夜の営み
母が帰り、まったりした午後を過ごす。僕はスマホを片手に弥生さんに連絡を取るか悩んでいた。向こうには向こうの都合がある。何も出来なくスマホとにらめっこしていた。そのタイミングでスマホがなる。弥生さんからLINEが入った。嬉しくなり手に握り拳を作る。
『先生、今夜お暇ですか?』
『暇だよ』
デートのお誘いかな?平然を装い返信。ノータイムで返信している時点で平然には見えないかな?
『私、明日夜勤なんで今晩は一日中起きている予定です』
『それで』
『ラブホテル行って見ませんか?』
待ってました!行く。直ぐ行く。
『行く』
『即答?H』
昨日出来なかったじゃないか。
『弥生としたい』
『私は起きているのが目的ですから、朝まで寝かせませんよ』
体が持つかな?弥生さん偉い気合いの入り様だ。冷静に冷静にに。話題を少しずらそう。
『昨日は寝れたの?』
『昨日は寂しくソファーで寝ました』
『ごめん』
ソファーだったか。本当に申し訳ない。
『文が幸せそうだったから許します。腕枕。私にもしてくださいね』
『了解』
僕らはその後、ディナーの約束をした。ご飯を軽く食べてラブホだ。ラブホは弥生さん指定。コスプレH。何でも来てくれるらしい。食事については僕に任せられた。
夕刻になり僕は彼女との待ち合わせ場所へ向かう。ザ!夜の街。沢山の人がここから夜の街へ消えて行く。僕の花はすでに到着していた。
「ごめん。待った?」
「先生大好き」
いきなり抱きつかれる。イヤこんな人通りの多い場所で抱きつかれても。いきなり注目の的じゃん。チラチラ周りを見るがそうでもない。似たようなカップルもいた。
「ダメ?」
上目遣いで弥生さんが僕を見つめる。カワイすぎ。僕は要求に答えようとしたが出来なかった。弥生さんから先にキスをされてしまう。
「えへへ。今朝のお返しです」
僕は彼女にやり返した。周りなんかどうでも良い。バカップルで良いじゃないか。理性を取り払うとそんな結論になる。
事を終え彼女の顔から僕の顔を離す。
「行こうか」
「......はい」
腕を出すと彼女は今さら恥じらいながら腕を絡めて来る。
僕の選んだ食事処は居酒屋だった。お洒落なバーとかも考えたが僕に敷居が高く、行ったことがない所で恥をかくより場馴れした所にと思ってしまった。デートとしてはマイナスなんだろうか?
「ここですか?」
ヤバい。NGだった?
「あ、うん。僕、あまり店知らなくて」
「じゃ行きましょう」
弥生さんの表情は特に変わらず。僕らはのれんをくぐった。
軽く生ビールを煽り。三品程度つまんで店を出た。適度の酔いかただ。
「次は私の番ですね。こっちです」
僕は弥生さんに連れられホテル街を歩く。そう。ここからが本番だ。まずナース服だな。チャイナドレスとか。顔がにやけてしまう。
「弥生。待って!」
僕らの前を見慣れた人物が歩いていた。咄嗟に身を隠す。向こうは僕らに気がついていないようだ。
「えーと?花火の時にあった二人ですよね?」
「ああ」
僕の前にいたのは村山先生と伊藤だ。彼女らの様子を伺っていると伊藤が村山先生をホテルへ引っ張っていた。村山先生も抵抗する感じもなく、ホテルへ吸い込まれて行く。
「嘘だろ!」
ついつい呟いてしまう。
「先生と生徒でしたよね」
「見なかったことにして下さい」
これは不味い。下手すれば伊藤は退学。村山先生は首だ。そうそうに対策を打たなくては。明日の村山先生の相談ってこれか。僕はどうする?どう答える?
「先生。先生は生徒と先生の関係には反対ですか?」
弥生さんの質問に反対に決まっている!と、答えられたらどんなに良いのだろう。僕も村山先生と同じことをしている。惚れたら止められない。外部からの圧力で別れさせるのが一番。
......僕に出来るのか?今の今まで引きずっている男に。
「否定はしません。惚れたって良いと思います。ただ、二人の人生をダメにするのは間違ってると思います」
「お願いします。二人を幸せにして上げて下さい」
弥生さんの言葉は真剣そのももだった。好き同士なら別れるべきではない。ただ、立場が。僕の恩師はどのような気持ちだったのだろうか?
「僕に出来ることはやってみるよ」
それがどのような結果になるか。それは誰にもわからない。




