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魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
買い物と新たな縁談
30/122

休みの予定

チリン

扉にベルを取り付けることで、来客を知らせる音が響くようになったのは、ティアナが魔封石の店を再開してすぐのことだった。

「いらっしゃいませ」

店自体は狭いのだが、作業に没頭していて反応に遅れることがあるので、音を使って解決することにした。

「光の魔封石が壊れちゃって、ランプが使えなくなったの。中の魔封石だけ取り替えたいんだけど」

「それでしたら、こちらの棚の中から選んでください。もっと強い光をというのであれば、オーダーメイドで作ることもできますよ」

「今までと一緒でいいのよ。このお店の魔封石は他より長持ちするって噂を聞いたから買いに来たの」

「それはありがとうございます」

ティアナが作る魔封石は、安定的で長持ちするとよくお客に言われる。ほかの店の魔封石と比べたことがないのでどれくらい違うのかわからないが、彼女の魔力操作技術が高いことが原因になっているだろう。より正確に美しい魔方陣を魔石に刻んでいくことができれば、それだけ安定的な魔封石ができる。複数の作用を持った魔封石でも、複数の魔方陣を刻む場合があるが、それもお互いに邪魔をしないバランスが取れたものを作れば、長く使うことができる。

光の魔封石を購入したお客が出ていくと、ティアナは再び作業机に広げてある魔石を手に取った。

「う~ん」

店に並べる魔封石は一般の人が使う用の、小さな力の魔封石だ。それは棚に並べられており、これ以上作っても在庫が増えるだけになってしまう。

「少し変わった物も作ってみようかしら」

そのためには、新しい魔石を調達する必要がある。

「明日は休みだし、クロードに付き合ってもらおうかな」

魔法騎士としてティアナの護衛に就くことになったクロード=アイリッシュは、今はここにいない。

ティアナがお世話になっているログ=フォームトンの屋敷で、魔法騎士として、魔法の訓練をしているはずだ。夕方、閉店する頃になると迎えに来てくれるので、その時に話してみようと思う。

この町には魔石自体を扱う店はなかったはずだ。

魔封石は、魔石に魔力を注ぐことで魔方陣を刻んでいく。魔石自体にも属性があるので、その属性に合った魔方陣を描くことで魔法を発動させられるようになる。

魔石の買い出しには王都に行く必要があるので、明日は朝一で馬車に乗って王都に行きたいことを伝えなければ。

そんなことを考えながら、数人のお客さんを相手にしていると、閉店の時間になってしまった。

扉に閉店を知らせる札を下げて、作業机に広げてあった魔石や道具を仕舞っていく。

チリン

扉が開いた音に顔を上げると、クロードが迎えに来てくれた。

「もうすぐ片付け終わるから」

「わかった」

机の上を片付け終わると、2階へと行く。

この町に来た頃は、店の2階がティアナの居住スペースだった。

約2か月前に起きた事件によって、ティアナはここに住むことを諦め、ログの屋敷でお世話になることになった。ほとんどの荷物を屋敷に移動したので、今は使われていない家具があるくらいだ。

カバンと上着を置いてあったので、それを手にすると再び1階に戻る。

「お待たせ」

2人で店を出て鍵を閉めると、並んで屋敷まで歩いていく。

基本的に2人の間に会話がない。クロードはあまり話をするタイプではないようで、ティアナが話しかけない限り無言が多かった。

静かな道のりだが、ティアナはそれを嫌だと思っていない。

不思議なくらい彼の隣を歩くのは落ち着くのだ。

「明日の休みなんだけど」

無言であるのもいいが、今日は明日のことを話さなければ。

「王都で魔石の買い出し?」

「魔封石を作るために必要な買い出しよ。この町だと魔石を扱ったお店がないから」

朝一で王都に向かう馬車に乗り、すぐに魔石を買ってすぐに戻ってくるという流れになるだろう。王都とフォーンは1日で往復することのできる距離ではあるが、王都にいられる時間はあまりない。

魔石の買い付けもできるだけ短い時間で済ませる必要がある。今夜は買いたい魔石のリストアップをしておいた方がいいだろう。

「なにか買いたい物があれば事前に教えて。時間があるかどうかわからないし、買い出し中に離れてもらっても構わないわよ」

「それじゃ、護衛の意味がない。それに、特に買いたい物もないから気にしなくていい」

魔石自体は大きな物ではないし、数も絞るつもりなので、荷物持ちを頼もうとは思っていなかった。だが、クロードはティアナの護衛という任務がある。別行動をするわけにはいかないのだ。

そんな話をしていると、屋敷に到着した。

「ただいま帰りました」

玄関で声をかければ、奥から住み込み家政婦のシャイヤが顔を出した。

「お帰りなさい。夕食の準備はできていますよ」

「ありがとう。荷物を片付けたら行きます」

そう言って部屋に行き、カバンと上着を片付ける。

ダイニングに顔を出せば、テーブルにはすでに食事が並べられていて、ログが椅子に座っていた。

「ログ様、ただいま帰りました」

「おかえりティアナ嬢」

ログの正面がティアナの座る位置になっている。そこに座るとクロードもやってきてティアナの隣に座った。

本来騎士は貴族と一緒に食事をすることはほとんどないが、彼がここに来た時からログが許しているので、用事さえなければ一緒に夕食を食べることがほとんどだ。

3人揃えば食事が始まる。

食事中は、大体ログがティアナに今日何があったのかを尋ねてくる。

ログはティアナを保護して預かっている立場になっているので、彼女の様子を確認しておかなければならない。

ティアナの今の立場は魔封石士として店を経営しながら、この国の王子の元婚約者である貴族令嬢。

王都を離れたことでログに保護され、クロードという王城の魔法騎士の護衛を付けてもらっている。はたから見るとなんとも微妙な立ち位置のようにも思える。

それでもティアナは今の生活を楽しんでいた。諦めていた魔封石になれた上に、自分の店を持つことができている。少しずつではあるがお客も来てくれるようになっていた。

「明日は休みを利用して、王都に買い出しに行ってきます。クロードも一緒に行きますから」

「必要な物があったのかい?明日は無理でも、次の休みに合わせて、人を呼ぶことはできるよ」

ログは貴族だ。貴族の買い物は商人を屋敷に呼んで、屋敷の中で商品を広げて買い付けることが多い。ティアナの屋敷でも必要な物はいつもそうしていた。特にドレスや宝石選びは時間がかかるので、半日を潰すことだってあった。

「魔石を買いに行きたいんです。できれば自分の目で確かめながら、いくつかお店を見て回りたいので直接買い出しに行こうと思っています」

「朝一の馬車で行けば買い物をする時間はあるだろうが、帰りは夕方の遅い時間になるんじゃないかい?」

「そのつもりです」

「そうか。十分気を付けるんだよ」

「はい」

ログにも話を通したので、明日は予定通り魔封石作りの魔石の買い付けが決定した。

時間に限りがあるので、明日のためにも買い付けリストを作っておかなければと、食事をしながらティアナはずっとそのことを考えていた。


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