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悪魔の樹(あくまのき)  作者: 一喜一楽
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(1-23)ぱんつゲットだぜ!

◇ぱんつゲットだぜ!


 土曜日。TD社の大会当日になった。ちゃんと五時半に起きました。動作を変更した花梨の顔面へのフライング・ボディ・プレスを始めて食らって目を覚ました。この技も危険なので、また変えておこう。いつもよりかなり早いけど走りこみをして、会場に向かう準備をした。


 今日は、ムフフを入手するのだ。苦木さんには絶大なる感謝をせねば。


 昨年と同様七時には泡吹さんが迎えに来てくれました。結局、タクシーは爆睡。気がついたら会場の地下駐車場。会場では既に準備万端のようで、桜さんは、林檎と檸檬に化粧施している。名前に合わせた色の衣装も可愛い、花梨や胡桃に着せるよりも似合っていると思う。


 時間が近づくにつれ、プレス、メディアの方が集まって来た。既にスクリーンには、〝子供達に笑顔を届ける企業Toy Dreams〟が映し出されている。いつ見ても良いな。このフレーズ。でも企業としては凄く大変だろうな。


『今年のWEB広告どう思う?』


『今年は、良く解らないな、新製品は来年かその次だと思うけど。先月位から店頭価格が下がって来ているんだよな』


『多分バリエーションの拡張だろうな』


『それだったら、わざわざこんな大袈裟な発表会はしなくても良いんじゃないか。二年前みたいにプレゼンルームだけで……』


『なんか隠し玉有るんだろうな〝悪魔の樹〟って載ってたから。一応新製品発表会ってなってるし……』

という会話が漏れ聞こえている。


「お待たせしました。これより、Toy Dreams社新製品発表会を開始します」


 定刻になった様で司会のお姉さんのアナウンスが聞こえた。直後、青木社長が、壇上に上がって来た。


「皆さんお早うございます。青木です。本日は、Toy Dreams社、新製品発表会に集まって下さり大変感謝しています。私では上手く説明出来ませんので早速ですが製品開発本部の犬槇課長に説明を変わりたいと思います」


「Toy Dreams社製品開発本部の犬槇です。WEBをご覧になって既に答えが判っていらっしゃる方も居られると思いますが、先ずは見て貰いましょう」


 イベントの衣装を来たコンパニオン達が八人出てきて、赤ネコ四匹と黄ネズミ四匹の縫いぐるみを持って来た。コンパニオンさんの腕の中で既に暴れている。壇上の前のステージに放つと、ネコとネズミがバラバラに動きまわり、べちゃっと転ける。走り回ってお互いにぶつかっては転ける。じっと動かない者も、ほかの物に弾かれて転ける。まったく落ち着きが無い。でも観ていてほのぼのとしてしまう。樹は、やっぱりこれだったのか。と思っていた。それと予想より早くだして来たなと思っている。


「皆さん、どうも落ち着きの無いものばかりで申し訳ない。静かにしろ!」


 と言うと、全員が気を付けの姿勢で固まる。


「今、ステージに居るのが、新製品の赤ネコと黄ネズミです。ご覧になって、気付かれて居ると思いますが、Sキューブの技術を、縫いぐるみに組み込みました、昨年発表した、花梨、胡桃とほぼ同等です。花梨達に比べれば動く速さは劣りますし、指先の制御も精密では有りませんが、子供達には十分満足して頂けると思います」


 話してる間に、我慢できなくなったように、縫いぐるみが動き出す。


「どうにも、落ち着きが無く申し訳ありません。このまま説明を続けます。この縫いぐるみにも、デーモン・ツリー氏が開発したアプリが組み込まれています。人物認識機能です、これは視覚と音声両方で特定人物を認識します。公園等で、縫いぐるみが複数あった場合でも、声が届く範囲で有れば持ち主を探して自分で持ち主の側まで戻ってきます。まあ縫いぐるみの迷子防止機能だと思ってください。花梨達ではシェアウェアでしたがプリインストールされています。実際試して見ましょう」


 コンパニオン達が八人出て来て、一人が縫いぐるみ達に呼びかける。よばれた縫いぐるみだけが声に反応して、コンパニオンさんの所に戻ってくる。残りの七人が一斉に声をかけても、持ち主を方を向いて駆け寄って行く。


「今見て貰った通りです。これで間違えて他人の縫いぐるみと交換する事が無いようにしています」


 また、コンパニオン達が、縫いぐるみをステージに置いた。一人のコンパニオンが、先ほど持ってたのと異なる縫いぐるみを抱きかかえた。縫いぐるみは、抱かれると思いっ切り声を出して暴れだす。


「今実演してるのが盗難防止です」


 暴れている縫いぐるみに、別なコンパニオンが近づいて声をかけると、暴れが収まる。


「持ち主が、声をかければ、暴れるのは収まりますので、お友達同士で一緒に遊んでるぶんには、あまり暴れる事は無いようにしてあります」


 コンパニオン達が縫いぐるみを抱いてステージから戻って行く。


「さて、今の縫いぐるみ達ですが、見た目には判らないですが、とても重要な技術が使われています。子供達に使って貰う事を前提にしている訳ですが、当然外に持ちだしたりして汚れてしまう事でしょう。

親御様達は、汚れてしまったら子供と一緒に風呂に入れて洗ってあげてください。洗い終わったら吸水性の良いタオルで拭けば環境にも寄りますが一時間程度で乾きます。当然抗菌処理のボディーを採用しています。詳しくはWEBかマニュアルを見てください」


『なんか、TD社らしい製品だな」


『昨日、WEBでネコとネズミはこれだったのか……だとすると林檎(りんご)檸檬(れもん)は?』


『Sキューブの後ろ姿もあったからこの後だろう』


「さて、今ここにいる皆さんも、他会場で映像を見ている方達も気になっていると思いますので、発表させて頂きます。この縫いぐるみの価格ですが、この丁度この会場のビックリSite。ビックリしてに(あやか)って税込みビックリ価格¥19,800となっています」


『以外と安いな』


『子供向けだから抑えて来たんだろう』


『これも売れるだろうな、すぐ予約しなきゃ』


「発売日ですが、店頭販売は、明後日の月曜日からとなっています」


『うそ! そんなに準備が出来てるのか?』


「昨年は、花梨達の初期出荷でご迷惑をお掛けしましたので、この縫いぐるみ達はそれぞれ10万匹ずつ準備してあります。まあ十分かどうかは不明ですが。それと本日この会場でもこの後一〇時から、即日販売します。こちらは数に限りがありますのでご注意願います。まずは新製品の発表を終わります」


 犬槇さんが、壇上から去っていった。あれ、まだ有るよね?


 青木社長が再び登場した。


「皆さん、当社の新製品はいかがでしたでしょうか? 私も開発に携わった社員も良い製品が出来たと思っています。昨年、私が此処で言った事を覚えて居ますでしょうか? 私は、昨年『Sキューブで、当社のスローガン、〝子供達に笑顔をとどける〟を今後も実行していきます。当社のSキューブ技術は、他では使わない』と此処で言いました。その一つの回答を今日ここでお見せしました。この先も、継続して行きます。さてWEBでは、まだ情報が出ていましたね。間に出て来て申し訳ありませんね。続けて紹介して行きたいと思います」


 そう言って戻って行った。そうだよね、まだ有るよね。でもタイミングは良い感じだと思えた。


 犬槇さんが、再び登場してきた。


「度々申し訳ありません。社長があのタイミングで顔を出したいと言うもので、サラリーマンですから断れないんですよね。本日は、Sキューブの大会ですからね、Sキューブの情報も公表しましょう。昨年リリースした、花梨、胡桃モデルですが、当社の準備不足で大変ご迷惑をお掛けしました。予想以上の人気商品となっており、今現在も店頭に並んだ途端に売り切れる状態が継続しております。出荷数ですが、トータルで、先月時点で60,000体を超えました。未だ購入していないお客様の要望で、別なボディーを用意して欲しいと言う意見が多数寄せられてきました。開発の方でもその意見に真摯に対応して行きました。では、ご覧頂きましょう」


 通路にスポットライトが浴びせられ、林檎(りんご)檸檬(れもん)が歩いて出てくる。一斉にカメラのフラッシュが光る。


 最初に林檎が、ステージに向かって走りだし、持っていたバトンを投げ上げる。昨年の同様に、バク宙でステージに上がる。続いて檸檬も。


『おお、キター!』


『今年も見れると思ってたよ』


 犬槇さんの無言の合図で、音楽が流れ始める。林檎達が曲に合わせてバトンを回し始める。演技自体は変わっていない、動作が美しくなっただけなんだけど。自分で見ても前に山車さんに見せた時より良い感じだ。


『すげー指の制御してんな。Sキューブでここまで出来るのか?』


『指だけじゃ無いだろ、全身でバトン回してるぞ』


 だんだんと、話し込んでる声が聞こえなくなって来た。皆真剣に演技を観て来ている。そして、バトンがお互いに衝突する金属音の後、バトンを受け取った二体のポーズで演技が終わる。


 林檎と檸檬が、観客席に向かってお辞儀と一言挨拶をする。


「「有難うございました」」


 その直後一斉に、拍手が起こった。


『これも、デーモン・ツリーなんだろ、最後の技凄いな』


『全部凄いよ、なんなんだあの超高速な制御は……』


『先週の大会の体操のチャンピオンを超えてるなこれ』


『杜樹だったか、たしかにこの演技のほうが凄いな』


 会場がざわめいている中、犬槇さんが話し始める。


「今、皆さんにデモ演技を観て頂いた訳ですが、WEBでご覧になった通り、新しいボディーのSキューブを二体準備しました。林檎と檸檬です。衣装も名前に合わせた色の衣装を同梱しています。昨年の、花梨、胡桃と性能は変わりません。声は別な声優が担当しています。まあ皆さんが気になっていると思う事をお話しましょう。WEBでも記載が有ったのを覚えていらっしゃると思いますが、このデモを作成して下さったのは、デーモン・ツリー氏です」


『やっぱり、そうか』


『こんなの作れるの、デーモン・ツリーだけだろうな』


「昨年のデモも凄まじかったのを記憶していると思いますが、今年はそれ以上のデモを作成して頂きました。私も最初に見た時は目を疑うかと思いました。誠に申し訳ありませんが、残念ながら、このデモ演技はプリインストールする事は出来ません」


『えっ?』


『これ間近で何度も見たいぞ』


「この演技を行うには、かなりの広さが、特に高さ方向ですが、必要になります。家庭ではまず演技させる事は不可能です。また屋外でも、風の影響を受けるので実演は難しいでしょう。その為にプリインストール出来ない事を了承願います。代わりにエーリアルと言う技らしいのですが、バトンを投げ上げない演技をプリインストールしています。またこのデモは花梨、胡桃でも出来ます。林檎と檸檬の衣装とバトンセットも販売します。このセットにこのデモを同梱しますので、花梨達を所有している方は、衣装を購入して動作させて観て下さい」


『無料じゃないのか……ちょっと残念だな』


『どの道。バトン買わなきゃ意味ないから変わらないよ』


『あっそうか……』


「さて、花梨、胡桃モデルは既に店頭で値下げ販売が行われていますが、正式に価格を下げて販売させて頂きます。昨年は¥99,800でしたが、本日より¥79,800となります。林檎、檸檬も同価格で販売いたします。店頭予約開始は、明後日の月曜日としていまが、本日、明日はこの会場で限定数ですが持ち帰り可能な物を用意してありますのでお急ぎの方は、お早めにお願いします」


 ん? 犬槇さんの説明終わったのか? なんか下がる気配が無いんだけど。


「さて、デーモン・ツリー氏作成の演技を見てもらいましたが、続きが有ります」


 えっ、聞いて無いよ僕は。そしたらスクリーンに、文字が出た。〝マジカル・バトン今秋放送開始〟はっ、何それ。そう思って見てたら。アニメのシーンが始まった。


 どうも小学生のバトン・トワリングのクラブ活動物で魔法有りの学園物のようだ。


「いま見て頂きました様に、この秋の番組改変で、放送開始します」


 またスクリーンに今度は林檎と檸檬が映し出された。僕が作ったプログラムでは無いが、かなり上手に制御している、多分桜さん辺りだろう。


 林檎と檸檬がバトンを回すと、バトンが光出し、そこから魔法陣が表示された。マジかぁ! あのバトン格好良いじゃん。たぶんLEDの点滅の組み合わせで表示してるんだろう。だけど本当に魔法少女みたいだ。


「いまのシーンのようなストーリーが有る、アニメになります是非見て下さい。以上で私の説明を終わります」


 犬槇さん林檎と檸檬を呼んで回収し壇上から下がって行き再び青木社長が登場した。


「青木です、何度も顔を出して申し訳ないですな。以上で製品発表会を終わらせて頂きますが、ネコとネズミに関しても、購入時にはSキューブと同様の扱いになりますので注意願います。国外へは持ち出せませんから。この後、昨年と同様にプレゼンルームでの質疑応答の時間を確保してあるので、そちらに参加してください」


「以上でToy Dreams社新製品発表会を終了します。この後プレゼンルームでの質疑応答の準備が整っております。出席する方は移動お願いします」


 司会のお姉さんのアナウンスで製品発表会が終わった。


 今年は、応接室に行かず、その場を後にして、苦木さん達との待ち合わせ場所へ向かった。ノートPCを入れてある鞄からゲストプレートを取り出し、スタッフのプレートを仕舞う。


 待ち合わせ場所のショップが有るホールに行くと随分と寂しい雰囲気だった。今年は、別ホールに単独でTD社のショップを用意したらしい。混雑するのを想定していたんだろうな。時間が経てばこっちにも人が溢れて来ると思う。



 苦木さん、梓さんと合流した。


「今日は態々有難うございます」


「いや全然構わないよ。夏休みで暇だしね。それより樹くんは大丈夫なのかい明日の準備は済んだの?」


「自分が出来る事は一応済みました。もう諦めですね。先週は言ってませんでしたが、僕PO社の大会にエントリーしました。なので暇なら観戦しに来てください。チケットが必要なら用意しますよ」


「チケットは僕達も持ってるよ、一応それなりの選手だから四大大会のチケットはCC社から貰ってるから必ず観戦しに行くよ」


「有難う御座います」


「樹くん、演技修正は間に合わなかったの? それでPO社の大会に出場するの?」


 何か鋭いな……だけど違うんですよ、梓さん。


「いえ、違いますよ。PO社の大会はフィギュアでエントリーしました。まあ妖精さんに勝てるのかは判りませんが……」


「PO社のSキューブも持ってるんだ? 結構お金持ちね樹くんは」


「いえ、ローラーブレードだけですね。持ってるのは」


 これはウソじゃない、結局酷使しすぎて予備のローラーも無くなりそうだったのと、自分でも今後使ってみたいと言うのも有って予備のローラーを含めて、昨晩父に頼んで、アメージング・ゾーンに注文した。今日届いているはずだ。


「じゃあ、花梨で出場するの?」


「ええ、そうですよ。それしか手段が無いですし……PO社のヴァナディスを購入して出場するでも良いのですが、僕は花梨の方が慣れていますから」


「樹くんも結構無茶するわね。花梨でちゃんと演技出来るの?」


「出来ますよ。まあ来週観てください」


「判ったわ」


「苦木さん、それで今日のお願いしていた事何ですが……」


「ちゃんと覚えているよ、パンツだろ」


 明日の大会に挑む為にも新装備は重要だ。これで得点がアップするはずだ。するよね?


「ええ。その通りです」


「取り敢えず、僕が先ず見てくるよ。その後で、僕が持ってきたノートPCで今日のお店に有ったのを教えるから、その後で購入すれば良いと思うよ」


 素晴らしい。神のような完璧な計画だ。


「宜しくお願いします」


「樹くん絶対白よ。正義は白に有りよ、黒パンにも負けない為には絶対白よ!」


 白が正義なのは判るけど、なんでそんなに拘るんだろう?


「僕は、赤系のピンクが良いと思うけどね。」


「バカいってるんじゃ無いわ、そんなエロカラーは樹くんには似合わないわ!」


「えっと僕が穿くわけじゃ無いんで似合わなくても良いんですけど…」


「当たり前でしょ! Sキューブ用が穿ける訳ないじゃない、それとも巻着けるの?」


「へっ? 巻着けるって? 何処に?」


「まあまあ、梓ちゃん、エロトークしないようにね女の子なんだからさ」


「……うん」


「僕は行ってくるよ。そこのファーストフードでお茶でもして待っていてくれ」


「はい判りました、お願いします」


 ファーストフードのお店で梓さんと、お茶を注文して飲み始めた丁度喉が乾いていたので良かった。


「樹くんってさ、小説とか読む方?」


 梓さんが急に別な話題を僕に振って来た。なんだろう?


「いえ殆ど読まないですね、それが何か?」


「ううん、じゃあ異世界の話題って興味は有る?」


「異世界の話題って良く年末にテレビで出ますよね」


「そう、その異世界の話ね。番組でも毎年飽きもせずに、四〇年位前に異世界の存在が明らかになったとかって言って、証拠を出してくるじゃない」


「ええ、眉唾ものですけど、知り合いの、知り合いの、知り合いが異世界に行って来たとか言って、全然情報のソースとして信用出来ないし、出てくる異世界行って来ましたという人物も、変な手品で『これが異世界で覚えた魔法だ』とか披露しますよね。でも『地球でマスターした手品だ』って同じマジック披露されたりして、毎年『異世界は有るんだ!』って怒鳴って出て行くのが面白いです」


「まああの番組はどうでも良いんだけど……異世界もののラノベが結構面白いのよ、私も結構良く読んでるわ」


「そうなんですか?」


「ええ、面白いわよ」


 へえ、読んで見ようかな? なんか興味が出てきたぞ。


「でも、書籍のダウンロードって結構な値段しませんか?」


「無料で読める所も有るのよ。」


「それなら、読めますね。教えてもらえますか? ちょうどPCもって来てますんで」


「良いわよ」


 梓さんに小説がアップされているサイトを教えて貰い、お勧めの小説も教えて貰った。苦木さんも良く読んでいるらしい、お互いに面白いのを教え合っている様だ。早速、今日からコツコツと読んで見よう。でも優先は、まずフィギュアの演技から。大会が終われば時間も取れるだろうしね。


 苦木さんが、お店に入って来た。


「何してるんだい? ノートPC出して」


「梓さんに、異世界物のお勧めの小説を教えて貰ったんです」


「おっ、樹くんも良く読むのかい?」


「いえ全く読んだ事無いんで、これからですね。苦木さんも教えてくださいお勧め」


「良いよ」


 苦木さんにも、幾つかお勧めを教えて貰った。先ほどの番組の話題をすると苦木さんが、


「まあ、ああ言う番組が有る以上、本当に異世界が有るのかもしれないけどね。『火の無い所に煙は立たぬ』って言う諺が有るだろ」


 そうなのか? じゃあ、異世界は有っても不思議じゃ無いのかも……なんか小説読むのが楽しみになって来た。苦木さんがノートPCを広げて、ピンクのお店のWEBを見せてくれた。


「今日あの店で購入出来るのは、これと……」


 幾つかのパンツを教えて貰い、その中で、税込み八〇〇円のを全部で五枚購入する事にした。色はブルー(水色)、ピンク、レモンイエロー、ホワイト、ブラックだ。全部で四,〇〇〇円。貯めたお小遣いがかなり減った。また貯金しなければ……。


「判った、早速購入して来るよ」


 そう言って、苦木さんが出て行った。


「白を買ったのは褒めてあげるけど、なんで黒も買ったの?」


「うーんなんでかな? なんとなく五色必要な気がしたから……」


「ふーん、まあ良いわ」


「そう言えば、樹くんは何処に住んでるの? 遠いの?」


「うーん、遠いのかなぁ近いのかなぁ、横浜ですよ中区の黄金町」


「はぁ? なんでそんな所なの?」


「なんでって言われても……ダメなんですか?」


「いや、ダメじゃ無いわよ、行った事無いけど樹くんにはピッタリだと思うわ」


「よく判りません」


「こっちの話だから気にしないで」


「はあ……」


 なんなんだろう……意味が判らない。苦木さんが、ピンクのお店から戻って来た。


「これだ、例のブツは、気を付けろよ、君が持ってるだけでヤバイものだ、当局に見つかると没収の可能性があるからな、それにバレたら俺もヤバイ」


 芝居がかっているけど、事実だ。


『横浜の小学生、パンツで補導される』なんてニュースは嫌だもんね。


「判ってます。ちゃんと隠して持ち帰ります」


「判っているなら良い」


 よし、新装備ゲットだ。明日は新装備で演技を披露しよう。


 重要な予定は終わった。苦木さん達に聞いたら、後はデーモン・ツリーのデモ演技を観て帰るとの事。僕も観てから帰るつもりだったので、随分時間があるが、二人と一緒に、今年から始まったカラオケや他の競技を観て時間を潰した。


 途中TD社のショップが有るホールに行ったら、物凄い混雑だった。手に箱を抱えてる子連れの大人が沢山。多分ネコとネズミを購入したんだと思う。


 デーモン・ツリーのデモ演技は、五〇メートル走の会場を除く全ホールで実演されるので、何処で観ても良いんだけど、自分達が体操の競技者なので体操の会場で観た。


「朝の製品発表会での映像も観たけど、今年の演技は昨年以上に凄まじいな。あのバトンを投げて受け取る技は樹くんみたいだな」


「苦木さん、でも空中で受けるのはデーモン・ツリーだけよ、それにバトンをぶつける技も。私には真似出来ないわ」


「そりゃそうだろ、梓ちゃんは未だ重力加速度や運動エネルギー、反発なんて学校で習い初めた位じゃないか? 覚えて無いけどさ。ちなみに僕だって出来る自信は無いぞ」


 なんか、苦木さん詳しいな。


「デーモン・ツリーさんは、大学生なんでしょうね、昨年デモ演技の時、帽子被った何か怪しそうな大学生が花梨をセットしてましたよ」


「大学生か、そうかもな。さすがに小学生には難しいだろうな」


「そうよね、小学生には不可能よね」


 なんで二人共小学生を強調して言うんですか? まさかバレてるの? どうして?


 デモ演技を見終わって迎えが来てくれるとからと言って二人とは別れた。TD社のブースに行くとまだ混雑しているが、なんとか桜さんを見つける事が出来た。その日は、桜さんに連れられて、地下駐車場に行ってタクシーで帰宅した。


 明日は、いよいよ妖精さんと対決だ。準備は終わってるので何もする事は無いがフィギュアの方の作業を少しして休んだ。



 樹と別れた後、苦木と梓二人は、途中の帰る途中のカフェで話し込んでいた。


「梓ちゃん、なんで異世界の話題出したの? 樹くんは異世界関係無いでしょ?」


「そんなの、判ってるわよ。単に共通の話題持って仲良くなっておきたかっただけよ。だって小学生の男の子とどんな会話して良いか判んないし、Sキューブの話じゃ飽きちゃうでしょ」


「まあ仲良くなるのは、良い事かな」


「でしょ。苦木さんは、パンツ友達で良いかもしれないけど、流石に私は、パンツ友達になりたい訳じゃないし……」


「僕もパンツ友達になりたい訳じゃないけど……」


「じゃあ、何友達なの……何処(どこ)見てんのよ! ロリ苦木!」


 言えない……オッパイ同盟かもなんて……。


「えっと、やっぱりSキューブかな……」


 白々しい……絶対二人共、巨乳倶楽部なんだわ。全く男どもはどいつもこいつも胸ばっかり見て!


「フン! ロリ苦木! 私が樹くんと仲良くなれれば、色々とお願いし易くなれるでしょ。そうすれば……なれる絶対!」


 絶対AAカップ脱出。出来れば憧れのCカップ!


「そうだね……でも(しばら)くは、樹くんも小説は読まないでしょ、来週も大会有るんだし」


「そうよね、普段どうやって会えば良いのかしら……大きい大会なんて長期休み位しかないし」


「普通に呼び出したら良いんじゃないの?」


 そんな簡単に呼べないわよ! 乙女の純情を読め!


「そう言えば、樹くんって住んでる所って遠く無いけど近くも無いのよね、横浜なんだってさ」


「へっ、へえ横浜なんだ……まあそうかなって思ってたけど」


 まあそんな気はしてたんだよな……はぁ、偶然だと思いたいけどなぁ……。


「中区だって」


「それはまた、何と言うか……」


「ついでに、黄金町よ!」


「マジで?」


 本当に偶然なのか? 何か余りにもおかしく無いか?


「うん。私が住んでも良いわよね」


 五行の〝金〟に反応したんだろうな、でも五金だと樹くんは〝黄金〟で梓ちゃんは〝銀〟か〝白金〟なんだけどな。


「一緒に住むつもり? 結婚するの樹くんと、かなり先が長いと思うけど」


「黒パンが手を出してくるかもしれ無いじゃん、あの巨乳で迫って……」


 無いよ! 絶対に、何心配してるんだ?


「別に側にいる必要も無いしでしょ」


「それはそうかも知れないけど……」


「困っていたら助ける位で丁度良いんだよ」


「私、困ってるから、助けて貰いたいんだけど、樹くんに……」


 はぁ…良いけどさ、低レベルな悩みだよな……


「で、どうやって呼び出して逢うつもりなの梓ちゃんは?」


「取り敢えず、次の大会終わったら、その三週間後のVC社の大会に来てもらおうかなって……」


「まあそれなら良いんじゃない。僕は行かなくても良いよね」


「なんでよ!」


「二人きりでデートした方が良いんじゃないの?」


「で、で、デート!」


「違うの?」


「……違うわよ、だから苦木さんも来てよ。」


「まあ、良いけど。元々VC社の大会も見る予定だったし」


「イジワル」




よろしくお願いします。

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