美味しくなったパン
「美味しくなったパン。だそうだ」
「ありがとう」
クロードが隣でパンを買ってくると、2階に戻ってすぐに昼食を始めた。
買ってきてくれたのはクロワッサンと、ひと口大に切り分けられたバゲットだ。
「お金はいらないと言われた」
「試食用に用意してくれていたのね」
「・・・意味が分からないんだが」
クロードは言われるままに買ってきたので、ティアナの説明がわからなかったようだ。
「実はね・・・」
首を傾げる彼に、ティアナは朝開店と同時にやってきたダンの話をした。
「水のせいでパンが美味しくなったと?」
「他の工程は何も変わってなかったらしいから、変えたのは魔封石を入れた水を使ったことだけなのよ」
「それで美味しくなるのか?」
「それを確かめるために買いに行ってもらったの」
ダンだけではなく、パンを買いに来た客たちも言っていたことだ。ティアナはそれを自分の舌で確認してみたかった。
「クロードも隣のパンは食べているでしょう。味の違いがわかるかもしれないわ」
話を聞いただけのクロードは首を傾げていた。半信半疑といったところだろう。
話をしていてもパンの味はわからないので、2人はさっそくパンを口に入れてみた。
「・・・いつもよりしっとりしている気がするわ」
「抜群に美味しくなったという感じではないが、確かに柔らかさがいつもと違うな」
バゲットは硬めのパンのはずなのに、口に入れたパンは思っていたより柔らかくて食べやすかった。クロワッサンもしっとり感が増している気がする。
「確かに、美味しくなったと言えるかも」
ダンの言っていたことは本当だったようだ。
「帰りにお店に寄ってみるわ」
感想を伝えたいし、魔封石も出来上がりそうなので持っていって、ぜひ使ってもらいたい。
「シャイヤとログ様にも買って帰りましょう」
美味しくなったパンを2人は喜んでくれるだろう。
「午後の仕事も頑張らないと」
やらなければいけない仕事に、帰りにパンを買うことを決めたティアナは、午後からの仕事のためにパンを頬張った。




