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魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
買い物と新たな縁談
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縁談とクロードの気持ち

外の様子を伺いながらクロードは昨日のことを思い出していた。

ティアナの縁談話が持ち上がった。

他国の王子との縁談で、相手はティアナを気に入っているようだ。

ティアナ自身は、魔封石士としてここで暮らしていきたいと思っている。だが、伯爵令嬢が、王族の縁談を断るためにはそれなりの理由がないと無理だろう。

レインは詳しいことがわかったらまた来ると言っていたが、その時は縁談の日取りと場所の決定事項を持ってくるはずだ。

最初からティアナに決定権はない。貴族社会で生きている限り避けられない。

レインが帰った後、さり気なくティアナの様子を伺ってみたが、彼女の横顔は諦めと寂しさが漂っているようだった。

「それにしても」

昨日の話を聞いて、今朝の監視するような気配。何かつながりがあるのだろうか。

「考えすぎか・・・」

なにか仕掛けてくる様子もなかったので、こちらから深追いをするつもりはない。今は様子を見るだけだ。

考え事をしながら外の様子を伺っていると、店には数人のお客が出入りしていた。来店を知らせるベルの音は2階にも聞こえてくる。

ティアナの魔封石は質が良いらしく、少しずつ評判が広まっている。最初のころはあまり入らなかった客も、ここ半年でぽつぽつと増えてきていると聞いていたが本当のようだ。いつも送り迎えしかしていないクロードは店の現状を知らなかった。

クロードが首から下げているペンダントも、ティアナが作った魔封石だ。今は風と水と光の混合石を持っている。

いつもならこの時間は、屋敷に戻って魔法の練習をしている。

手のひらを上にして意識を集中する。

「光よ」

声とともに手のひらに小さな光の球が現れた。これくらいの魔法なら簡単にできるようになった。ただ光の球を空中に浮かせようと放り投げた瞬間、球は最初からなかったかのように、空気に溶けるように消えてしまった。

クロードの体を離れると、魔力が途端に失われて魔法を維持することができないのだ。

これは今も改善していない。ティアナもいろいろとアドバイスをくれるのだが、一度も成功していない。

体を離れることができなければ、遠距離攻撃ができない魔法騎士ということになる。これではまだ城での任務につくことはできないだろう。

ため息をついてから、もう一度窓の外を見た。

縁談の日程が決まれば、彼女は一度フォーンを離れることになる。王族との縁談ともなれば、どちらかの城で顔合わせになるのだろう。単純な伯爵家と王族の縁談ということにはおそらくならない。これは国と国の交渉による縁談になるのだろう。そこにティアナの意思がどこまで反映されるのかわからない。

縁談がまとまれば彼女は隣国に行くことになってしまう。そうなればクロードの魔封石作りも終わる。

始めて彼女に魔封石を作ってもらう時のことを思い出してしまう。

拒絶していたクロードにティアナは手を差し伸べてくれた。諦めていた心に光を向けてくれた。

ティアナがいなくなったら、中途半端な魔法騎士を卒業するのは難しいだろう。

胸がもやもやする。

クロードには縁談を止める術はない。

「クロード」

複雑な気持ちを抱えたまま外を眺めていると、ティアナが2階に上がってきて顔を出した。

「もうすぐお昼だけど、隣にパンを買いに行こうと思うの」

「昼食はシャイヤが用意していただろう」

「それは1人分だもの。2人じゃ足りないわ。ちょうどパンを買いたかったから、行ってくるわね」

クロードはティアナを店まで送ったら屋敷に戻る予定だった。そのためシャイヤが持たせてくれた昼食はティアナの分しかない。クロードの昼食がないことに気づいたティアナが、隣のパン屋に買いに行こうとしたようだ。

「待て」

財布を持って買いに行こうとするティアナをすぐに呼び止めた。

「それなら俺が買いに行く」

ティアナが出てしまえば、店主が不在になってしまう。

「少しの間だから大丈夫よ。心配ならクロードが店番をしていて。お客さんが来たら呼びに来てくれたらいいわ」

「そういう問題じゃない」

当たり前のように買い物に行く気でいる彼女は、クロードの静止に首を傾げていた。

「そのパンは俺の昼食用なんだろ。だったら、俺が買いに行く。それに、今は大丈夫でも今朝の妙な気配のこともある。できるだけ店から出ない方がいい」

クロードのパンを買いに行くのなら、自分で買いに行くのが妥当だ。それに、今朝感じた気配の正体がまだわからない以上、隣の店とはいえティアナを1人で行かせるのは危険だ。

「う~ん。でも・・・」

指摘したことは理解しているようだが、なぜか彼女は渋っていた。

「どうかしたのか?」

「買いたいパンがあるの」

「それなら言ってくれれば買ってくる」

自分用のパンを買いたかったらしい。少し考えてから彼女が口を開く。

「それじゃ、リナに美味しくなったパンをくださいって言ってみて」

「は?」

「きっとそれで伝わるわ」

それだけ伝えると、店からベルの音がしたので、ティアナはすぐに店に引き返した。

「美味しくなったパン?」

意味が分からなかったが、とりあえずクロードはパンを買いに行くことにした。


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