表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
新たな命令
59/122

新しい日常

「今日もいい天気ね」

新しい魔封石が完成すると、ティアナはそれを袋に閉まってから窓を開けて、外の空気を取り込んだ。

季節はすっかり春になり、日中の陽ざしが心地よい季節になってきた。

ブロファリト王国は1年を通して安定した気候ではあるが、夏は暑い日もあるし、冬は暖炉に火を入れるくらいには寒くなる。今はぽかぽかとした日が続いている春だ。

ここに来て魔封石の店を開店させてから1年が過ぎた。

1年前に彼女はこの国の王子に婚約破棄を提案され、それを快く了承して、諦めていた魔封石士としてフォーンに引っ越してきた。いろいろと予想外の出来事もあって店を休みにする時期もあったが、何とかここまでやってこられている。

1か月前には、婚約者であったリンド王子が無事に新しい婚約者になったルナリア=ベルメシャと結婚することもできた。ティアナは式に参加しなかったが、その後に行われたお披露目を兼ねたパーティには伯爵令嬢として参加してきた。

ルナリアとは手紙のやり取りはしていたが、直接会うのは久しぶりだったので、周りの目を気にしながら、できるだけ仲良くしているのだと周囲にアピールもしてきたつもりだ。

一方の元婚約者であるリンド王子とは、7賢者の候補生となって以来定期的に城に登城することになって、数回顔を合わせていた。いつも7賢者に会ってすぐに帰ることが多かったので、王子と直接会話することはほとんどなかったが、姿を見れば軽い挨拶くらいはしていた。ここでもお互いにわだかまりのない関係であることを明確にするようにしていた。

「綺麗だったな」

1か月前のパーティではルナリアは主役に相応しい素敵なドレスを身にまとって、妃として恥じることのない優雅な姿を周囲に見せていた。たったの1年ではあったが、見事に王太子妃を身に着けていた。

登城する機会のあるティアナも、また会うことがあるだろう。その時は7賢者候補生と王太子妃という立場に変わってはいるが、ルナリアはティアナへの接し方を変えることはないように思っている。

空気の入れ替えを終えて窓を閉めると、店内が春の陽気に満たされたような気分になる。

「ティアナ。もうそろそろ昼だが」

暖かい空気に満足していると、2階からクロードが下りてきて昼を知らせてくれた。

「お客さんもちょうどいないし、昼食にしましょう」

作業机を簡単に片づけて、ティアナは2階へと向かった。

半年ほど前は荷物を置くためだけの殺風景な部屋になっていたが、ティアナが国の保護下になる7賢者の候補生となると、その護衛としてクロードが店の経営時間も一緒にいることが多くなった。そのため彼が休んでいられるように、再び家具が配置された。食事をするための机と椅子はそのままに、休めるようにと3人掛けのソファも用意した。キッチンにも再び食器が置かれ、ベッドはないが住もうと思えば住めるだけの用意がされた。

2階に上がると、クロードがすでに昼食をテーブルに並べてくれていた。昼食は毎朝シャイヤが用意してくれている。2人分になったバスケットをクロードが持ち、彼と一緒に店まで歩いてくるのがティアナの日課だ。隣にはパン屋もあるので、たまに出来立てのパンを買って昼食にすることもある。

2人が向かい合って椅子に座ると食事が始まる。

あまり会話の多くないクロードだが、彼との食事で嫌だと思ったことはなかった。不思議と落ち着く雰囲気で食事が進められていく。今日も会話のない昼食の時間だと思っていたティアナだったが、ふいにクロードが口を開いた。

「今度はいつ登城する予定になっている?」

突然の質問に、パンを頬張ったティアナは粗食しながら首を傾げた。なぜ今それを聞くのだろう。

「昨日王都から手紙が来た」

「そういえばクロード宛ての手紙があったわね」

ティアナ宛ての手紙も今はログの屋敷に届くようになっていた。昨日は自分の手紙がなかったが、ログ宛てと珍しくクロード宛ての手紙が来ていたことを思い出す。

「王城の騎士団長からだった」

「え?」

「次に登城する機会があれば、騎士団に顔を出すようにと書いてあった」

7賢者の候補生となったティアナは、2か月に1回のペースで登城することになっていた。その時には自分が作った魔封石を提出したり、7賢者の誰かと面談したりする。時間さえあれば図書館で魔封石に関する資料や本を読み漁ることもある。登城する時は必ずクロードが護衛として一緒についてきてくれるが、城にいる間はほとんどが別行動だ。

「そうね、1か月前に結婚式のパーティがあったから、その時に報告も兼ねてしまったし、次に行くならもう1か月先かしら」

結婚式やパーティの準備で忙しくしている城の中だったが、7賢者たちにとっては変わらない日常生活だったらしい。会いに行っても嫌な顔一つせずに対応してくれたことを思い出した。

「登城する日がはっきりしたら教えてくれ。こっちから連絡を入れておく」

「わかったわ」

前に一度騎士団長と会う約束をしたことはあったが、事件に巻き込まれて結局会えないで終わってしまった。それ以降も城に行っていたが、騎士団長と会える機会はなかった。それを向こうも考えたのだろう。事前に約束をしてクロードとの面会をするつもりになったらしい。

「騎士団長と面会なら、やっぱり今のクロードの実力が知りたいってことよね?」

「手紙には会いに来るようにとしか書いてなかったが、おそらくそうだろう」

魔封石の力を借りてではあるが、クロードが魔力を暴走させることなく魔法を使えるようになったことは伝わっている。7賢者リーン=ラナスターの弟子であるエリクスは何度もクロードの魔法を見ているので、その実力も報告しているだろう。それを聞いて、騎士団長も自分の目で確かめるためにクロードを呼ぼうとしたに違いない。

「あと1か月くらいあるから、その間にもっと魔法を鍛えましょう」

クロードの剣の腕よりも、魔法の実力を見たいはずだ。そう考えて提案すると、クロードは静かに頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ