僕と重なる
村山先生と伊藤の事情。僕の中の重い空気を変えてくれたのは弥生さんだった。当初の目的通りラブホに向かう。
「先生、今は私のことだけ考えて下さい」
明け方まで頑張りました!
朝まで頑張る宣言していた彼女も今は僕の腕の中でカワイイ寝息を立て眠っている。
弥生さんよりブーイングを受けた件が一つあった。『なんでナース服?それコスプレじゃないです!』それでもお医者さんごっこを堪能した。『先生。その振り。リアルにあるので怖いです』あるんだ。
彼女が寝てしまった理由。次のコスプレで着物を着てもらい、帯を引っ張ってみた。『お殿様。アレ~』をやって見たかった。弥生さんにそのまま回ってもらった。結果、酒が残っていたらしく。彼女はその場に崩れ落ちた。焦ったが『先生らいじょうぶです』と声が聞こえたので様子をみた。
そんな弥生さんの髪をなで撫でながら、明日、正確には今日のことを考える。村山先生は何を語ってくれるだろうか?全て正直に話す?僕を信頼してなければそれはない。じゃあ何だ?愚痴を聞くだけ?
今思えば伊藤の家で見た女性物の靴。あれは村山先生の物だ。川田が伊藤の部屋で見た物は村山先生と伊藤の事情か?
「にょ!」
僕の息子がイタズラされている。寝ている子を見る。バッチリ目を開けていた。彼女と目が合う。
「先生、難しい顔してました。寝てしまった。私も悪いのですが」
そんなに難しい顔だったか。でも、今は、この!
「なんでもないよ。続けようか」
僕はマウントを取るべく体制を変える。
「はい。え?こんな格好は。もう」
弥生さんは僕に身を任せる。僕は彼女に溺れた。
朝日が眩しく、通勤に行き交う人々とすれ違う。僕らは寄り添い待ちを歩く。二人とも体力が残っていない状態だった。
朝のエネルギーチャージと称し牛丼チェーン店に入る。僕らはカウンターに座った。
「私が言える立場ではないことはわかっていますが、昨日の2人を静かに見守ってあげて下さい」
弥生さんは突如、村山先生達の話をして来る。二人を目撃してから僕の頭からも一度も離れなかった。彼女にも感じるものがあったのだろう。
「立場上、無理かな。一旦お付き合い禁止にはしてもらうよ」
「ダメです!自然消滅ならまだしも強制的に別れさせるなんて!」
大人しそうな弥生さんが立ち上がり反論してくる。彼女の顔は悲しそうだ。
あの時の僕も死ぬほど落ち込んだ。探しても手掛かりがなく、途方にくれた。時間が解決するなんて嘘だ。僕には深い傷が残った。
「ええ、ですから。無かったことにしてもらうつもりです」
僕の言葉を聞き弥生さんは席に座る。自分でも興奮しすぎだとわかったようだ。それでも彼女は反論する。
「何も違わないじゃないですか。私は先生にそんな事して欲しくないです」
弥生さんは僕に静かに訴える。彼女の瞳には涙。今にも泣き出しそうだ。店員も彼女の行動に驚いている。
「任せて下さい。僕も経験者です」
僕は弥生さんを引き寄せ軽く抱き締めた。
弥生さんと別れそのまま学校へ向かう。職員室は出禁のため図書室だ。ついでに課外組の顔を確認する。課外については今週より強制出はなく希望者のみとなっている。希望者ほぼ全員なんだが。
川田が居ることは確認出来た。川田はこないだ現場にいた。残って伊藤と話し合いもしている。何か事情を知ってるであろう。
僕の思い違いで川田は何も知らない場合もある。それは噂を広めることになりそうなので、それとなく聞いてみることにする。
次に補習組を覗く。再テストの真っ最中。伊藤は当然いた。必死にテスト用紙と向きあっている。テストならばと思い教室へ入る。監視の先生に驚かれたが、適当に誤魔化し伊藤の机に向かう。
「先生。見てわかんない?今、テスト中だよ」
何故、俺の所に来ると伊藤より反論。
「伊藤の進路についての相談だ。終わったら図書室へ来るように」
「まだやるの?」
「やる」
「へーい」
空返事が返って来た。これ以上は邪魔なので、そそくさと教室を出る。図書室へ向かうとすでに村山先生が待ち構えていた。
「おはようございます。村山先生早いですね」
「斉藤先生。おはようございます。先生と違ってお休みじゃないですから」
普通の先生は、有給でも取らない限り出勤日だ。怪我をして村山先生の相談に乗るのも運命に思えて来た。
「では、村山先生のお話とはなんでしょうか?」
「アッチの奥で話したいのですが」
「了解です。移動しますか」
僕と村山先生は人の目が届きにくい場所へ移動する。さあ。何の相談だ。
「斉藤先生。私、教師辞めようと思うんですけど」
「はっ?」
予想外の言葉に理解が出来なかった。




