ベッドで悶える
部屋に戻ったティアナは、扉を閉めると勢いよくベッドに潜り込んだ。
さっきまでクロードの腕の中にいた感触がまだ体に残っている。前に抱きしめられた時は、慰めるように背中をぽんぽんと叩かれたが、今日はきつく抱きしめられた。
大切なものを護るように、大事な人を慈しむような力が伝わってきたことを思い出すと、ベッドの中で声にならない声があげた。きっと今鏡を見たら、顔が真っ赤になっているだろう。
結局煎れたハーブティーは一口も飲めずに終わった。落ち着くためにお茶を飲もうと思っていたのに、逆に心を乱して部屋に戻ってきてしまった。
「あれは、反則よ」
リンドと婚約していたが、あんな風に抱きしめられたことは一度もなかった。完全に男性経験が足りない。
「恥ずかしすぎる」
2人きりで他に見ている人はいなかったが、それでもあれはドキドキしすぎた。
体を離した時、クロードは平気な顔をしていたように思う。それが証拠に、平然とカップの片づけを始めていた。
「なんか、悔しい」
ドキドキが落ち着いてくると、今度は平然としていたクロードに対して怒りにも似た悔しさが込み上げてきた。
「・・・もう寝よ」
ため息をつくと、ティアナは毛布を頭まで被った。ここで怒っても、クロードに何かできるわけでもないし、後で顔を合わせても、仕返しをしようとは思っていない。
彼がティアナを抱きしめたのは、苦しんでいたティアナを励ましてくれただけだと思っている。恐怖で心が固まってしまったのを溶かすように、もう大丈夫なのだと言い聞かせてくれていた。別に深い意味はない。深い意味があると考えてしまうと、きっとティアナは戻れない場所にまで感情を動かしてしまうような気がした。そうなる前に考えるのをやめた。
「エリクスが戻ってくるまで・・・」
今回の襲撃の報告をすれば、リンドとリーンが次の手を考えてくれるだろう。それまではここを動くことなく大人しく待っているしかない。ただ待つのではなく、ティアナにはティアナにしかできないことをしながら待つつもりではあるが。
彼女は魔封石士だ。作りたい魔封石はたくさんある。幸いエリクスが新しい魔石を持ってきてくれた。明日からはその魔石を使って、新しい魔封石を作ることにしよう。
どんな物を作ろうかと考えながら、ティアナはそのまま眠りに落ちていった。




