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悪魔の樹(あくまのき)  作者: 一喜一楽
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(1-29)勇者と英雄

◇勇者と英雄


 VC社の大会は、地元横浜の東京ベイ横浜コンベンションプラザ(横プラ)で行われる。なんてったって自宅から距離が近いので、のんびりとしていられる。未だ夏休みなのでゆっくりとしたい所だけど、朝走り込みをするので、今度は胡桃に起こしてくれる様に頼んでみた。インストールして有るのは基本同じなんだけどな。朝六時に、胡桃の錫杖で叩かれて目を覚ました。非常に痛かった。胡桃! 頭を叩くのは止めなさい! 目を開けた時には、スイカ割りをする様な体勢になっていて思わず死を感じた。胡桃に代えたけどこっちも危険です。黄色ネズミを貰っているので、そろそろ切り替えようと思う電撃は出ない筈、出ないよな多分。


 会場へは自転車で向かい一〇前位に着いた。今日は真弓はキャンセルしている友達と海に行くとか言っていたので居ない。今日の予定は、午前中はVC社のワンメイクでやってるレースを午後はバトルを見る予定だ。会場で待ち合わせしている苦木さん梓さんと合流した。


 Sキューブの大会なので他のメーカーや関連ショップもブースを確保して出店しているが、VC社は自動車メーカーなので、車関係の企業も参加している。小規模なモーターショーみたいであるので、大人も多い。子供と奥さんをSキューブの所へ行かせて、お父さんは車を見ているのかもしれない。


 早速、苦木さんが、知り合いの捩木(ねじき)さんと言うかなり肉体派な感じのVC社の営業さんを紹介してくれて、捩木さんに案内と説明をしてもらった。


 午前中は、まずワンメイクの自動車制御のタイムアタックのオフロードレース。三年前迄は、サーキットでのレースだったらしいけど、今はオフロードラリーのタイムアタックになっているそうだ。


 会場は自動車関連が出店しているホールD、Sキューブの大会だけど、横の方では人間が乗るサイズのシミュレータが三二台も置いて有り、人がタイムアタックを行っていた。超高級なゲーセンみたいだなぁと、そんな疑問に思っていると。


「やっぱり、男子には、こう言うのは自分で動かすのが人気有るんですよね。Sキューブの優勝者も決めるんですけど、エキシビションマッチで、人間の優勝者とSキューブの優勝者で対戦するんですよ。昨年迄は人間の圧勝ですね、今年も今の所は人間の方が大分優勢に見えます。ですがその差は年々縮まっています」


 捩木さんが説明してくれた。


 シミュレータは、小学生以下は無料。ただし身長制限あり、中学生三〇〇円、高校生五〇〇円、高校生を除く大人(成人)一,〇〇〇円だそうだ。何度でもチャレンジして良いらしいがかなり混雑しているのでそんなに沢山は出来ないようだ。


 横にある、Gが掛からないSキューブ用のシミュレータを見る。Sキューブがハンドルを握るって事は無い。子供サイズの高級シミュレータを作るのは流石にお金掛けすぎだろうから。Sキューブの耳の後ろからケーブルを繋いで制御しているようだ。フロントガラスとサイドに相当する画面にはリアルな風景が物凄いスピードで流れていってる。画面の映像の揺れから、相当なギャップや、タイヤが滑っていると言うのが判る。


「以前は、サーキットコースでやっていたんだ。かなり時間は掛かったけど、Sキューブの制御が勝つ様になったんだ。それで、コースがオフロードになったんだ。だけどオフロードは路面の状態がゲーム毎に変わるし、ダートも濡れた路面も出てくるんだ。一応三ラップ練習してからタイムアタックにんるけど、未だSキューブは人間に勝てないね。サーキットは路面のミューがほぼ一定だったからね。ウェットとドライともSキューブが勝つ様になったんで、今は悪路でのコントロールに変わってる。またSキューブが勝つ様になればまた別なレースに変える予定だよ。まあ次は夜間や雨天、雪上のコース、それでもSキューブが勝つようになれば、いきなり雨になるとか色んなコンディションのランダムになるだろうけどSキューブが勝てる様になるのは先だろうね」


 苦木さんが詳しく説明してくれた。シミュレータに入っている人を見ると。シミュレーターがグリングリン動いている。


「これ実際に開発で使ってる本物だから、かなりリアルな加速度と振動を体験出来ますよ。今の自動車は、自動運転が基本で、マニュアル運転は緊急時を除き基本的に禁止されていますから、こういったシミュレータは大人に人気なんです。ゲーセンもかなりリアルですが、これは本物の車種と同じ内装の超リアル版ですからね。本当は販売店に設置したい所なんですが、シミュレータ目的で来店されても困るので実施されてないんです」


 やって見たいとは思うけど、車の運転なんて出来ないからな……大人になったら考えてみよう。と言っても自分で運転するなんて面倒だよね。


「今の自動運転は、此処までスピードを出す事は無いんだ。ちゃんと法定速度を守るし、天候が変われば更にマージンをとって減速するしね。だけど、自動車業界は、自動車の性能も競っているけど、まあ今は主に燃費になるけど、自動運転の性能も競っているんだよ。


 自動運転のラリーの大会が有って、性能を競っていてね、まあ最近までは走り切ることはなんとか出来るけど、人間には未だ全く歯が立たないね。人間だと車が滑り始めた時に、さらにアクセルを踏んでカウンターを当てながらコントロールする場合もあれば、アクセルを緩めてグリップ走行にする場合も有って、アンドロイドだとどちらが有効なのか未だに判断出来ないんだ。当然目標は事故らない事なんだけどね。


 まあ自動車業界だけじゃ無いけど〝最高級のアナログはデジタルを凌駕する。普通のアナログなら安いデジタルでも不満は出ない〟こんな諺が有るよ。凄い人間はデジタル処理なアンドロイドを遥かに凌駕するけど、普通の一般人の運転なら、今のアンドロイドの自動運転で満足出来るって感じかな。一生とは言わないけど、人間はアンドロイドにとって当分は超えられない壁だね」


「苦木さん、何でそんなに詳しいんですか?」


「まあ、関係者だからね、大学生だけど、VC社でアルバイトもしてるしね」


「苦木さん嘘は言ってないけど本当の事も言ってないでしょ、樹くん、苦木さんの家はVC社の偉い家よ創業経営者では無いけどね」


 マジっすか! それってセフレって言う人種じゃないですか。すげー。本物のセフレの知り合いだ。ん、ん、ん? ちょっと違ったかな、セルフ? スフレ? サブレ? なんだっけ。今度調べておこう。


 一旦会場から離れて、VC社のブースに行ってSキューブを見せて貰った。ケースの中のSキューブは全部パンイチで筋肉を見せびらかしているような展示のしかただ。二世代前の火雄斗(びゅうと)、一世代前の雄牙(ゆうが)、現行世代の龍気(りゅうき)、次期世代新製品の猟牙(りょうが)が置いてある。猟牙以外はどれも、バトル優勝モデルとして展示してあった。


 正直、ネーミングセンスは微妙な所、個人的にはCC社よりも悪いんじゃないかなぁ。イケメン細マッチョなのは全モデル一緒。


「樹くん、あんまり興味沸かないでしょ、センス無いよね」


「……えっと、まあ」


 営業さんの前ではっきり言うのはちょっと躊躇ってしまう。


「何言っちゃてるんですか、CC社の入れ墨入れた感じのDQNをぶっ倒すのは、イケメン細マッチョって決まってるんですよ! どう見ても、あおり運転しそうで、違法薬物やってそうな雰囲気有るでしょCC社のSキューブは、それに比べてウチのSキューブの爽やかさは、女性にも人気なんです。やっぱり車と同じでスタイリッシュでパワーがなければダメなんですよ。当然男もパワーです」


 日焼けした顔に白い歯でニコッとして、なんか暑苦しい営業さんだ。Sキューブも爽やかよりは暑苦しい。


「捩木さん、愛社精神が有るのは良いんだけど、他社を貶すのはどうかと……」


「向こうだって言ってますよ、男はワイルドさが必要だ、ナンパ野郎には負けないって、DQNとワイルドを履き違えるんですよ、あの電気野郎どもは。男は黙ってメカニカル、腕時計もメカニカル最高! なのに彼奴等(あいつら)燃料電池だ電気モーターだコンピューターだとぬかしやがって。運転できるアンドロイドが居るんだから車は、電子制御無しキャブ車で……」


 何言ってるか判んないよ〝きゃぶしゃ〟とは何だ?


「えっともう良いです。あのっSキューブのネーミングも見直した方が良いと……ちょっとセンスが……」


「なんですと? どんな名前が良いと?」


「VC社は車屋さんなんだから、昔の格好良い車の名前とか良いんじゃ無いですかね。例えばディアブロ、カイエン、アヴェンタドール、スカリエッティ、ベルリネッタとか沢山あるじゃないですか」


「おお、それは格好良いですね。今度会議で提案して見ましょう」


「それと、出来れば女性タイプが有った方が良いと……名前もミラ、アクア、エチュード、セレナとか女性っぽい名前の車も有ると思うんですけど……」


「樹くんもそう思うよね、やっぱ女性タイプは必要だよね。ウチの開発って頭良い筈なのに脳筋バカみたいなのばっかりだから。一番の理由は、女性モデルを作ろうと思っても、全部筋肉に回して女性っぽくならないんだよね。そのうちまともな女性モデルも出来ると思うからさ」


「はい。まあそれまで待ちますよ、使うか判りませんが」


 にしても、暑苦しいけど、面白い営業さんだ。あんな営業さんが、あの勢いで説得してきたら〝うん〟って言いそうになるのかも知れない。それにしてもVC社はCC社と仲が悪いんだろうか?


 午前中はここ迄にして、昼食を摂る事に会場から外に出て、女王の広場に有るお店に並んで昼食を摂った。新宿サボテンダーの三元豚ロースかつ定食美味しいよね。やっぱりご飯とキャベツのお代わり出来るってのは素晴らしい。二回もご飯のお代わりしてしまった。満腹です。少し高いけど庶民の贅沢って感じだ。


 イベントで混雑してるので、食事が終わったら直ぐに出て、横プラ内の休憩テーブルの所で飲み物を買って話し込んだ。


「異世界の小説読み始めたんですよ、面白いですね、もうハマっちゃって、かなりハイペースで読んでますよ」


「そう、それは良かったわ」


「樹くんは、どんなのを読んだんだい?」


「定番? 王道なんですかね、勇者召喚されてそのまま魔王を倒すのも良かったです。その後でタイトル見て何か面白そうなのをピックアップして読みました。転生物も面白かったです。それとVR世界に入り込むのですかね大体こんなのを先ず読んで見ました」


「そうよね、やっぱり私もそれ系が好きだわ、後は悪役令嬢系かな」


 そうか、今度はそっちも読んでみよう。


「異世界って面白そうですよね、行ってみたいなぁ……」


「樹くんは、異世界に行って勇者か英雄にでもなるのかい?」


「いえ、そう言うつもりは無いですよ」


「そうか、樹くんなら英雄とかになりそうだけど。まあ勇者も英雄どっちもお勧めはしないけどね。勇者も英雄も、大体のケースで嫌われる事になるからね」


 えっ? そうなのなんでだろう。確かに小説では、ダメダメ勇者が沢山いるけど。英雄って皆に尊敬されるんじゃ……。


「苦木さんなんでなの、ダメ勇者は判るわ。だってバカだから。でも英雄はなんで?」


 僕が疑問に思った事を梓さんが聞いてくれた。


「まず勇者だけど。まあ残念勇者の事は横に置いておいて。基本的に勇者は自称出来る。力強くて勇ましければ、性格が破綻していても勇者にはなれるだろう。それと実は弱くても勇者にはなれる。この場合は大体召喚されて来た者は、全く力がなくても勇者と呼ばれてしまう。後は生まれながらに勇者のスキルや称号が有るとかだね、なので性格人格は全くどうでも良い」


 そっか、だから自分の利益ばっかりしか考えてないDQNな勇者がいるんだ。なるほどThe異世界。


「次に英雄だけど、基本的に自称は出来ない。そもそも僕は英雄だ! って言っても信用されない筈だね。先ず、どんな英雄か説明も出来ないだろうけど、たぶん可愛そうな子を見るような目で見守られてしまうだろうね。英雄は自称では無く他称。皆が認めないといけないって事かな。それと英雄と呼ばれた人達は多分なりたくて英雄になったんじゃ無いと思うな、英雄と呼ばれる様な事を成し遂げてしまって呼ばれる様になったんだと思うよ。まあ異世界には英雄スキルや称号も有るだろうけど、持っていてもいきなり自慢出来るものでは無いと思う。そのスキルや称号に見合う事を成し遂げて初めて認められるんだろう。


「それで、苦木さんが樹くんに、勇者や英雄を勧めない理由はなんなの?」


「勇者は、軍を指揮する事も無い訳では無いだろうけど、基本的には単独またはパーティーで魔王を撃つ。だけど、魔王を倒した後は、どうなる。残念勇者なら邪魔で仕方ないと思うよ。俺が魔王を倒したんだから昼飯おごれとか、宿代無料にしろとか言ってたらとたんに民衆から嫌われる。まともな勇者でも、政治に介入して来たら国王とかは、うるせー! ってなるだろうし、まともな勇者は民衆に好かれるし、悪政している領主の街とかに行くと水戸黄門のマネしちゃうとかも有るわけだ。国のトップ的には魔王と相打ちして貰った方が嬉しいし、魔王を倒したらとっとと退場して貰いたい位だと思うよ。まあ極端な例をあげたけどね」


「でもでも、悪い領主を倒すのは、良い事じゃないの、私そう思うんだけど」


「まあ、悪くは無いよ。だけど悪い領主を倒してその地域は誰が纏めるんだ? 長七郎さんみたいに沢山切り捨てていたら、纏める人が居なくなって、その国はどんどん荒れて戦国時代みたいになって行くよ。平和になった筈が、勇者の行動で人同士が争う世の中になって民衆からも嫌われて行くよトラブルメーカーとしてね、正義感の塊みたいな勇者はそんなふうに成りそうだね。結構視野が狭そうだから」


 むう……勇者とは奥が深い職業みたいだ。たぶん嫌われないような道も有るんだろうけど、僕には思いつきそうも無いな。


「次に英雄だけど、こっちも殆ど一緒。英雄は英雄と呼ばれる様になったら嫌われ始める。英雄と呼ばれるきっかけは、大体は圧倒的に不利な時に多数の民衆を守る、または救う事から始まる。これは勇者も同じだけど先ず敵に嫌われる。敵がモンスターの場合無いかもしれないけど、魔王国軍ならば間違いなく嫌われる。勇者の様に武力に優れた英雄もいるだろうけど、英雄になる人が多いのは知力の方だろう。そうすると自分の身を自分自身で守る事が難しいから勇者よりも暗殺の危険も増えてくる。次に勇者以上に味方からも嫌われる。同じ事を勇者や領主様がやっても、流石は勇者様、領主様ってなるだけだから。なので英雄に成る前の人は大体は平民の筈だ。もしくは身分が高くない貴族だろう。英雄と民衆に呼ばれる様になると、国としては無視する事が出来なくなって来る。将軍とか伯爵とかの地位を与える事になるだろう。この時代の例を上げれば、凄い発明をした会社の新人をいきなり取締役に任命するって感じかな。まあそうなったら古い部課長幹部には嫌われるよ。絶対言う事聞かないだろうし、反論もして来るだろうね。同期の同僚達にも妬まれるだろう。そんな感じで英雄になると大変なんだと思うよ」


 うーん、そうなのかも知れない。あの有名なアニメ銀河声優伝説の自由惑星同盟の英雄も色々と偉い人に嫌がらせさせられてたもんな。


「そうそう、勇者と英雄って、英語だと両方共〝HERO〟なんだよね」


 あれっ、そう言えばそうだ、どうやって使い分けるんだ?


「まあ単語だけ見れば、勇者なのか英雄なのか判らないと思うけど、〝悪の組織を壊滅したヒーロー〟ってなれば勇者だと思うし、〝物凄い策略で敵軍を殲滅したヒーロー〟なら英雄になるんだと思うよ。タイトルは単語〝HERO〟でも、ちゃんとストーリーみたいなのが必ず有るからそれで何方(どちら)かが判るんだと思うよ」


 なるほど。苦木さんって凄いなあ。本当異世界先生だ。もう異世界研究者とかでも良いんじゃないの。


「僕がイメージすると言うか勝手に映像を想像しちゃうんだけど、フレデリック・フランソワ・ショパンの〝Heroic〟はタイトルも英雄だけど、大軍を指揮している英雄のイメージが有るね。Bon○ie Ty○erの〝I Need a Hero〟やMar○ah Ca○eyの〝Hero〟は勇者の方かな」


 勇者の方は曲が判んないや、今度聞いてみる事にしよう。


「タイトルは違いますけど、アントニーン・レオポルト・ドヴォルザークの交響曲第九番 第四楽章〝From the New World〟は大軍を指揮しているイメージが有ります。まあスペース・オペラって感じですが」


 樹くんはクラシックも聞くのか? なんかイメージ無かったんだけど。もしかして、銀河声優伝説を見たのか? たしかドヴォルザークの交響曲第九番 第四楽章が使われていたけど。


「確かに、そのイメージは有るね」


「ですよね、主砲斉射! とか前進とか、途中で戦線が拮抗しはじめたりなんかそんな感じで」


「樹くん、クラシック聴くの?」


「んー。聴くという程、聴かないですけど、ピアノとヴァイオリン習ってるんで」


「もしかして、セレブ?」


 あっ、そうだ、それそれ。セフレじゃ無くってセレブだ。有難う梓さん。


「違いますよ、普通の民間人です。両親が共働きで、学校終わって変な所へ遊び行かない様にって、通い始めたんですよ小学校三年生の時に、真弓ちゃんと一緒に。僕はピアノはまあ良いんですけど、ヴァイオリンはさっぱり上達しないんですよね」


「私もヴァイオリン習ってるから教えてあげようか?」


「いえ、小学校卒業したら辞めるつもりなんで、ピアノの先生もヴァイオリンの時間をピアノに回せばもっと上達するって言ってましたし、それにヴァイオリンの安いの持ってるんですけど、家では近所迷惑だから鳴らせないし、なので電子ヴァイオリンで練習するんですけど全然下手なんですよね。まあ上達するとそれはそれで嬉しいんですけど、ヴァイオリンって、むっちゃ高いじゃないですか、一万円の次は十万円、三十万円、五十万円、百万円、三百万円ってなって百年物なんて一千万円とか。そこまでのは買う気も無いですし買えないし音楽学校に行く気も無いんで、丁度小学校も卒業なんで良いかなって。まあ(たま)には弾くと思いますけどね」


「そうなんだ、残念ね」


「話しが飛んだけど、樹くんは頭が良いから英雄に成りそうだ。だから異世界に行ったら気を付けたほうが良いよ」


 そうしよう。って言っても異世界の行き方知らないし、行って見たいけど。


「勇者も英雄にもなりませんよ。普通の冒険者になって旅行してみたいんです」


「そっか。まあその方が平和かもね」


「ダメよ駄目、だめ! そんな冒険者なんてチンケな事しちゃ駄目!」


 梓ちゃんにとっては、冒険者はチンケなのか? 世界中の異世界冒険者に謝れ! と言いたいが言っても無駄だろうな…。代わりに僕が心の中で誤ります。異世界の冒険者の皆さんゴメンナサイ。


「えっと、梓さん、僕は異世界で何すれば良いんですか?」


「そんなの、世界征服に決まってるわ、世界中が樹くんにひれ伏すのよ。そしたら私も威張れるじゃない」


 それって、所謂(いわゆる)、皇帝陛下って奴だよね。自由が無くて面倒くさそう。


「えっと、面倒だから嫌です」


「怠け者はいけないわよ、ちゃんと真面目に世界征服しなければ」


 えっと不真面目に、遊び回りたいんだけど……。


「それより、梓さんも僕と一緒に異世界に行くんですか? どうやって?」


「そんなの、異世界に行った樹くんが私を召喚するのを待つに決まってるじゃないの」


「……他力本願なんですね」


「樹くん、一応今はその〝他力本願〟でも良いけど、同義語だと〝おんぶに抱っこ〟の方が良いかな」


「苦木さんって、何でも知ってますよね尊敬します」


「そんな事ないよ、年長だから知ってるだけだよ」


「で、梓さんは〝昆布に辣韮〟なんですね」


 樹くんは、ワザと間違えてるのかな?


「悪い?」


「いえ、考えておきます」


 僕が考えて召喚出来るとは思えないけど。出来るんだったら皆やってるだろうし。


「まあ、本当に行ったら僕も召喚して欲しいかな、観光してみたいしね、まだ地球でも行ってみたい所が沢山有るけど、ウユニ塩湖とか自然が作った不思議な所とかね。異世界だともっと不思議な所が有りそうだし見たいと思ってるよ」


「でも召喚ってどうすれば良いんでしょうね?」


「それは僕も判らないなぁ……小説を読んでると異世界は時間軸も空間も異なるって感じだから時空魔法が使える必要があるんじゃないかな」


「なるほど時空魔法か、時間の対語が空間ですよね」


「良く知ってるね」


「それを同時に制御して行使しないとダメなんでしょうね」


「そうだろうね、それだけで異世界に行くことが出来るのかは判らないけどね」


 休憩所での楽しい? お話しを終えて、午後からは、バトルを見に行く事に。




よろしくお願いします。

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