新たな結界
深夜近くなって、急に部屋の扉が叩かれた。
夢うつつだったティアナはその音でベッドから飛び起きた。
もう一度扉を叩く音がする。
返事をするよりも先に扉を開くと、エリクスが驚いた顔をしてそこに立っていた。
「起きていたのか」
「今起きたところ。変化があったの?」
こんな夜中に尋ねてきたということは、結界石に変化があったことを意味していた。
「結界が元通りに張られたようなんだ。師匠が張っていた結界を解いて確認しているが、結界石が発動を再開したと考えていいだろう」
深夜になって、城を覆う結界が前と同じように張られたことに気がついた。結界を張っていたリーンが最初に気づき、今は張られた結界が正常に機能しているか確認しているという。
「正常だと判断されれば、結界石の修復は成功したことになる」
それを聞いて、ティアナは両手で口元を押さえた。火属性の結界石は魔力を得て無事に発動し始めたのだろう。
「よかった」
「よくやったな」
ほっとするティアナの頭をエリクスが撫でる。子ども扱いされているように思うが、今は安堵の方を優先してしまった。
「クロードは?」
「まだ地下室に待機している。しばらく様子を見て、魔力補充が必要ないと判断されれば戻ってくるだろう」
今はクロードが魔力補充をする時間だった。結界石の魔力量が満たされたのなら、もう魔力を与える必要はなくなる。あとは自然の中から微量の魔力を吸い取って結界の維持をしていくだろう。
これで結界石が元に戻ったと判断されればティアナの役目も終わる。
ほっとすると同時に、ティアナは気になっていたことを尋ねた。
「私が作った結界石が役割を補ってくれれば、壊れた結界石はどうするつもりなの?」
「あれはもう結界を張るうえでは役に立たないだろう。とはいえ、200年前の魔封石士が作った魔封石だ。国の管理で保管される可能性が高い」
「そうなのね」
石自体にひびが入っていて魔封石としての使えなくなってしまったようだが、中に描かれた魔方陣は壊れていない。初代7賢者の魔封石士の思念もあの一度きりで消えてしまったように思っている。
魔方陣が描かれたただの石と化してしまったため、もしも破棄することになるのなら譲ってほしいと思っていた。
だが、貴重な魔封石であることには変わりないので、壊れてしまっていても国の管理下で保管されることになるという。おそらく王立図書館の立ち入り禁止区域に保存されるのだろう。
「もらえないかなって思ったんだけど、無理そうね」
「さすがに貴重な資料になるからな。ティアナが7賢者になれば、いつでも見ることはできるかもしれないが」
それはまだ先の話になるだろう。だが、7賢者になれば立ち入り禁止区域にも関係者として入ることが許される。そうなれば思う存分貴重な魔封石を見て調べることが可能になる。それは将来の楽しみとして取っておくことにしよう。
「ほっとしたら、また眠くなってきたわ」
「本来ならまだ寝ている時間だからな。とりあえず結界が戻ったことを報告に来ただけだ。今はゆっくり休んでくれ」
すべてが終わったことに安心すると、眠気が少しずつティアナに襲ってきていた。
「朝になったらまた詳しい話をしよう。おやすみ」
「おやすみなさい」
扉を閉めると1人になった部屋で、深呼吸をする。心の中に溜まっていた不安をすべて吐き出すように息を吐くと、再びベッドに潜り込んだ。眠る時間は短くなってしまったが、きっといい夢が見られそうだと思いながら目を閉じた。




