留守番
帰したくなかった。出来ればこのまま。でも、それは許させれない。外では文ちゃんが弥生さんを待っている。
強引に引っ付けた体を静かに解放する。
「もう。次は私から行きますからね」
照れながらも弥生さんは微笑んでくれた。
「うん。待ってる」
手を振りながら弥生さんは帰っていった。
さあ、僕も掃除洗濯をしよ。洗濯機を回し部屋の掃除。そう言えば、弥生さんは何処で寝たんだろう?僕と文ちゃんが寝たベッド?シングルベッドだ。子供とはいえ、二人で寝ると隙間はない。するとソファーかな?確認するが痕跡はない。布団を何処かに敷いた?寝れたのだろうか?先に寝てしまって申し訳なく思う。
掃除洗濯を終え、昼食の準備に取り掛かろうとした時、家のチャイムがなる。確認すると僕の母だった。仕方がなく家に招く。
「何しに来た」
「怪我をして退院した郁也の様子を見に来たんだけど」
いちを怪我を心配して来てくれたらしい。母は退院してから一度も姿を見せてなかった。
「僕はピンピンしてますよ」
「そのようね。お昼は?」
「今から作る予定」
「私が作るわ」
「了解」
母の申し出に甘えリビングで寛ぐことにした。
「あら?食材無いわね?チャーハンでいいかしら?」
「任せる」
母は僕のインスタントシリーズを持ち出しチャーハンを作り始める。昨日のようなまともな自炊は久しぶりだった。
「はい。お待ちどうさま」
「サンキュー」
食卓に食事が並べなれる。
「怪我は問答無さそうね」
「さっき言った。問題ない」
「弥生さんとのお付き合いは順調?」
そっちの心配に来たな。
「順調だよ」
「本当?退院してからデートした?」
「したした」
「嘘っぽい。どこ行ったの?」
「えーと」
僕と弥生さんがデートした場所?図書館?花火。下のモール?僕の家。彼女の家。あ。
「貰ったチケットでご飯行ったよ」
「そのあとは?」
ホテルでHしました。言えるか!
「それだけだけど」
「なんて奥手なの。押し倒す位の勇気ないと、いつまでも立っても独身のままよ」
いや、やることはやってるな。でも今はへたれを演じよう。
「はいはい」
「入院中は甲斐甲斐しく看病して貰ったのに、退院したらほぼ接点なし。困ったわね」
「困ってないから」
「困りなさい!あんなに良い人、逃がしてはダメ。」
「は、はい」
「郁也にミッションを与えます!」
「ミッション?」
「弥生さんをウチに招待しなさい!」
「ウチって実家?」
「ここに決まってるでしょ!こんなにステータス使わないなんて勿体無い」
いや、さっきまでいました。
「ステータスってなんだよ」
「誉めてるのよ。こんな立派なマンション購入する経済力があります。大概の女性はイチコロよ」
「弥生さんはそんな人じゃない!」
僕の中でぷっつーんと来た。弥生さんは僕の経済力を見るような人ではない。弥生さんは......僕の何が好きなんだ?会ったときから好感度マックス。文ちゃんの意見はお父さんみたいで安心する。真央さんの意見はあり得ない。母の言う経済力?彼女は看護師だ。経済的には自立しているはず。
「あら、大抵の女性は経済力のない男は結婚の対象にならないわ。自分が子を妊娠して仕事を止めたとき、養ってもらえるか気になるから。悪いことじゃない。」
もう、めんどくさい。そもそも弥生さんは、もうこの部屋を訪れている。
「わかった。ここに招待な」
「よろしい」
ここで一つの疑問が湧いた。僕も今回のお見合いは乗り気ではなかった。僕はなぜ弥生さんにここまで惹かれる?今、僕は彼女といつでも一緒にいたい。何故だろう。Hしたいから?それもある。それだけでもない。僕は彼女に安らぎを感じる。彼女も同じなのだろうか?
母は食事が終わると帰る準備を始めた。僕の解答に満足したのだろう。
ただ、トイレより戻って来ると態度が一変した。
「郁也!ちょっとこれ説明しない」
目の前に洋服と下着の値札が並べられる。文ちゃんの奴だ。
「これが何か?」
「何かじゃないわ。これ児童用よ」
「あなた、まさか、弥生さんに相手にされてないからって児童売春とかしてないわよね?」
「するか!」
なんちゅう発想をする親だ。そこまで信頼ないのか?
「では、説明して頂戴」
難しい。少しだけ脚色して服を買った真実を話そう。
「わーた。話よ。それは弥生さんの妹、文ちゃんの服です」
「あら、弥生さん。妹さんいたの」
母は驚いている。
「はい。文ちゃんの誕生日プレゼントとして弥生さんは服を購入しました。その時に僕も一緒にいて手伝いました」
真央さんごめん。ここで真央さんの名前だすとややこしくなる。
「ここで着替えたのかしら?」
「ここで着替えて帰りました」
「弥生さんと文ちゃんはここに来たの?」
「来てます」
「郁也!頑張っていたのね。良かった。母さん安心したわ」
うぁ。表情が嫌なニヤケかたしてる。なんかムカつく。
「えっと。やることはしていの?」
「やることとは?」
「わざとね。男女の営み」
「まあ、それなりに」
そこ聞く?とっても大事なプライバシーだよね。素直に答えれるか!昨日はしてないけど。
「そっ。帰るわ。年内に弥生さんをウチ連れてらしゃい」
「ウチってここ?」
「馬鹿言わないの。ここにはもう来ているのでしょ。実家に挨拶に連れて来なさい」
「へえ」
「へえじゃない。はい」
「はい」
悪魔は満足して帰って行った。誤魔化すつもりが誤魔化し切れなかった。疲れた。恐るべし。おババ。




