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魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
新たな命令
63/122

7賢者の2人

城に来てすぐティアナが体調を崩したため、休憩を取ってから集合することになったが、7賢者の魔術師リーン=ラナスターが予定より集まるのに遅れていることもあって、全員揃うまでに結局夕方になってしまった。

その間ティアナを休ませて昼食も出された。

エリクスは事情を知っているようだったので詳しい説明を聞きたかったが、彼から説明することは禁止されていたらしく呼び出された内容を聞けないまま、なぜか魔法についての雑談で時間を潰していた。

基本的にクロードの魔法がどこまで使えるようになったのかの説明をしつつ、そこから今後の魔法の訓練に関してエリクスの意見を聞くような形になっていた。

夕方になってリーンが到着したことを告げられて部屋を移動してきた。

大きな長机が中央に置かれ、その両側に等間隔で椅子が並べられた、会議をするためだけに用意されたと思しき部屋に案内させられた。

クロード達が部屋に入ると部屋の左奥の席に60代くらいの男性が座っており、その向かいに20代くらいの綺麗な女性が優雅にお茶を飲んでいた。

「お待たせしました。7賢者候補生のティアナ=フロースと、その護衛のクロード=アイリッシュです」

部屋に入るなりエリクスが2人に向かって声をかける。ティアナはスカートを摘まんで淑女の礼を取ると、クロードも胸に手を当てて礼をした。

「まぁ、ティアナさん来てくれたのね」

お茶を飲んでいた女性が立ち上がって声を上げると、そのままの勢いでティアナに駆け寄ってきて抱きついた。

「お久しぶりです。エミリア様」

彼女の抱擁に慣れているのか、驚くこともなくティアナは受け入れていた。

「何度かお城に来ているのに、いつも会えないで帰ってしまうんですもの。直接会うのは本当に久しぶりだわ」

そのまま踊りだしそうな勢いで喜ぶ女性に、クロードは少し引き気味になってしまった。

「彼女は7賢者の占い師、エミリア=ハーディスだ。7賢者になる前はハーディス公爵家の長女だった」

占いの実力を買われ、令嬢時代からいろいろな相談を受けていたところを国王の目に留まり7賢者になった。少し変わった性格をしていたために周囲から距離を置かれていたらしいが、本人はそんなことを気にすることなく、あっさり7賢者になることを受け入れたそうだ。

「見た目は20代に見えるが、実際は30半ばだから、見た目に騙されるなよ」

「ちょっとエリクス君。聞こえているわよ」

こっそり教えてくれたエリクスの爆弾発言に驚く暇もなく、エミリアが睨んできた。

「事実を教えていただけです」

「師匠に似てきて口が達者になってきたかしら」

未だにティアナを抱きしめたままエミリアが頬を膨らませている。それが余計に幼く見えるのだが、実際は30歳を超えていると言われてもぴんとこない。

「もうそろそろいいだろうか?」

部屋の入り口での応酬を見ていた男性が立ちがって声をかけてきた。

「リーン君ももうすぐ来るだろうし、席についてくれるとありがたい」

「ティアナさんは私の隣よ」

男性に促されてエミリアがティアナの手を引いて席に戻っていく。それを見て、クロードは部屋を出ようとした。

「どこに行く?」

「俺は関係者ではないだろう。部屋の外で待っている」

今回呼び出されたのはティアナだ。クロードは護衛としてここまで一緒についてきたが、話し合いが始まるのであれば部外者は必要ないだろう。そう思って部屋から出ようとするとなぜかエリクスに止められた。

「確かに呼ばれたのはティアナだが、クロードも同席してくれ」

「なぜ?」

「詳しい話は7賢者からになるが、クロードにも聞いておいてほしいそうだ」

どうやら7賢者からの要望でクロードもここに呼ばれた理由を聞かされることになっていたらしい。

「わかった」

そう言って椅子に座ることにした。

「君とは初めて会うね」

ティアナの隣に座ると、反対側に座っていた男性が声をかけてきた。

「私は7賢者のロイド=リックスという。よろしく」

「クロード=アイリッシュです」

「騎士団所属の魔法騎士だそうだね」

自分の名前は言ったが、魔法騎士であることは口にしなかった。魔法が使えるようになったとはいえ、まだ騎士団で認められていないため、魔法騎士であることを言うのは躊躇われた。だが、ロイドはすべてを知っていた。

「魔力を暴走させて破壊騎士と言われているそうだね」

「魔力を安定させる訓練をしているので、魔力暴走はもうすることはないと思いますよ」

ロイドの問いに隣に座るティアナが答えた。

「魔封石も使って強い魔法の制御もできているので、魔法騎士として動くことはできると思います」

「それはよかった。しばらくは城にいてもらうことになりそうだから、そこの安全は確保されていないと困ったからね」

そう言ってロイドは微笑みながらクロードを見た。定期的な報告は手紙で騎士団にされているので、今のクロードの状態は騎士団長には伝わっているはずだ。騎士団長も7賢者の1人なので、同じ7賢者のロイドも情報としては把握していただろう。だがクロードとは1度も会ったことがなかったので、ここで確認を取ることにしたのかもしれない。

「魔法を安定的に使えるように訓練を始めてから1年ほど経ちました。今のところ周りに被害を出すような暴走はしていません」

1度だけ暴走しかけたことはあったが、その場にいたティアナのおかげで被害が出ることはなかった。それ以降何度も魔法を使っているが、力を抑えきれずに暴走するような感覚はない。

魔法を使うようになってもう1年も経つのかと、クロードは不思議な感覚になった。

「感傷に浸るのはいいけど、もうそろそろ本題に入らない?もうすぐリーンも来るみたいよ」

エミリアの声で我に返ったクロードは、同時に部屋の扉がノックされて振り向いた。

「お待たせ。遅くなったね」

返事を待たずに部屋に入ってきたのは7賢者のリーン=ラナスターだった。遅れてきたことに反省する様子もなく、部屋を見渡してから後ろにいる人物を部屋に入れた。

「彼を連れてくるのに思った以上に時間がかかっちゃったよ」

「あんな移動魔法、俺の体が耐えられるわけないだろう」

促された男はリーンに文句を言いながら、重い足取りで部屋に入ってきた。190センチはありそうな長身にがっちりとした体格なのだが、その顔色は白くて具合が悪そうだった。

「急いでいたからね。これくらい大丈夫かなって思ったんだけど」

「大丈夫じゃねぇだろ」

リーンと随分親しいのか砕けた会話をしながらこちらに歩いてくる。

ティアナとエリクスが立ち上がったので、クロードも習って立ち上がった。男が誰なのかわからなかったが、リーンは7賢者なので座って迎えるわけにはいかなかった。

ロイドの隣にリーンが座り、その隣に疲れた様子を見せながら男が座ると、クロード達も再び座った。

「これで揃ったようだし、話を始めるとしようか」

席に着いた全員を見渡してからロイドが口を開いた。

「ここから先に話すことは、ここにいるメンバーだけの機密事項とする」

彼の静かな声が部屋に響く。空気が一気に緊張するのを感じながらクロードは手を握った。


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