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魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
魔封石店を開く
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クロードの心境

「今日はティアナ嬢が来る日だったね。クロード、迎えに行ってきてくれ」

ログのその言葉に内心ため息をつきながらクロードはティアナのいる魔封石店に向かっていた。

彼女がやってきてから5日に1度はログの屋敷で夕食を共にしている。きっかけは貴族出身のティアナが突然店を始めることになり、引っ越してくる前の数日だけ料理を教えてもらっただけで、それ以外で料理経験がなかったことだ。数日で教われる料理は知れている。簡単なものを教えてもらっただけで、時間や手間のかかるものは教わってこなかった。そのため、ログの屋敷に勤めている住み込み家政婦のシャイヤから料理を教わりたいという申し出があった。

彼女の店は5日間営業して1日休業にしている。そのため、次の日が休みに合わせて前日に夕食を一緒にとり、1泊して次の日は朝からシャイヤと料理をするようになった。独り身のシャイヤにとって娘ができたような気分で、二人が料理をしているところをクロードは何度か見ているが、とても楽しそうにしていた。だからか、時々ティアナが本当に貴族出身なのか疑いたくなる時がある。

クロードはそんな彼女が夕方店を閉める時間に迎えに行き、次の日の夕方までに店に送り届けることをログに頼まれていた。ログの屋敷は街の一角にある広大な森の中に建っている。どちらかと言えば大きな森の一角にフォーンという町がひっそりくっ付いているような形ではある。

女性の一人歩きはいけないとログが心配して、クロードは案内役兼護衛ということでティアナを迎えに行っている。森の中に明かりがないので光の魔封石が入ったランタンを片手に森の道を歩いていく。

1人でティアナを迎えに森を歩いていると、どうしても彼女のことを考えてしまう。自分のために魔封石を作りたいと申し出たティアナだが、最近は特に何も言ってこない。ずっとクロードが断り続けているからなのだが、彼女の目はまだ諦めていないのはわかっていた。訴えかけるものを感じながらクロードは今もそれを無視し続けている。

この国では7歳になると協会に行き、それぞれ魔力の有無を確かめることが義務付けられている。そこで魔力がある子供は、親元を離れて王都にある魔法学園や各街に点在している専門の学校に行くことになる。クロードは王都から離れた小さな村で生まれ、7歳の時に近くの教会で魔法選定を受けた。そこで魔力が異常にあることを指摘され、魔法学校に入るように勧められた。だがそこで選定を受けた直後、自分に魔力があることを知ったクロードは抑えきれない力の本流に巻き込まれ、力を暴走させてしまった。どうやら選定を受けたときに感じた他者の魔力に自分の魔力が反応してしまったのだ。初めての魔力に当然クロードは抑え方を知らず、暴走した魔力は教会を破壊し、周りに大きな被害を出した。死者は出なかったもののクロードの魔力を抑え込むために多くの教会の人間が怪我をした。そのことはすぐに王都に報告され、後日彼のもとに一人の魔術師がやってきた。彼は7賢者を名乗りクロードの魔力の制御をするために派遣されてきた。クロードは彼とともに別の村に移り住み、そこで10年魔力制御の訓練をしつつ剣の技術を磨くことになった。

魔術師を目指すことも提案されたが、クロードの父が騎士をしていたこともあって、両方をこなせる魔法騎士を目指すことにした。だが、修業して剣の技術は磨かれても、魔力制御だけはどういうわけか上手くいかず、魔法を使おうとすると流れ出る魔力に飲まれて暴走させてしまっていた。魔力制御ができなければ魔法を使うこともできず、結局魔力持ちのただの騎士として成長していった。17歳になって王都の騎士試験を受けると合格したが、そこで魔力があるのなら魔法騎士になることを勧められ、改めて騎士団内で魔法を試みたのだが、そこでまたもや力が暴走し、騎士団は彼の扱いに困ってしまった。そのまま騎士として扱えばよかったのかもしれないが、もしも戦闘中に魔力を暴走させるようなことがあったら、敵も味方も関係なく多くの犠牲が出る可能性があったため、騎士にするにも下手な扱いができなかった。身の置き場がなくなったクロードだったが、その当時の7賢者たちが話し合って、詳しい経緯は知らないが、今は隠居の身となったログのところへ預けることになった。

それから3年が経って、ティアナが彼の魔力制御できる魔封石を作りたいと申し出てきた。10年以上どうすることもできなった自分の魔力を貴族令嬢がどうにかできるとは到底思えない。下手をすればまた力が暴走して彼女を傷つける可能性だってある。そう考えるとわかりましたと言う気になれなかった。

「不思議だな」

ティアナの期待しているような寂しそうな目を見ると、2度と関わるなと突っぱねることもできない自分がいる。心の奥では魔力制御できればという期待がまだ残っているのかもしれない。魔法騎士として王都に戻ってみたいと。

「・・・馬鹿な考えだ」

無理なことを考えても仕方がない。ティアナが諦めるまで、この攻防は続くことになりそうだ。

そんなことを考えながら歩いていると、森を抜け民家が姿を現し始めた。もう少し歩けばティアナの魔封石店が見えてくる。店を閉めて片づけが終わるころに合わせて迎えに行くようにしているので、彼女も時間はわかっている。必要に応じてシャイヤにパンを買ってくるように頼まれることもあるが、今日はティアナの所に直接行くことになっていた。

もう少しでティアナの店だと思った瞬間、前方で怒声が聞こえた。

「きゃっ」

「おとなしくしろ!」

男の声に交じって小さな悲鳴が聞こえてきた。

顔を上げると、店の前で倒れこんでいるティアナと、彼女を押さえつけている体格のいい男が見えた。

次の瞬間クロードは走り出していた。


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