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魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
結界石作り
73/122

魔方陣の組み合わせ

紙に描いた魔方陣を見つめながらティアナは悩んでいた。

まだどんな効果があるのかわからない魔方陣は半分。そのうちの3つを魔封石に描いてリーンに試してもらった。危険があるかもしれないので、魔法や魔封石を試すための専用の場所で発動させてもらったが、どれも小さな力を発揮するだけだった。

1つは地面に小さな火が点々と現れてリーンを囲むように灯される程度。もう2つは魔力が動いているのはわかるのだが、見た目には何も起きてくれなかった。

「補助的な魔方陣かもしれない」

ティアナはそう結論付けた。それ単体では何の効果もないが、別の魔方陣と組み合わせることでその魔方陣の魔法を強くしたり、別の魔法へと切り替えてしまう魔方陣もある。そういうのは魔封石の強化や修復に使われることが多い。

残りの2つも作ってみたが、今はリーンがその効果を確かめに席を外している最中だった。その間に次の魔封石を作れないかと考えている。全部の効果を確認できればすべての魔方陣を描いて結界石の試作品を作ることも可能だ。しかし、それでは同じ結界石ができる気がしなかった。

「2つの組み合わせで試しながらの方がいいかしら」

時間はかかるが、魔方陣同士の組み合わせも試していった方がよさそうだ。そんなことを考えていると、部屋がノックされた。返事をするよりも早く、扉が開かれる。

「この2つも小さな魔法しか出てこなかったよ」

入ってきたリーンが少し困った顔をしながら机に魔封石を置いた。

「こっちは頭の上に火が出た程度。もう1つは魔力が動いているのは感じたけど反応なし」

「1つは補助系ですね。あとでどんな補助か確かめましょう」

「それにしても、これだけの小さな力で、結界石ができているとは思えないよ」

リーンの感想に、ティアナも同意するしかなかった。

他の調べた魔方陣も小さな火が出たりする程度で、結界を張るような効果がない。これらを組み合わせることで結界を織りなすのかもしれないが、今の状況では想像すらできない。

「何か間違っているのかしら。それとも見落としがあるのかな」

魔方陣自体に間違いはない。ただ、組み合わせで効果が違ってくる可能性がある。

「1つ1つ確かめるしかないですね」

「地道な作業になりそうだね」

「リーン師匠にも仕事があるんじゃ」

「それはエリクスに任せられるから大丈夫」

そういうリーンはどこか楽しそうだ。書類の山に囲まれて1人ペンを走らせているエリクスが容易に想像できてしまった。魔術師団長は城に所属しているすべての魔術師を統括する立場にある。普段から書類仕事が多いはずなのに、リーンはたまにそれを放棄して姿を消すことがある。そんなときは弟子であるエリクスが補佐として書類整理をしているのだ。妃教育を受けていた時に、こっそりリーンのところで魔封石を作らせてもらっていたが、エリクスが机に向かって黙々と作業をしていた記憶が残っている。

「あまりエリクスに負担をかけないほうがいいと思いますよ」

「将来の7賢者で僕の後継者だから、今から慣れていくのにはちょうどいいさ」

などと言っているが、今の7賢者はリーンなのだから彼が仕事をするべきではないだろうかと思う。

「とりあえず、いくつか魔方陣を組み合わせて魔封石を作ってみます。それの効果を確認してください」

せっかくリーンがいてくれるのだから、他の魔封石の効果も確かめることにする。

組み合わせ次第では想像していなかった効力が起こるかもしれない。それを願って新しい魔石を手元に置いた。

両手で包み込むようにしながら魔石の中に魔力を流し込んでいく。魔力で石の中に魔方陣を描いていくのだ。魔力を流しながらわずかに指を動かしていくと魔石の中に魔方陣が刻まれていく。まずは小さな火が灯る魔方陣を描き、それが終わると補助の魔方陣を重なるように描いていく。その途中で最初に描いた魔方陣が壊れないように重なる部分は特にゆっくりと丁寧に描いていった。

「よし」

2つの魔方陣が描き終わると、火の属性を持った魔石が、火を生み出す魔封石へと変わった。

もう1つ違う魔方陣を描いた魔封石を作ると、それをリーンに渡した。

「お願いします」

「試してくるよ」

渡された2つを見比べてから、リーンはティアナの顔を覗き込むように見た。

「今日はここまでにしておこうか」

「え?」

「今日だけで魔封石をたくさん作っているよ。小さなものばかりだけど、魔力操作も精神的に負担になるから適度に休んだ方がいい」

午後からの作業ではあったが、魔方陣の効果を確かめるために魔方陣分の魔封石を作っていた。それ以外に組み合わせた魔封石も今作った。魔方陣を重ねて描くのには丁寧な魔力操作と集中力が必要になる。それが精神的な負担になったりもする。

「まだ大丈夫ですよ」

弱い魔封石ばかりなので、そこまで疲れは感じていなかった。

「それでも、適度に休んだ方がいいよ」

リーンはそう言ってティアナの頭を軽く撫でてから部屋を出ていった。

「そんなに疲れてないけどなぁ」

撫でられた頭を押さえてティアナの呟きが部屋に響く。

「もう少しだけ」

リーンには休むように言われたが、魔力もまだあるし疲れたとは感じていなかったので、魔封石をさらに3つ別の組み合わせで作ってみた。

「ふぅ」

3つ作り終えると息をつく。さすがに連続で作るのは魔力よりも精神力が削られた。魔方陣を重ねて描くのに集中するため、作り終えると一気に疲れが伸し掛かってくるようだった。

「今日はここまでかな」

そう思って椅子にもたれると、扉をノックする音がした。返事をするとクロードが顔をのぞかせた。午後からは側にいてくれることになっていたが、同じ部屋にいる必要もなかったので、隣の部屋で待機してもらっていた。リーンが魔封石の効力を確認しに行ったのを知ったのか、様子を見に来てくれたようだ。

「順調か?」

「リーン師匠に確認をしてもらっているけど、まだまだって感じかしら」

魔封石作りは始まったばかりだ。結界を張るためのきっかけさえまだ見つけていない。部屋に入ってきたクロードが机の上に転がる魔封石や魔石を眺めながら尋ねてきたが、ティアナは肩をすくめて苦笑するしかなかった。

彼と視線が合うと、なぜか眉間に皺を寄せて顔を近づけてきた。

「クロード?」

どうしたのだろうと思っていると、クロードが突然ティアナを立たせた。

「え?」

「自分がどんな顔色なのか自覚していないな」

そう言って背中を押して歩かせようとする。

「ま、待って。どうしたの?」

突然のことに戸惑う。

「どれだけ魔封石を作ったのか知らないが、顔色が悪いぞ。今日はもう休め」

「私ならまだ元気よ」

自分の顔色は鏡がないので見られないが、ティアナは疲れを感じていても具合が悪いとは思っていなかった。

「肉体的な問題だけじゃない」

なんとは部屋から出されないように踏みとどまったが、クロードは背中に回していた腕の力を緩めてティアナと向き合った。

「体力も魔力もまだ大丈夫なんだろう。でも、精神面が疲弊しているように俺には見える」

「精神面」

「ここに来てから精神的にしっかり休んでいないだろう。結界石を作らなければという重圧がずっと付きまとっているように思ってた」

「それは・・・」

クロードの指摘にティアナは言い返す言葉が見つからなかった。結界石を作るために2人の魔封石士が呼ばれた。お互いに作る魔封石の内容は違うし、いつ壊れるかわからない結界石のことも気にしながらこの4日間を過ごしてきていた。ティアナ自身まだ動けると思っていたが、周りから見るとそうではなかったようだ。先ほどリーンが休むように言っていたのは、クロードと同じ意味だったのだろう。

「ごめん、なさい」

周りに心配をかけていたことを反省する。目を伏せて謝るとそっと肩に手が置かれたのがわかった。

「わかったなら、今日はもう休んだ方がいい」

優しい声が返ってくる。

「部屋まで送る」

「うん。ありがとう」

自分の状態を把握できなかったことは、魔封石士としてもまだまだ未熟だと言えるだろう。経験が足りないと言われているが、まさにその通りだと思いながらティアナは今日の作業を終えて部屋に戻ることにした。


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