表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔封石使いと破壊騎士  作者: ハナショウブ
新しい魔封石
13/122

魔法訓練

魔封石ができたという知らせを受けて、庭で剣の鍛錬をしていたクロードは、居間へと足を運んだ。

「まずは地の属性で作ってみたの」

渡された石は黄色い石で、持った感じでは特に変わったところはない。

「クロードの溢れ出そうとする魔力を安定させるためだけの魔封石よ」

そう説明され、クロードは首を傾げるしかなかった。

「魔法は使えないということか?」

「今の段階で魔法を使うのは危ないわ。まずはクロード自身が、自分の魔力に振り回されないように、魔力に馴染む訓練からにしましょう」

すぐにでも魔力をコントロールしながら魔法を使えるようにするのだと思っていたクロードからすれば、いささか拍子抜けだった。

「ずっと魔力を抑えてきたんだから、急に魔法を使ってもコントロールできないわ」

「そこを魔封石で何とかするんだろう?」

魔封石が溢れる魔力をコントロールしながら、魔法を使えるようにするものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。

「魔力のコントロールも魔法を使うのも、クロードがやるべきことよ。魔封石はあくまでそれをサポートする役割になるわ。今は魔封石頼りが大きいけど、クロード自身が魔力を上手く扱えるようになれば、魔封石に頼らなくてよくなっていくはずよ」

魔封石が何とかしてくれるのだと思っていたが、最終的にクロードが1人で魔法を使いこなせるようにすることを目標としているようだ。

「すぐにはできないから、時間をかけてやっていきましょう」

魔法診断を受けてから、一度もまともに魔法を使ったことがない。そう考えれば魔封石に頼ってでも安定的に魔法が使えるようになるのは、クロードにとって大きな一歩になる。

「それじゃ、庭で試してみましょう」

そう言ってティアナはさっそく庭で魔封石を試すことを提案してきた。それに従って庭に移動すると、魔法診断をした時のように向かい合う形で立たされた。今回は魔封石を持っている右手だけをティアナと重ねる。

「始めましょう」

ティアナがクロードの手を両手で包み込むように握りしめる。

「魔力を流してみて」

促されるままにクロードは右手に意識を集中させた。

少しして手に暖かみを感じたかと思えば、魔力がティアナに向かって流れていく。

時間が経つにつれて流れていく魔力の量が増えていくのをクロードは感じていた。暴走するというより、流れる量が多くなるだけで、クロードの体への負担は何もないと言っていい。だが、受け取っているティアナが心配になってくる。

「ティアナ」

名前を呼ぶと、集中していたのかじっと手を見つめていたティアナが顔を上げた。その表情はとても落ちついていて、焦りがどこにもなかった。

「大丈夫なのか?」

「そんな不安そうな顔しないの」

尋ねると彼女はわずかに笑みを浮かべた。どうやらクロードは心配そうな顔をしていたらしい。

「これはあなたの力よ。クロードが受け止めるべき力なのに、自信を持たなきゃ駄目よ」

「・・・わかった」

諭すように言われ、クロードは1つ頷いてから目を閉じて意識を右手に集中させた。

暗い視界の中、右手だけがほのかな暖かさに包まれる。

「想像して。自分の力が体を巡って大地に流れていくのを」

ティアナの声を聴きながら、自分の中にある魔力が地面に流れていくのを想像してみる。体の中から溢れてくる力を、触れている足から地面に流す。

「ゆっくり、焦らないで」

呼吸が早くならないように、できるだけゆっくり息を吸い、吐き出すのを繰り返した。

どれくらい時間が経ったかわからない。気が付けば、右手に感じていた暖かみが、体全体を覆い、力がゆっくりとクロードの中を巡りながら降りていき、地面に吸い込まれていく感覚がわかってきた。

「クロード」

名を呼ばれて目を開けると、ティアナが満足そうな表情をしてこちらを見ていた。なぜか両手を肩のあたりまで上げて降参のポーズをとっている。その姿が意味することに気づくのに少し時間がかかった。

ティアナの両手はさっきまでクロードの手を握りしめていた。だが、今は両手とも離れている。それなのに彼の中にある力は穏やかに体の中を巡り大地に流れている。

今クロード自身が力を流しているのだ。そのことに気づいた瞬間、体の奥から強く力が湧き上がってくるのを感じた。

「あっ」

何度も経験したことのある感覚に、目を見開いて焦ると、すかさずティアナがクロードの左手を掴んで何かを握らせた。その途端、体を巡っていた力がぱたりと静まった。

「今日はここまでにしましょう」

左手を見てみれば黒い魔封石が握られている。クロードの魔力を抑えるための石だ。

「今、1人で・・・」

目を開けてから起こったことに頭がついていかず、呆然としながら言葉を漏らすと、目の前にいるティアナが微笑んだ。

「魔封石の力は借りているけど、自分の力で魔力の抑制ができていたわ」

魔力診断の時はティアナ1人が魔力をコントロールしていたが、今はいつの間にかクロード1人で、地の魔封石の力を借りて魔力を安定させていた。そのことに気づいた瞬間、意識が別に向いたせいでバランスを崩した魔力が暴走しそうになったが、瞬時にティアナが魔力を抑える魔封石を使ってくれたことで暴走はしなかった。

驚きと混乱がクロードを包んでいる。両手を開けば右手に黄色い石。左手に黒い石を持っている。

「とりあえず魔力の流し方は上手くいったわ。これを繰り返して少しずつ慣らしていきましょう。もっと簡単にできるようになったら、魔封石も使わないで済むようになるはずよ」

初めて魔力が安定したことに驚いて返事ができないにも関わらず、ティアナはどんどん話を続けていく。

「この石が終われば、次の魔封石に切り替えられるわ。今度は、魔法を使えるような魔封石になるから、魔法の訓練もしましょう」

楽しそうに先の話をしていたが、まだ放心状態のクロードを見て、ティアナは笑った。

「これが魔力持ちの普通なのよ。これでみんなと同じ普通になれるわ」

今まで魔力を暴走させて周りに迷惑をかけることしかできなかった。それがクロードの普通だったが、ティアナのおかげで人並みの普通を手に入れることができそうだ。

「・・・ありがとう」

両手を握りしめて、絞り出すように言うと、ティアナは微笑みながら静かに頷くだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ