力1つ1つが私の新たな感覚になる…
その魔力で触れた魔力を感じる………
……
!!!!!
「できた」
「………え?」
「カイルさん、ギルドの受付の裏に5人います。そのうち3人は固まっていて、1人はギルマスの部屋に向かって歩いて行きます。もう1人はギルマスの部屋でじっとしています。これギルマスですかね」
「ま、待っていろ確認してくる」
カイルさんが受付に走り、信頼されているのか裏に通される。
「なっ!?」
カイルさんの声が聞こえる。
戻ってきた。
顔から伝わる。ドン引きしている。
「リン…お前は────」
「ただの田舎者です」
「………」
この設定いいな。
田舎者だからこの辺の常識がちょっと………という感じで誤魔化せる。
「そういうことで、魔導書も気になるんですけど、さっき言ってた魔導書庫ってなんですか?」
「あ、あぁ、魔導書庫ってのは国が保有している魔導書の書庫でな。そこに行って、自分に適性している魔導書があれば借りることができる。もちろん金を取られるがな」
お〜! 夢がいっぱい詰まってる!!
「ちなみにお金ってどれくらい必要なんですか?」
「モノにもよるな。収納魔法などは比較的誰でも使えるように銅貨数枚程度で見られるが、本格的に攻撃したりするものだと最低でも金貨5枚はくだらんな」
たっけ〜。
興味あるけどそんなにお金ないもんなぁ………
あれ、でも
「でもカイルさん、それって適性を判断してから借りるんですよね?」
「そうだが?」
「それだと、適性があったとわかった時、お金を払う前にサラッと全部読んじゃえばよくないですか?」
「それは不可能だな」
「え? どうして?」
「魔導書に書かれていることを理解するのには少なくとも1週間はかかる。瞬時に理解するなど不可能だ。1週間も同じ魔導書ばかり1日中適性を調べていてはさすがにバレるだろう」
「たしかに」
魔導書庫かぁ。暇な時に行ってみようかな。
そんなわけでカイルさんとも別れ、私は散歩がてら森に出ることにした。
確かめたいこともあったのだ。
ここまで読んだ方ならお気づきでしょうが、内容量にかなりばらつきがありますw
基本的に多少区切りがいいところまで全部書いてしまう悪い癖です…。




