お客様
日がだいぶ沈みかけ、辺りが薄暗くなってきた頃、フォーンに帰ってきたクロードは隣でうたた寝をしているティアナの肩を揺すった。
「もうすぐ着くぞ」
久しぶりの遠出で疲れたのだろう。フォーン行きの馬車に乗ったのはティアナとクロードの2人だけだったこともあり、とても静かな移動になっていた。
最初は静かに外を眺めていたのだが、いつの間にか隣でティアナがうたた寝をしていた。途中何度か馬車が揺れることがあったが、クロードが体をずらして彼女を支えるようにしていたので、途中で起きることもなく、ティアナの帰り道は夢の中で終わった。
「ごめんなさい」
眠ってしまったことと、支えてくれたことに気づいたらしいティアナが謝ってきたが、眠ったことを起こる理由もないし、支えたのかクロードの意思なので気にしていなかった。
「明日は店に行くんだろう。今日はすぐに休んだ方がいい」
「そうね。そうさせてもらうわ」
馬車がフォーンに入って停まると、2人は荷物を持って馬車を降りた。
屋敷まではここから町の中を通って森に向かって歩かなければならない。
「魔石を置きたいから、お店に寄るわ」
屋敷まで持って帰れば、明日、また石を持って店に行かなければならなくなるので、先に荷物を置くことにする。
店は帰り道の途中にあるので、余計な距離を歩くこともなく荷物を2階の荷物スペースに置くと、すぐに屋敷に向かって歩き出した。
「混合石が手に入ったら、別の属性の魔封石も作ってみるからね」
「そういえば、前の石と今回の石の代金を払っていないが、請求はいつするんだ?」
ティアナが作った魔封石を、何も考えずに受け取ってしまっていたが、いまさらのようにそんな疑問が浮かんだ。
「それならもう請求してあるわ」
「どこに?」
クロードはお金のことをティアナから聞いたことがなかった。
「クロードの魔封石作りは、7賢者リーンからの依頼だったけど、クロードは騎士団所属だから、魔封石の請求は騎士団長に送っているのよ」
破壊騎士の魔力暴走を安定させるための魔封石を作ってほしいと、ティアナは最初7賢者から依頼を受けていた。クロードが魔封石作りを承諾してくれたことでいくつかの魔封石を作ったが、その請求はすべて、彼が所属する騎士団に送られていたのだ。
「どれくらいの金額なんだ?」
「う~ん。それなりにかしら」
はっきりとした金額は言わなかったが、混合石を使っている時点で、想像よりも上をいっている可能性がある。
「でも、クロードが魔法騎士として働けるようになることを考えたら、きっと安いものよ」
「・・・そうなのか」
どう反応したらいいのかわからず、とりあえず頷いておいた。
そんな会話をしていると、森を抜けて屋敷まで帰ってきていた。
「ただいま帰りました」
玄関でティアナが声をかけると、シャイヤがすぐに姿を見せた。
「お帰りなさい。ティアナさんにお客様が来ていますよ」
「私に?」
彼女はそのままシャイヤについていく形でリビングへと向かった。クロードは荷物を部屋に運んだあと、遅れてリビングに向かった。
そこでは、ログの隣にティアナが座り、2人の向かいでゆっくりとお茶を飲んでいる見覚えのある男が座っていた。
「私に、縁談ですか・・・」
呆けたようなティアナの言葉に、クロードは一瞬何を言っているのかわからなかった。




