(1-25)梓の謎
◇梓の謎
樹達と会場で別れファーストフードに残った苦木、梓の二人は、そのまま話し込んでいた。
「はぁ……ホントにビックリね樹くん」
「樹くんの何がビックリなんだい、演技の事?」
「そっちも驚いたけど、何あの真弓ちゃんて娘は?」
「普通の、幼なじみでしょ」
「なんでよ〝空〟が付いてるのよ」
「五行に空なんて無いでしょだから空木さんは一般人だよ」
「またそう言って逸らかすんだから……苦木さんも予測出来ないの?」
参ったな、また不思議大好きの病気か?
「難しいね、取り敢えず僕の知識だと、仏教の五大に〝空〟が有るね。地水火風空で〝空〟が最上の境地となってる。〝空〟はサンスクリット語でアーカーシャ(阿迦奢)真如の世界に繋がる。真弓ちゃんにも〝真〟の文字があるね。それに〝空木〟も〝真弓〟も樹木の名前だね」
「なんか、凄くない?」
「そうだね凄いね、アーカーシャは、風、空間、太陽、月、星、神を包摂する存在の一切を統括する法則という事だね。ギリシャ神話ではアイテールと言う神がいるね、他にも居るけど近いのはアイテールだと思う。五元素のエーテルに繋がってるから」
「それで、何者なの?」
普通の人間だと思うけどね……さてと、捏造しておかないと梓ちゃんは満足しないよね。
「判らないよ、けど無いと思いたいけど、樹くんを強制的に排除する為の存在かな、間違えてる気がするけど」
「嘘でしょ? そんな事出来るの?」
「さあどうかな、でも名前に弓持ってるからね……これも言葉遊びだから信じないでね」
「……うん」
弓の知識なんて無いぞ? アルテミスだっけか? 後で調べておかないと、不思議ちゃんが満足しないかも……。
「あのね、黒パンには話聞けなかったけど……たぶん気付いてないよね」
こんなの気付くのは、梓ちゃんくらいだよ!
「気付いて無いでしょこんな中二病的な事は。また会う機会は有ると思うから何かの時に会話出来れば良いと思うよ」
「そうよね。あのね苦木さん、私には、黒パンみたいなものって無いの? ほらっこの前、なんだっけ砂糖ヌルヌルとか言ってたでしょ」
砂糖ヌルヌルって、コンデンスミルク? そりゃエロでしょ、自覚ないの?
「自分の事なんだから知ってるんじゃないの?」
「私以上に色んな事知ってるでしょ、白い恋○とか、純白の乙女とか、私にピッタリなのは無い?」
チョコじゃないんだし、純白じゃ無くて純血だと思うけどなぁ。
「まあ、有ると言えば有るけど聞きたいの?」
「うん、スッゴク聞きたい。」
「既に知ってる事だろうけど、〝塩地〟も〝梓〟も樹木の名前だ。〝塩〟は塩素から来てるし、〝辛〟は五味から来てる。梓ちゃんの生まれた二三四一年は辛酉だから十干と十二支で五行の〝金〟と合ってる。季節は秋。色は白、五金は白金か銀。白金に住んでる梓ちゃんにも有ってる」
「うん、それは自分の事だから判ってるわ」
「じゃあ教えてあげよう。なんと! 梓ちゃんの〝梓〟ってのは……」
「うん、何? 何? 早く早く!」
「高級棺桶の材料だったかな、凄いよ梓宮って棺は〝天子の棺〟だよ安心して永眠出来るよ多分」
「なんでよ! そんなの聞きたくないわ、もっと別な話教えてよ」
「長くなるよ、良いの?」
「えっと、家まで送ってくれる?」
「まあ何時もの事だから良いけどね」
「お願いします」
「じゃあもう一つ〝梓〟と言う樹木は百木の長として〝木王〟と呼ばれているよ」
「凄いじゃん私。一番偉いのね」
そう言う訳じゃないよ。まあ機嫌が良いのは良い事だな。
「じゃあもう一つ、凄い事を教えてあげようか」
まあ梓ちゃんなら簡単に騙せるだろう。直ぐに信じちゃうから。本当に変な占いとか、詐欺に引っかからないか心配だよ。
「うん」
「梓ちゃんバイオリン習ってるでしょ?」
「ええ、まあ人並みには演奏出来ると思うわよ。凄いでしょ!」
人並みってのがどの位なのか判んないけどな。ヴァイオリンって凄く難しいと思うんだけど、まあ良いか。
「じゃあフランツ・ペーター・シューベルトの魔王は演奏出来る?」
「ええ、出来るわ」
「梓ちゃん凄いね。それで魔王のドイツ語の正式なタイトルは知ってる?」
「デア エルルケーニッヒか、デア エルケーニッヒどちらかよ」
「うん。そうだね。ではエルケーニッヒってどう言う意味か知ってる?」
「魔王じゃないの?」
「まあそれでも合っているんだろうけれど、妖精の王と言う意味になるんだ。英語だとElfKingだね。だけど〝魔王〟の歌詞を書いたのはゲーテなんだけどオリジナルの原語では「ハンノキの王」と書いていたらしいよ。ハンノキの王は〝樹木の精霊の王〟として魔王を設定したみたいなんだ。梓は〝木王〟魔王は樹木の精霊の王。どう? 結構似てると思わない?」
「うんうん。なんか凄いわ。なんか私も悪魔に関係してるみたい」
まあ全然繋がらないと思うけど。〝ハンノキ〟は榛の木だし、梓とは違うみたいだしな。
「他には無いの?」
えっ……これで満足してくれないの? まあ仕方ないか。
「じゃあ僕達が関係してるかもしれない五行の木火土金水についてだけど。〝日〟〝月〟が入って無い、偶然なのかどうか判らないけど、英語の曜日もSunとMonは英語の太陽と月から来てる。それ以外の木火土金水は北欧神話から来ている。梓ちゃんに関係する〝金〟は、北欧神話ではフレイヤ(Freja、Freyja、Freya)になるね」
「うん、うん、そう言うのが聞きたいの」
嬉しそうに……。
「梓ちゃん、ネコ好きでしょ?」
「うん、可愛いよね……でもネコカフェ行くと皆直ぐ逃げちゃうの気絶してる子もいるんだから、どうしてかな……」
「フレイヤは二匹のネコが牽く車を持っていたから、虐めてたのかもよ?」
「嘘っ? 酷いわ、私そんな事しないもん」
「もしかしたら〝白虎〟だからそれで怖がってるのかもね、ネコから見たら虎は怖いでしょ。パクっとしちゃいそうで」
「そんなの全然面白くないわよ、もっと別な話にして! でも樹くんに頼む事が増えたわ、ネコに好かれるように頼まなきゃ」
頼んでも無理じゃないかなぁ。
「因みにネコはどうもノルウェージャンフォレストキャットみたいだよ、若しかしたらそのネコならば仲良くなれるかもしれないよ」
「本当? 何処の猫カフェ行けばその猫いるのかしら……調べなきゃ」
「じゃあ、猫カフェ調べないといけないだろうから今日はお終いで良いかな?」
「駄目っ! ごまかさないでちゃんと教えてよ! 猫カフェは家で調べるから」
面倒だなぁ。
「じゃあ梓ちゃんに関係する、金星についてね」
「うん」
「まあご存知の通りVenusだね、ラテン語ではウェヌスって呼ばれるかな。この女神様は場所によって色んな名前を持ってるのか、同一なのか判らないけど、ギリシア神話では、Aphrodite(アフロディーテー)と同一視されている。愛と美と性を司るギリシア神話の女神だね。良かったね梓ちゃん」
「うん、うん、そう言う話しが聞きたかったの。〝愛と美〟かぁ……良いわね」
「お終い」
「えーっ、未だ有るんでしょ続き」
これで満足してよ。
「それじゃあ、アプロディーテーの聖樹はいくつかあるけどその中に、花梨、林檎が入ってる。樹くんが使ってるSキューブと今年のモデル名だね。PO社のヴァナディスも北欧神話のフレイヤと同一の女神だね」
「花梨と林檎もなの?」
「さあ。流石に偶然だろうね、そこ迄意識して無いと思うよTD社の開発は」
「それで、その先は?」
「金星の女神は、シュメール神話だと、Inannaになる。これがメソポタミア神話の性愛、戦、金星の女神Ishtarと同一だね。ギリシア・ローマにおけるAstarteも同様に金星の女神だ」
「なんか女神様いっぱいで判んないよ」
「そうだよね、本当に神様つながりは沢山有るんだよねぇ……まぁもう少しで終わるからさ」
「判ったわ」
「エジプトにIsisって女神様がいて、この女神様がギリシャではアプロディーテーと同一視されているみたいだね。ただ出処がはっきりと判って無いんだけどね、このイシスはギリシャ神話に登場する虹の女神Irisと同じらしいんだ」
「イーリス?」
「イリスって言っても良いし、アイリスって言っても良いよ。二一世紀の頃、都市伝説に出てきて有名になった女神様だね。都市伝説に出る前から、ラノベでは良くこの名前は出てきたみたいだね。可愛い名前だからだろうね」
「虹の女神イーリス?」
「そう虹の女神、それで虹は竜の眷属だね」
「えっ、そうなの」
「そうだよ、言葉遊びだけど繋がったでしょ、世界の神々の一部だけどね」
本当に騙され易いな……風が吹けば桶やが儲かるみたいな物なのに……それに竜の配下にイーリスが居る訳じゃ無いんだけどな。金星からイーリス迄は強引に繋げたけどね、まぁ間違えてる可能性も十分有るけど梓ちゃんにはこの位で丁度良いかな。
「だけど、これはこじつけだからね、詐欺のテクニックみたいな物だし、漢字は偏と旁や成り立ちが有るし、同じ読み方も、こじつけて行く事も出来るからね」
「うん」
「もう一つ、余り関係無い話をしようか、かなりこじつけだけどね」
「何?」
「この前〝西洋柊〟が聖木って話をしたでしょ、この〝西洋柊〟に絡んで聖母の出現って言うのがあるんだ。有名なのが〝ファティマの聖母〟だね。実は日本でもそう言うのが有ってね〝梓〟って樹木は〝楸〟と同じって説が有るんだよ。そうすると季節は秋でしょ」
「うん」
「日本では秋つながりで〝秋田の聖母マリア〟っていうのが有るんだ。秋田の聖母マリアは〝桂〟の木で作られた像だそうだよ、この〝桂〟って香木なんだよね〝香〟は五行の金に繋がる五塵の文字だし〝桂〟も季節は秋だね。梓ちゃんの名前が〝香〟でも〝楸〟でも僕は気付いただろうね。〝桂〟は古い時代では〝杜木〟とも書かれている。実際は誤っていたらしいけど、神木としても扱われていて、仏像を彫るのに使われている。だから聖母マリア像も〝桂〟を使ったのかもしれない。〝桂〟と言う字は〝杜〟に〝土〟を足している。〝桂〟、〝杜〟どちらも神聖な意味があるね。何が言いたいのかって言うと〝桂〟って言う名前の人物は関係者になるかもねって事、もしかしたら重要な人物になるかもね」
「私の代わりなの?」
「それは無いんじゃないかな、まあこれも言葉遊びだよ」
「苦木さんの言ってる事が冗談に聞こえないわ」
「まあ、僕は詐欺師の能力が有るんだと思うよ。信じるか信じないかは梓ちゃん次第って事かな。まぁ今日はこの辺にして帰ろうか……」
「うん」
僕が〝火〟だとすれば、五声は〝言〟だ、詐欺師みたいなのは、ここから来てるのか? そんなふうに思いたくは無いけど。
よろしくお願いします。




