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飛べる?

(母がママ友から聞いたという話)



「変身」


 掛け声と、決めポーズとともに、青いタオルケットをマントのように体に巻く息子。

 両手を空に向けて、ぴょんぴょんと飛び跳ねている


「どうしたの?」と聞くと、「飛ぶの」と息子は答える。


「ふふ、飛べたらいいわね」


 幼稚園に入ったばかりの息子は青いタオルケットが大のお気に入りだ。片時も手放したくなくて、取り上げると泣き出す。

 今はタオルケットでヒーローに変身したつもりになっているようだ。

 飛ぶのをあきらめた息子は部屋をぐるぐる走りまわっていたが、突然電池が切れたようにタオルケットを巻いた姿のまま眠ってしまう。


 よく晴れた休日の午後。お昼ごはんの片付けも終わり、夫は庭でなにやら家庭菜園をいじっている。私はテレビを見ながらうとうとする。


 はっと気づくと、昼寝をしていた息子がいない。

 名前を呼んで、家の中を探してもみつからない。

 夫を呼ぼうと庭に出ると、家の前にざわざわと人の声がする。

 外に出てみると、近所の人たちに混じって夫が上を見上げ、叫んでいる。


「しゃがんでろ!動くなよ!」


 私も同じところに視線を向けると、青いタオルケットを風にたなびかせる息子がいた。平屋の屋根の上に。

 私の顔は真っ青だったろう。

「動かないで!」と叫ぶ。


 すぐに夫がはしごで屋根に上り、息子を屋根から無事におろした。

 息子を抱きしめて、無事を噛み締めたところで、夫が、私が抱いていたのと同じ疑問をぶつけた。


「どうやって登ったんだ」


「わかんない。起きたらいた。そんで屋根からなら飛べるって言ってた」


「だれが?」


「タオルが」

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