(1-30)ウ○コ好き
◇ウ○コ好き
午後になってバトルの会場に行った。何故か会場の入り口で捩木《ねじき》さんが待っていた。
絶対待ち伏せだよね。これが多分ストーカーと言う者なのかもしれない。ちょっと怖いぞ。捩木さん別に案内しなくても適当に見るから良いよ。本当に。
捩木さんの説明では、VC社の大会で一番盛り上がるのは、このバトルらしい。なので前日の土曜日と今日の午前中も地方予選を勝ち上がって来た人たちの予選が行われていた。
八つあるパドルステージを使い昨日の予選で約五〇〇人を、一二八人に絞って、今日の午前の予選で決勝に進む一六人に、そしてシード一六人と合わせ、三二人でトーナメントの決勝を行う。決勝はバトルステージを四つ使って約一時間半かけて行うそうだ。CC社の方はバトルステージが四つなので、ここ迄大規模な予選は行われて居ない。
決勝に出場する参加Sキューブのエントリーリストを見ると完全にVC社とCC社のみ。ただ一人と言うか一体だけ、CC社の二世代前モデルの狂姫がエントリーされていた。昨年真弓ちゃんが貰った戦姫の前のモデルだ。女性モデルの最新は龍姫。VC社にも同じ読みのSキューブが有るがCC社の女性モデルの姫シリーズの方がネーミングセンスは良いと思う。購入時の衣装は、和服の姫スタイルだしセンスは良い。結構ヤンキー姉ちゃんだけどね。
他のCC社は、雷紅現行最新、夜叉丸一世代前モデル、羅刹二世代前モデルだ。確かに捩木さんが言うように、DQNっぽい。釘バット持たせも良い感じだ。
「狂姫も出場するんですね」
「ああ、あれは怖い、ウチの天敵だ、CC社の大会でウチのSキューブを全殺ししやがった、イケメンは女に弱いんだよ」
いやそれ関係ないよね。単にコントロールが上手いだけでしょ。
「あの狂姫のユーザーがウチのSキューブ使ってくれれば良いんだが……」
「それって女性モデルが無いから、使わないんじゃ無いですか?」
「僕もそう思うよ」
「な、な、なんですと」
いや単純に考えればそうじゃないの。まあ捩木さんは放っておこう。
観戦してると、どうも単純にコントローラを使って戦っている訳では無いように見える。テーブルに、ゲーセンの様なコントローラを置いているが、グローブも手に嵌めていて、グローブでも制御しているようだ。
他にも、多分だが、コントローラを動かした後で、待ちの様な感じのタイミングを取っている感じがする。多分、キーの組み合わせで技を出す様にしている感じだ、コントローラから手を離してグローブを握る感じで相手を掴んでいる様にも見えた。
かなり、高度な事を、人とSキューブで連携している。
見ていると、バトルをやっている人は、ニュータイプの様な感じがする。はっきり言ってHMDからの情報で、良くあんなに上手く制御出来るもんだ。決勝に進んでくる人達はかなりの化物集団のようだ。
夏の大会でバトルに参加するつもりだったが、簡単には勝たせて貰えないだろう。今日の観戦はとてもに参考になった。
決勝は、チャンピオンベルト(そんなん有ったんだ)を二つ持ったCC社の雷紅とVC社の龍気、の対戦だった。
「この前のCC社の大会で、ウチが持っていたCC社のバトルのチャンピオンベルトをアイツに奪われたんです。おまけにアイツは前回ウチの大会のチャンピオンでも有るんです。今回チャンピオンベルトを取り戻さないと、統一チャンピオンになっちゃうんです。それだけは避けたいんです」
うん正直、僕はどうでも良いよ。だけど、二人のバトルは本当に凄い、マジで相手の行動が読めてんじゃないか? 若しかしたら物凄い優秀な自動回避が入ってるのかもしれない。ただ龍気の操縦者は、少し勝負を避けている感じもする。
結果は判定まで縺れた。判定の結果、VC社の龍気が勝ちVC社のチャンピオンベルトを奪取した。だがCC社の参加者からは、大ブーイングだった。このバトルこそコンピューターの判定が有った方が良いと思う。中々凄い物を見せて貰った。
「樹くん、ウチの最新型のディアブロ使って見ないかい?」
「最新型って猟牙じゃないんですか、もしかしてその次ですか?」
「猟牙の事を、俺はディアブロって呼ぶ事に決めたから」
をい! 良いのかそんなんで。
「ディアブロってさ、スペイン語で悪魔なんだよ、なんか樹くんにピッタリだと思わないか? なんなら、ディアブロ・アルボールって名前でも良いよ」
なんだろう……なんか聞いちゃいけない感じだ。なんかバレてるんだろうか……。
「えっと、今は使うつもり有りません。女性モデルが出たら考えます。だけどアマゾネスみたいだと使う気がおきないんで」
「そっか、残念だ、開発の方に、ヴァルキリーみたいなタイプを作るように提案しておくよ」
「そう言うのが出来れば、さっきの狂姫のユーザーも使ってくれると思いますよ」
「おっそうだな。ぜひとも作って貰おう」
うーん。ディアブロ・アルボールってなんとなく直感で〝悪魔の樹〟じゃないかな……VC社とは全然面識無かったのに何でた?
大会も終わったので会場を後にして、女王の箱庭のファースト・フードに行った。僕の家は黄金町なので、この港未来の直ぐ側だから多少遅くなっても平気だ。二〇分も有れば余裕で帰れるし、今日は重い荷物も持っていない。昼食時に話していた事の続きを苦木さんに聞く事にした。
「午前中の続きなんですが、小説を読んでいてちょっと疑問が有るので教えて貰えますか?」
「なあに? 私教えてあげるわ、沢山読んでるから結構詳しいわよ」
「えっと、異世界はウ○コしたらどうしてるんでしょうか?」
「そ、そ、そんなの知らないわよ、こんな所でする会話じゃ無いでしょ!」
なんで行き成り、そんな変な事聞くのよ? 私も一応女の子なんだけど……
「面白いね樹くんは、どうしてそんな事思ったんだい?」
「だって物凄く重要ですよね、食事のメニューも重要ですけど、異世界に行ったり転生した人達って森の中とかダンジョンとかでウ○コしたらどうするんでしょう? ティッシュ持ってれば良いですけど、無い場合はどうしてるのかな?」
「成る程、そう言う疑問か。たしかティッシュを作ったって書いてある小説も有ったね、ティッシュの代わりだけど、小説では石や葉っぱ、藁でお尻を拭いていたって言うのを読んだ事があるよ。異世界に転生した時から常にトイレを設置意識している小説も有ったね」
やっぱ有るんだ、未だそう言う小説を見つけてないけど、やっぱり僕みたいに疑問に思った人が居るんだよね多分だけど。
「その、小説教えて下さい読んでみます」
「ああ、判った。後でメールしておくよ」
これで、また色々判ってくるな。
「樹くん、午前中から、異世界小説の話しばかりしてるけど、本当に行く気なの?」
「まあ行けたら良いですけど、多分無理だろうなとは思ってます。以前梓さんが言ってたじゃないですか。テレビの事、その後に苦木さんが言ってた諺が有るじゃないですか〝非が無いのに煙たがられる〟でしたっけ?」
「それはイジメに関する諺よ。使い方間違えてるわよ。私も学校で異世界のラノベとかの話しすると、なんか煙たがられるのよね、非が無いのに……」
それは、ラノベだけじゃ無くて、乙女として恥ずかしい変な事言ってるからでしょ……梓ちゃん、高一なんだからさ勉強しようよ、不思議っ子はそろそろ卒業しようよ。
「あのね二人とも、そんな諺ないからね〝火の無い所に煙は立たぬ〟だよ」
「そう! それです。それ聞いたら、もしかしたら異世界が有るかも知れないって思って来て。だから色々と小説読んで勉強してるんです」
小説で異世界の勉強ってのもどうなのかな、まあ判る事も有るとは思うけど。他の事で考えた方が有効だと思うんだけどな。まあそのうちかな。先ずは疑問に思えば良いんだしな。
「じゃあさっきの続きで樹くんの好きなウ○コの話しをしようか……」
「好きな訳じゃ有りませんよ!」
「なんで、女の子がいる前でそんな話題するのよ!」
梓さんはお冠のようだ。でも知りたいんだから仕方ないよね。ウ○コが好きなわけじゃないですよ。異世界のウ○コ事情についての研究なんです。
「もし異世界に樹くんが行ったら重要な事になるよ、梓ちゃんも樹くんに異世界に呼んで貰うんでしょ? だったら一応聞いておいた方が良いと思うよ」
「……判ったわよ」
別に異世界に行く事なんてあり得ないと思うから聞かなくても平気だけどね……だけど本当に樹くんなら行けそうな気もするな。
「少し別な方向からアプローチするけど、例えば一〇万人の都市が有るとする。異世界では大きな街だと思う。王都並の都市になると思う」
「はい」
「異世界物の小説では、賑わっている街で大通りに沢山屋台が出て、肉を焼いて提供しているよね、串焼きに限らないけど」
「そうですね。魔物の肉みたいですよね……なんか美味そうなんですよそれが、小説なのに表現が上手いと言うか」
「うん、そうだよね食べて見たいね。では、一〇万人の都市が一日に消費する肉ってどの位になるか判るかい?」
「……うーん、僕はどの位食べてるかな……食べる時は結構食べるけど……全く判りませんね平均で一〇〇グラム位ですか?」
「結構いい線というか殆ど当たりだね。今の日本を基準にするけど、平均すると一人年間大体三〇キロの肉。それとやっぱり三〇キロ位の魚介類を食べているんだ。合わせると六〇キロ位食べるんだよね。だから一人一日当たり一六〇グラム位になる一〇万人だと一六トンだね。肉だけ見れば八〇グラム位だから樹くんはかなり近いよ」
「直感だったけど、結構食べてるんですね僕達って」
「そうだね、平均だから子供からお年寄りまでだよ。だから成人だともっと食べてるだろうね、だから樹くんの年齢で一〇〇グラムって言うのは正解だろう。それで、魚介類を含めた平均一六〇グラムを一〇万人の都市が一日で消費する量に換算すると、大体牛一六頭分位になるよ。年間で見れば約六,〇〇〇頭の牛が必要になる計算だね。実際は色んな肉を食べるだろうから六,〇〇〇頭必要と言う訳では無い。でも流通が今より劣っている異世界だと、近隣に一,〇〇〇頭以上飼育している牧場がいくつか必要になるだろうね」
「そんなに必要なんですか凄いなぁ」
「つまり、肉以外の物も含めても凄い物流の街道が必要になるんだよ。毎日、毎日相当な量を流通させなければ都市の食事事情は破綻する。異世界は殆ど馬車が使われている様だから、相当街道は混雑しているだろうし、物流以外の馬車も相当数走っているだろうね。馬は普通に街道を移動している時にウ○コするから、もう街道はウ○コだらけだよ。馬車を使わずに徒歩で移動する場合は、そのウ○コを踏まない様にしないといけないね。当然街中もウ○コがいっぱいだよ。街中は行政が処理してくれているかもしれないけどね。多分住人が行政から依頼されて家の前のウ○コを処分してると思うよ」
「うわぁ街道はウ○コだらけなのかぁ……踏まない様にしないと……」
「穀物なんかは、比較的保存が効くけど、野菜はそうでも無いから近隣の村とは野菜の流通も多いだろうね」
「そうか、都市だけじゃ無いですもんね人が住んで居るのは」
「牧場が有る異世界の小説は未だ僕は読んだ事は無いんだ。無い事は無いだろうと思うけど少ないと思う。ヤギを土地改良に使ってるのは有ったけどね。だとすると、それに相当する食肉を魔物から確保する必要があるんだ、魔物が住んでる森だったりダンジョンからね。人間は頑張れば一〇〇キロ位なら持ち上げる事が出来ると思う。だけど魔物を倒して運ぶとなると、運べる量は限られてくる。良いとこ五〇キロ位じゃないかな。自分の装備も有るんだしね。距離だって問題になって来る。腐らない様に大量の塩を持って行く訳では無いだろうから、都市に運ぶのに三日も掛けていたら腐ってくるから距離も近く無いといけない、魔法で腐らなくしている事もあるだろうけど全ての冒険者が冷凍保存の魔法が使える訳では無いだろう。一六トンを五〇キロで割ると、毎日三二〇人が五〇キロの肉を抱えて帰って来るはずだね。まあ都市の中で鶏とか居るだろうからもう少し少ないとは思うけど」
「なんか聞いてると凄いですね。小説読んでるだけじゃ判らない情報です」
「よく考えると、都市の住人の胃袋を満足させる位、大量の魔物を近くで狩っている事になる訳だ。それもかなりの近隣でね。屋台でも提供出来るんだから相当安い値段だろうし量も取れるんだと思うよ。完全に都市の周辺は魔物牧場状態だよね、相当な冒険者が必要になるし街の警備も重要だ。街だって魔物に襲われる事を想定していないといけない、まあ城塞都市になっているのはそう言う事なんだろうね、対人の戦争も有る様だから。戦争で、物流が停滞すると、厳しいだろう。食料事情もだけど、対魔物と対人の二正面作戦を攻守とも行わないといけない」
「でもそんな危険な所なんでしょうか異世界って」
「そうだね、まあ極端な例をあげたけど、実際はちゃんと牧場が有るんじゃないかな小説には出て来ないだけでね、魔物避けがきちっとしてるアイテムとか魔法が有ってね、じゃないと近隣の村なんて存在出来ないから」
「そうですよね、魔物に襲われちゃいますね」
「でもそう言う異世界も有るかもしれないと思っておいた方がいいよ。あとダンジョンとか森でウ○コする場合だけと、やっぱり魔物とか出てくる可能性が有る訳だ。これは推測だけど魔除け機能付きの簡易更衣室みたいな物を立てるんじゃないかなとは思う」
「あぁ、なるほど納得できました、それでプライバシーを確保して安心してウ○コ出来る様にするんだ」
「だけど、魔除け機能付きの簡易更衣室を持って無い冒険者達は、ウ○コする時はパーティーメンバーに側で見張って貰うんだろうね」
「やっぱ、そうですよね。冒険者になってしばらくはそうなるんだろうな。かなり最初から購入しないといけないアイテムみたいですね」
かなり、苦木さんの話で勉強になった。もう少し小説にはウ○コ事情を詳しく書いていて欲しいな、こう言う情報が無いと異世界に行った時いきなり苦労しそうだもんね。
「さて、ダンジョンでは更に気を付けないといけない事が有る」
どんな事なんだ。さっきの魔除け機能付きの簡易更衣室があれば良いんじゃないかな?
「ダンジョンは、死体が残るダンジョンと、残らないダンジョンが有る。死体が残らないダンジョンはウ○コしても、ダンジョンが吸収するか、スライムみたいなモンスターが食べてくれるから良いけど、死体が残るダンジョンは、ウ○コも残ってる可能性が大だ。ダンジョンを歩く時、罠に注意しながらウ○コにも注意しないといけない。おまけにダンジョン自体がウ○コ臭い可能性も有る。ウ○コばかりに注意が行ってるとモンスターに襲われる事になるから、物凄く慎重にしないといけないよ」
うわ~マジかあ。ダンジョンの事、舐めてたよ。凄い新情報だよそれは。
「次に都市の下水処理事情だけど、さっきの死体が残らないダンジョンを有効活用している可能性が有るよ。都市の下水道をダンジョンに繋げて流せば、ダンジョンがウ○コを処理してくれるからね。ダンジョンはウ○コを吸収してモンスターを作って、冒険者はそのモンスターを狩り、ドロップ品の肉や宝石、魔石等を得られてお互いウィンウィンな関係が出来る。かなり有効なリサイクルシステムが出来るね」
たしかに、それは良いかもしれない。下水処理って大変そうだもんね。
「死体が残るダンジョンだとしても、ダンジョンに発生しているモンスターがアンデットや余り冒険者にとって実入りが良くないダンジョンなら、ダンジョン自体に冒険者が行かなくなるし、モンスターが溢れる問題も有るから、ウ○コを注入して封鎖するのも手だと思うよ。流石にモンスターも、ウ○コで完全封印されたら、ウ○コの中を移動するのも大変だろうしね。ウ○コは下水を繋げても良いけど、離れた都市からは、冒険者に依頼して、ウ○コを運んで貰えば良いと思うし」
苦木さん、ものすげー発想するな。超尊敬しますよ。今日は此処まで聞いた所で解散になった。帰ってからは、苦木さんに教えて頂いた事を頭に置いてハイペースで小説を読んで行く。少し、色んな事が見えてくる様になった。これはかなりリアルだなと思うのと、設定が甘いと思うもの。でも設定が甘くても面白いのは沢山あった。やっぱり底辺から成り上がって行くストーリーは面白い。
よろしくお願いします。




