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魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
結界の魔封石
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赤い結界石

魔封石への案内はリーンがすることになった。付いていくのはティアナと長身の男だけ、他の者たちは自分たちの仕事場へと戻っていき、クロードはなぜかエミリアに呼ばれて一緒に行ってしまった。

結界石は城の地下にあるらしく、何年も城に来ていたティアナも地下には行ったことがなかった。

「人目に付く場所には置けないからね。全部で6個あるけど、それぞれ別の部屋に1つずつ置かれているんだ」

地下へと続く階段はリーンが使っている魔術師団長の部屋にあった。7賢者に魔封石士がいないため、代々魔術師団長が管理することになっていたのだ。現在は7賢者であるリーンが魔術師団長を務めているので、魔封石の管理も彼が行い、石の部屋につながる階段も彼の許可なく通ることはできない。

リーンの部屋に入ると、懐かしい気持ちになる。

彼に隠れ弟子にしてもらってから、何度か部屋を訪れていた。魔術師団長の部屋に王子の婚約者が出入りしていると噂が立たないよう、できるだけこっそり通っていたのが思い出される。

「こっちだよ」

そう言って示されたのは部屋に入って右側にある扉だった。入ってすぐの部屋は応接室になっていて、向かいに窓があり、右側にはリーンの執務部屋が繋がっている。左側にも扉があるがそちらはエリクスの仕事部屋になっていた。窓と扉以外の壁はすべて棚が備え付けられており、びっしりと魔導書や魔法関連の本が収まっていた。それさえも懐かしく思いながら執務部屋に入ると、リーンはさらに奥にある扉に向かった。

「あれ?」

こんなところに扉などなかったはずだ。首を傾げると、リーンが悪戯がばれた子供のように笑いながら振り返った。

「普段は扉自体を隠しているんだよ。たとえ見えたとしても僕の許可がないと入れないようにはしてあるけどね」

そう言って扉を開けた。

「すぐに階段だから、足元に気を付けて」

通路などがあるわけではなく、扉を開けると本当にすぐ階段になっていた。リーンに続いて降りて行くとすぐ後ろを長身の男が付いてくる。まだお互いに名乗ってもいないが、男がティアナのことを見下していることだけは雰囲気からわかっていた。40歳くらいに見える男は、がっちりとした体に強面な顔が余計に威圧的な迫力を醸し出している。それと比べるとティアナは20歳の小娘だ。こんな小娘に何ができるのかと疑問に思われても仕方がない。

無言のまま降りて行くと、階段が途切れて広い空間に出た。

部屋の壁には10個の穴が開いていて、その先が通路になっているようだ。

「この地下は入り組んでいるから、道を知らないとどこに行くかわからなくなる」

別の部屋につながっている通路もあり、戦争時には王族が避難するために使われていたそうだ。戦争後使い道を失った地下通路だが、結界石の置き場所として人知れず使われることになった。

「問題の魔封石はこっち」

迷うことなくリーンが1つの通路を進んでいく。そのあとを追っていくと、途中何度か左右に折れ曲がりながら1つの部屋に辿り着いた。

「さぁ、どうぞ」

リーンが部屋に入るように促す。

その部屋は中央に四角い台座あるだけの、他に何もない殺風景な場所だった。台座の上には大きめのクッションが置かれ、その上に埋もれるようにして拳大の綺麗な球体をした魔封石が置かれていた。

赤い魔封石は明らかに火属性の石だ。

「普通に見た感じでは、異常は見つからないようだが」

長身の男が石をのぞき込むようにして眺める。魔封石にひびが入ったと言っていたが、見た目には綺麗な魔封石のままだった。

「外側は問題ない。亀裂があるのは内側だよ」

そう言われて、ティアナも石の中を覗いてみた。魔封石は基本的に半透明で、向こう側を見通すことができる。魔方陣を石の中に刻んでも、それは変わることがない。しかし、のぞき込んだ魔封石は中心のあたりにわずかな亀裂が生じていた。

「魔方陣に影響している可能性がありますね」

魔方陣は魔封石の中に刻まれる。その中心にひびがあるのであれば、描かれている魔方陣にも何らかの影響が出ているだろう。

「詳しく調べることはできますか?」

「持ち出すことはできないから、調べるならこの場でやるしかない。これ以上壊れることがないようにできるだけ慎重に頼むよ」

修理もしくは新しい魔封石を作るにしても、この魔封石に刻まれた魔方陣を調べる必要がある。どんな魔方陣を使い、それがどんな効力を持って結界を作り出しているのか、魔封石士の腕の見せ所である。

「さっそく調べてみるぞ」

先に動いたのは長身の男だった。

魔封石を包み込むように両手をかざす。魔力を流して魔封石の中の魔方陣を調べるのだ。

「・・・・・なっ」

時間にして数秒だった。目を閉じて魔方陣を見ることだけに集中した男は、驚いた声を上げて数歩後ろに退いた。

「ディラン?」

リーンは男の名を呼んだ。そこで初めて男の名前がディランであることを知った。

「この魔封石、本気で調べるのかよ」

驚いた顔のままディランは魔封石を指さして叫んだ。

「こんな魔方陣の配列見たことないぞ」

その言葉で複数の魔方陣が描かれていることがわかった。興味を持ったティアナはディランの横をすり抜けて魔封石に両手をかざした。

目を閉じて魔力を流し込みながら、中に描かれている魔方陣を調べ始めた。

途端に頭の中に複数の魔方陣が浮かんできて、その魔方陣の並びを視た瞬間、ティアナは衝撃を覚えた。

1つの魔方陣が1つの魔法の効果を生み出すが、その魔方陣に重なるように別の魔方陣が描かれている。魔法が発動すると連動してその魔方陣も魔法を発動するのだろう。そして、その魔方陣もまた別の魔方陣と角度を変えて重なっていた。魔方陣の重なりを数えていくと、いつの間にか1つ目の魔方陣と重なっている魔方陣が発見される。

決してお互いを邪魔することなく、綺麗に配置された魔方陣の群れ。頭に浮かぶその光景に、ティアナはいつの間にかうっとりとして吐息を漏らしていた。

「・・・綺麗」

「え?」

後ろにいた男2人が不思議そうに声を漏らしたが聞こえていなかった。

「全体的なバランスに異常はなさそう。魔方陣自体の傷は、1つ1つの魔方陣を分解して検証してみないとわからないわね。この配列だからこそ成り立っている結界魔法なのね。相乗効果もあるのかもしれない」

頭に浮かぶ魔方陣を視ながら、ティアナは思うままに口を開いていく。

「火属性なのに、火に関わる魔方陣が少ないような気がするわ。これで効果が発揮されるなんて、どうなっているのかしら?やっぱり重なることで別の力が働いているのよね」

幾重にも重なってしまった魔方陣は、どんな形なのかすぐに見極めるのも難しい部分さえあった。

もしかするとその中にさらに隠された魔方陣がある可能性もある。そう考えると、心の底からワクワクする気持ちが沸き起こってくる。

「ティアナ」

ふいに肩を強く掴まれて、ティアナは目を開けた。振り返ると呆れた顔をしたリーンが立っていて、その後ろに驚いた顔をしたディランがいた。すっかり2人の存在を忘れてしまった。

「いろいろ視えたみたいだね」

「予想以上の魔方陣が刻まれています。複雑に組み合わされているみたいなので、描かれている魔方陣を1つ1つ解読していかないと駄目ですね」

思い出すだけでうっとりしてしまいそうな綺麗な配列だった。これが200年前に作られた魔封石であり、これを作った魔封石士は相当な魔力を持っていただろう。魔力操作も技術も飛び抜けていたはずだ。

「7賢者初代の魔封石士は本当にすごい方だったんですね」

今のティアナでは到底敵わない。

「同じ魔封石を作ることは、今の時点では無理だと考えたほうがいいですね」

もっと時間をかけられれば少しずつ魔方陣を刻んでいき、配置を間違えることなく重ね合わせていければ、同じものを作ることは可能かもしれない。それが同じだけの効果をもたらしてくれるかどうかは、また別の話になるが。

「まったく同じものを作る必要はないよ。一時的にでも同じだけの効力を持った魔封石を作ることができれば、代用して使えばいい」

代用品で一時しのぎをしている間に、同じ魔封石を作るということも可能だとリーンは考えているようだった。それなら、時間がかかっても目の前の魔封石と同じものを作ることはできるかもしれない。

「そんな簡単じゃないぞ」

リーンの考えにディランが顔をしかめて反論してきた。

「同じ効力を持った魔封石を作ること自体ができるかどうか」

まだ謎な部分も多い。同じ配列で同じ効力を持った魔封石を作れるかどうかは、作ってみないとわからないだろう。

「だからこそ、2人に頼んでいるんだよ」

できるかどうかではなく、作らなければいけない。今のところ結界は僅かに歪みを生じさせている程度だが、これもどこまで持つかわからない。

「可能性はゼロじゃないだろう?」

ティアナはもう一度赤い魔封石を見つめた。難題ではあるが、挑戦する意味はあるだろう。

「やれるだけ、やってみます」

それが今のティアナの精いっぱいの返事だった。リーンもそれをわかっているのか、それ以上何も言わずに静かに頷くだけだった。


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