表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
いざ、王城へ
18/122

父との再会

父の執務室は屋敷の奥の南側にある。この屋敷が建てられた時、仕事をするときはいつも日の当たり暖かい部屋をと考えた当時の当主が南側に執務室を作ったと聞いたことがあった。それ以来現当主はその部屋で仕事をしている。

「失礼します」

扉をノックすると返事が返ってきたので、部屋に入った。

壁際にはいろいろな資料が詰め込まれた棚が設えられていて、南向きの大きな窓が部屋の真ん中にある執務机を照らす。今は夕方なので燭台のろうそくが部屋を明るくしている。いつ来ても本とインクの匂いがする部屋だ。

「思っていたより早く来たな」

「急いだほうがいいかと思ったから」

待っている間に執務机で作業をしていようと思っていたのか、書類を広げて父に近づくと、ティアナは改めて帰ってきた挨拶をした。

「私を呼んだのは、パーティーのことかしら?」

「それも関係しているな」

「どういうこと?」

「今回ティアナがパーティーに参加する経緯は殿下から直接聞いている」

今の婚約者のことで悩んでいた王子殿下は、元婚約者と比べられることで心がふさぎ込んでいる婚約者のために、ティアナと合わせることを考えた。殿下とティアナがお互い納得の上で婚約破棄したこと、新しい婚約者との間に溝がないことを周りに認識してもらうために、今回のパーティーに参加させたかった。だが、殿下はティアナが王都を出たことは知っていても、どこにいるのかを知らなかった。そのため、父であるアルフィードに声をかけたようだ。だが、父もティアナの詳しい場所を知らなかった。連れ戻される心配もあったため、ティアナは家族で兄にだけ教えていた。それでも父ならばティアナの居場所を調べることくらい簡単にできたはずだ。それを敢えてしなかったのは、親の反対を押し切って外に飛び出していった娘の自由を守ろうとしてくれたのかもしれない。

本人から直接聞いたことはないが、何も言わず寂しがっていた母と同じように、父もティアナのことを考えてくれていたのかもしれない。

結局殿下はティアナの居場所を知っている7賢者の1人から、直接の場所を教えるのではなく、手紙を届けるという条件で接触をしてきた。

「今の婚約者に、前の婚約者が味方に付けば、周りも比べることをせず、今の婚約者を支える方向に持っていけると考えているようだ」

「そうね。特にお妃教育をしてくれている人たちはそのまま引き継いだと聞いているから、どうしても私と今の婚約者を比べ安くなるわ」

結婚式まですでに1年を切っている。新しい教育者を招いて妃の教育をしている時間はなかった。今いる人員で新しい婚約者を殿下の隣に立派に立たせなければならなかった。

「本当なら、ティアナが婚約破棄された時点で、新しい婚約者を見つけて、殿下よりも先に結婚してもらえれば、もう少しことは落ち着いて進んでいた可能性もある」

それを聞いて、ティアナは瞬きをした。

「そんな話出ていたの?」

「当然だ。第1王子の婚約者が婚約破棄されて、新しい婚約者が立った今、前の婚約者がどうなったか周りは気にするだろう。すでに結婚して家庭に収まっていれば、周りも何も言わないが、自由に過ごしていれば、もう一度ティアナを妃候補にと考える人間がいてもおかしくない」

そうなれば、今の婚約者の立場がどんどん悪い方向に進んでいく可能性もある。

「そこは、全部殿下に任せたのに」

ティアナはため息をついた。彼女はリンドから婚約破棄を言われた時すんなり受け入れた。それは婚約者になった時の約束があったからだ。王子とは幼馴染で、遊び相手に選ばれた兄と一緒に幼い頃から一緒にいた。幼馴染としての愛情は持っていたが、恋愛感情ではなかった。そのため、本当に好きな人が現れたのなら、ティアナは潔く身を引くつもりでいた。

婚約を破棄してほしいと頼まれた時、ティアナはずっとしまい込んでいた願いを叶えてみたいと思った。そのために、リンドに婚約破棄を受け入れる代わりにティアナのお願いを聞いてもらった。その中の1つに婚約破棄後の後処理はすべて王子側で引き受けること。ティアナに負担を負わせるようなことがないようにしてほしいと言っていた。結婚式まで残り1年という期間がどれだけ大変なことかは殿下も承知していたはずだが、全部引き受けると言ってくれた。それだけ好きになったご令嬢と一緒にいたいのだとティアナはその時思ったのだ。

ティアナへの負担以外にももう1つ願いを伝えておいたが、それに関してはひと月前にあっさり破られてしまった。3日後にはリンドに会うことになるので、文句の1つくらい言いたいなと思っているところだ。

「こうなってしまった以上、私が動くしかないのね」

もう一つため息をつくと、椅子に座っていた父が立ち上がった。

「今からでも婚約者を見つけて、殿下よりも先に結婚してしまうのも手だが」

「それはできないわ」

ティアナはきっぱりと断った。母にも勧められたが、彼女にはやりたいことがある。

「レインから、ティアナが楽しく過ごしていることを聞いている。親としては娘に結婚して幸せになってもらいたいが、それ以外の幸せをお前は今見つけているんだな」

兄に宛てた手紙から、両親にはティアナの近況は伝わっていた。正確な居場所は伝えていないようだが、おそらく隣町にいることはわかっていて、何も言わないでくれているのだろう。ティアナが充実した日々を過ごしていることを一番に考えてくれている。

「お父様。娘の我が儘を許してくれてありがとう」

反対を押し切って屋敷を出て行った。そんな娘を突き放すのではなく、今の状況を受け入れてくれる両親に感謝だ。

アルフィードは静かに頷くだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ