11 冒険者ギルド
次の日、私は冒険者ギルドに行くことにした。
これにはいくつか理由がある。
私は今、金欠だ。
全財産が8万円というのも、いくら物価が安いとはいえ心許ない。
それに、いつまでもイリアさんのところにお世話になるわけにもいかない。
冒険者ギルドで手っ取り早く金を稼ごうと思ったのがまず1つ目の理由だ。
そして2つ目なのだが、ポーションは商業ギルドではなく、冒険者ギルドの方が多く扱っているらしい。
それもそうか。魔物を相手にすることが多いんだから、瀕死の状態や状態異常になることも考えられる。
それから、あれはどうやら薬草からできているわけではないらしい。
魔法使いがビンに治癒魔法を込めているのだとか。
だからポーションは、一回で治らなければ同じポーションを何度使用しても変わらないそうだ。
それで昨日、ポーションは1本でいいと言われたのね。
とは言っても、ポーションは高い割に治癒能力はそこまでないらしい。
考えたくないことだが、あえて質を落としているのかもしれない。
とりあえずポーションを試してみて、ダメだったらもっとお金を積んで神官や司教に頼む。
もしポーションが高性能でバンバン治療してしまったら、治癒魔法で商売をしている人の儲けが減ってしまうのだろう。
んー、なんとも言い難い。
商売としては理にかなっているが…。
と、いうことでポーションの情報は1番身近である冒険者ギルドで聞くのが1番だと思い、興味本位としてついでに聞きにきた。
そして最後の理由が、出汁だ。
冗談ではない。出汁だ。
いや、正確には、ガラだ。
出汁を取るためにガラが必要なのである。要するに、動物や魔物の骨だ。
冒険者ギルドには、冒険者たちが倒した魔物が集められている。
すなわち、骨があるということだ。
聞くところによれば、魔物とはいえ美味しいものは美味しいらしいし。
魔物であるかどうかの違いは、魔力を制御できているかできていないかの違いで、魔力を制御できなければ魔物と判断されるらしい。
遠い過去には人が魔力を制御できなくなり、魔人になったという話もあるって、イリアさんが言ってた。
恐ろしい話だ。
というわけで、どうせ骨を買うなら、魔物を狩ってお金をもらって、さらにガラも頂いてしまおうという算段である。
あくまで主なる目的は冒険者登録と、美味しそうな骨があればそれを買うこと。ポーションはあくまでおまけの目的である。
セアを治した時に治癒魔法は自分で使えることが分かったので、ポーションなんて別になくても構わない。
てなわけで冒険者ギルドにやってきた。
うわぁ…むさ苦しい…。
私みたいな幼いレディーが居ていい場所じゃないよ。
とは思いつつもまずは冒険者登録せねば。
……うん。
めっちゃみられてる。
場違い感がすごい。
これはもしかして、「おいこんなガキが何しに来やがった! ガキはさっさとママのところに帰りな!」という定番の絡まれパターンの予感…。
くぅ〜緊張する〜!
そういうの、実は憧れてた。
私が弱々だったら絡まれたくないけど、この世界じゃ私はほぼ敵なしだと思う。
よし、ちょっと魔力出しといて準備しとくか。
……
…
あれ?
絡まれない…?
どうして?
それで絡んできた冒険者をボッコボコにして優越感に浸る感じのやつ、ないの…?
ってか、むしろみんな離れてない?
えっと…?
───────ガギィィィィィンッ!!!
「「「「「 !? 」」」」」
えっ?
─────私の左手には刀が受け止められていた
なにこの展開…?
平和な街で14歳の私にいきなり刀が降り注いでくる急展開なんてある…?
「クッっ!?」
刀を振り下ろしてきた男は、ヤバいといった表情でこちらを見て、すぐ後退した。
え? どういう状況??
すると男はこう呟いた
「魔人…め………」
その後ハッキリ聞こえるように叫んだ
「魔人め!!!!!!」
「「「「「 !? 」」」」」
え!? なんですかその設定!?
あれ、でも周りの反応は人によって違う。
タイガーが…なんとか…って聞こえてくるんだけど…。もしかして私の噂を知っている人たちかも…。
けど、「魔人だと!?」ってなってる人もいるし…
どうすれば……。
とりあえずこの人たち言葉わかるよね??
よし。がんばれ、昨日1日努力して得たコミュ力を出しきれ!!
「あ、あの─────」
私ならいける!
ここにきた目的をしっかりと伝えるんだっ!
「─────ここって骨ありますか!?」
「「「「「…」」」」」
ってちがーう! 間違えたーっ!!
ラーメン作りたい欲が先走りすぎてとんでもないことを言ってしまったーっ!!!
「なっ!? なっ………骨!? だと……」
「骨!?」
「それって私たちの骨ってこと!?」
「え、違うだろ骨のある奴らかって実力を測ってんだろ!?」
「あいつAランクのカイルだろ!?」
「カイルの剣を素手で受け止めてたぞ!?」
ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいーー!!!!
「き、貴様、ここを、この街をどうする気だ……!」
「えっ!! はい、あの、冒険者ギルドに登録さ、させてもらおうかと思って! あの、ごめんなさい!!」
「なにをほざくかこの魔人め!! 貴様からは間違いなくあり得ないほどの魔力を感じる!!!! そこまで漏れ出ているのに何を誤魔化している!?」
えっ?? 魔力が漏れ出てるの???
え、でもそんなこと誰も言ってこなかったけど…
あれ、そういえば私って昨日、森の中にずっといたけど一度も魔物に会ってないよね。タイガーはいたけど、あれは私と遭遇したわけじゃないし。
もしかして、私から半端なく魔力漏れ出てたから魔物が近寄ってこなかったってこと?
弱肉強食の頂点だったってこと??
え、わからない。わからなさすぎるよ。
えっと、とりあえず魔力を体の一点に集められるようにやってみよう。
ふぅ〜〜〜〜んっっ!!!!
「…?」
「あ、あの、どうですか?」
「魔力が…感じられない…」
「あぁよかったぁ。その、ごめんなさい。私まだ魔力がコントロールできてなくて、皆さんにご迷惑をお掛けしたみたいで…」
「な、何者だお前は………」
「私、リンって言います。冒険者ギルドに登録したいと思ってきたんですけど…」
な、なんとか収まったかな??
「何事だ?」
「ギ、ギルマス…。この女は一体…」
ギルマス? なんか出てきた。
「お前は…確か5m級のタイガーを引きずり回した挙句に丸々1匹魔法で収納したという…」
「えっ!? なんで私のこと知ってるの!?」
「タイガーを引きずり回した!?」
「5m級を収納!?」
「あれ、やっぱり噂の虎狩りよ…」
「あれが噂の………」
と、虎狩り…?
「お前さん、ちょっと奥まで来てもらおうか」
「え、あ、はい?」
ポーションのことなど完全に眼中から消えてしまった私は、冒険者ギルドの奥へと案内される。




