合流
パーティー会場に戻ったふりをしてもう一度中庭に出たクロードは、薄暗くて人目につかない場所でエリクスと合流した。
彼とはログの家で一度顔を合わせている。王都から手紙を持ってティアナに会いに来た時だ。
「奴らが紛れ込んだのか?」
「目的はティアナだろう」
クロードの質問にエリクスは中庭の奥をじっと見つめていた。
フォーンでティアナを襲った2人組の正体はすでに分かっていた。その主も把握しているが、確実な証拠がなかったので今まで様子を見るだけにしていた。だが、今回パーティーに参加すれば何か動きを見せるだろうと思い、ティアナが1人になって囮をすることになった。この作戦は初めて顔を合わせた時に立てられていたものだ。
伯爵令嬢にそんなことをさせるのは危険だが、ティアナは貴族でありながら魔封石士でもある。それもそれなりに強い魔力を持った魔封石士だ。いざとなれば時間稼ぎくらいの戦闘はできる。そのことを知っている者は少ないが、クロードとエリクスは把握している。
「だけど、ここで騒げば周りに気づかれるだろう」
中庭に人がほとんどいないとはいえ、騒ぎを起こせば会場の誰かが気が付くはずだ。それを指摘すると、エリクスは首を横に振った。
「1人魔術師がいるだろう」
「いたな」
「それなりの魔力があるなら、おそらく結界を張る。ティアナを中に閉じ込めた状態で捕まえれば、誰にも気づかれない」
「なるほど」
こちらとしては、彼女が捕まる前に2人組の男をとらえる予定ではある。後ろにいる人物の特定もできているので、男たちを捕まえれば芋づる式であぶり出すつもりでいるのだ。
「結界を張られた後はどうするんだ?」
中に閉じ込められたティアナを救うためには結界を壊す必要がある。
「相手に気づかれないように結界に穴を開ける」
「できるのか?」
破壊してしまったほうが早いと思ったのだが、周りに気づかれないようにするため、エリクスは敢えて結界をそのままに、中に侵入することを提案してきた。だが、それはかなり高度な技術が必要な気がする。それを指摘するとエリクスが不敵に笑った。
「これでも7賢者の魔術師の弟子だぞ」
エリクス=ブロディーナは魔術師であり、現7賢者リーン=ラナスターの弟子だ。7賢者には1人だけ弟子を取ることが許されている。それは次の7賢者候補となり、7賢者として相応しい実力を身に着けさせるために用意された期間でもある。
結界を壊すことなく、気づかれずに穴を開けて侵入することなど、彼なら簡単にやってのけるだろう。それだけの実力を持っているはずだ。
「無駄な質問だったな」
反省すると、苦笑いされてしまった。
そんな会話をしていると、急に空気が変わった気がした。それは一瞬のことだったが、エリクスも気が付いて中庭の奥に視線を向けていた。
「始まったな」
小さなつぶやきにクロードも中庭の奥に視線を向ける。
「行くぞ」
エリクスの言葉に頷き、クロードは胸に手を当てた。服で隠れて見えないが、そこにはティアナが作った白い魔封石がある。宝石店に依頼してペンダント型に変えてもらった物を首から下げているのだ。
完全に魔法を使いこなせるようになったわけではないが、魔法を制御することはできるようになった。心の中で大丈夫と呟いてから、エリクスを追って走り出した。




