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悪魔の樹(あくまのき)  作者: 一喜一楽
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(1-21)妹さん

◇妹さん


 木蔦さんの質問の答えは、僕も完全には判っていない推測だけど答えておく。


「僕も推測でしかないんですけど」


 昨日動作させて、推測した内容を伝える。PO社のバナディスにローラーブレードを装着して実際に動かしてみた。家の中なので大した事は出来ないが、バランス機能OFF/ON状態で、シングルジャンプをさせてみた所、特に気になる所も無かった。


 スケーティングの動作途中で、バランス機能をONにすると、途端におかしくなって来る。スピードを無理やり減速させるのにモーターをONにして来る、これでバランスを崩して転倒する。これではダメだと思いジャンプしている間にONにしてみた。ちゃんと着地出来るはずが、転倒した。空中でONにすると自分の姿勢を狂わされるようだ。


 それにしても、空中姿勢もバランスさせてるのは凄いな。後から追加なのかもしれないがフィギュアを意識してるとしか思えない。これでは、転倒するのが嫌ならばデフォルトでONにしておかないといけない。


 フィギュア競技は、床やコンクリートの上で行われる。コンクリートの上で転倒してボディーを痛めれば、最悪全交換だ、質感の高いPO社のボディー修理は、殆ど新品を購入する位高いだろう、遊びで失うには痛い金額だ。


 ユーザーがこの機能を作り込めれば良いのだろうが、まだSキューブが出てきて一五年程度しか経っていない為、歴史もノウハウも溜まっていない状態だ。PO社のバランス機能が優秀過ぎて手が出せないのだろう。こんな所が理由だと思った。


「なるほど、そう言う事か、競技場所の違いで、アイスで言う所のエッジのかかり具合も違いますから転倒リスクは高いでしょうね。判りました、樹くん有難う御座います」


 少し、雑談になったけど。頭のリフレッシュも出来た感じだ。好きに飲んで良いと言われた冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して休憩していたら、桜さんが、部屋に入って来た。


 午前中は、これで終わったな。桜さんは、真弓と同じくらい邪魔してくるはずだから……。場所を貸して貰ってるし、圧倒的にここの方が効率が良いので文句は無いけど。


「樹くん、久しぶり」


「桜さん、こんにちわ。もう会場の準備は、宜しいのですか?」


「うん、全然OKよ。誰かさんが急に変更して来たから焦ったけど、見て納得したし会場でのデモにも影響出なかったから、リハはもう済んだわ。後は明日の朝確認すれば問題ないわ」


「済みません、どうしても、あの演技に納得が出来なくなったので、修正させて頂きました」


「見た時は、びっくりしたわよ、激変してるんだもの、それも良い方向でね。良く出来たわね」


「桜さん、樹くんは、バトントワリングのデモも変えたんですか?」


 あっ、木蔦さんにCCしておくのを忘れてたみたいだ。


「ええ、月曜日の深夜にね、変更したプログラムを送って来たわ。朝メール見て速攻で動作確認して何も問題ないから、特に連絡してなかったわね、ゴメンね」


「どんな変更が入ったんですか? 今週僕は別の準備で、デモ関係は桜さん纏めだったので全く気付いていませんでした」


「うーん、全体の流れと動作は変わって無いわ、より洗練された美しい演技になったってとこかな。明日見れば判るわ」


「判りましたが、樹くん、どんだけプログラム修正してるの? デモに大会の体操競技、フィギュアは新規だし。ちゃんと寝てる?」


「ええ、大丈夫ですよ。昨年より少し忙しい感じだけど。楽しめてますから。新しい発見も有りますしね」


「昨年より忙しいって……木蔦くん、何頼んだの?」


「いや僕は何もしてないですよ」


 妖精さんについて疑問に思っていた事を聞いてみた。


「桜さんって、妹さんいますか?」


「いきなり何? 一応いるけど、私今一人暮らししてるから、妹が何してるか判らないわ。凄く年離れてるし……話しが合わないのよね……昔は物凄く可愛かったのに」


「もしかして、水木さんですか?」


「なんで名前知ってるの?」


 やはり、妹さんだったんだ、よく似てるもんね。美乳な所もちょっと怖そうな所も。


「僕が忙しいのは、水木さんに勝負を挑まれたからですよ。水木さんも、僕以上に悪魔クラスのSキューブプログラム開発者ですね」


「あの娘、樹くんに何したの? 勝負挑んだって。だってフィギュア専門だよ水木は」


「明後日の体操競技で戦うんですよ。それで自分の演技を修正したんです」


「えっと、もしかして強敵って水木の事だったの? 木蔦くん知ってた?」


「名前はエントリー見て知ってましたけど、桜さんの妹さんだとは知りませんでしたよ中二ですから年離れすぎでしょ、でも姉妹でSキューブ扱うの上手いんですね」


「あれっ、水木はPO社のSキューブ使うの? 体操出来ないよねあのSキューブじゃ、手が壊れるでしょ」


「水木さんが使うのは胡桃ですよ」


「いつの間に買ったのかしら……まあ良いわ水木の事は。どうせ樹くんの圧勝でしょ。あれっ? でも強敵って言ってたわね。あの娘樹くんにそんなセリフ言わせる程凄く無いと思ったけど」


「いやーそれが、負けそうなんですよ全く。困ったことに」


「嘘でしょ。樹くんの今年の演技は私見てないけど、もの凄いって聞いたわよ」


「本当ですよ、わざわざ緊急でここを借りないといけない位ですから」


「信じられないわね。それで樹くんもフィギュアに出るの?」


「ええ、体操で負けっぱなしは癪ですから、フィギュアで勝とうと思いまして」


「今更、樹くんのすることで驚かないつもりだったけど、フィギュアで勝てるの? あの娘結構フィギュアは凄いわよ」


「まあ、それも微妙なんですけどね、あっさり負けない程度にはしますよ」


「そう。頑張ってとしか言えないわ。それよりもうお昼ね。木蔦くん、お腹空いたわ、お昼にしましょ私の分有るわよね?」


 もうお昼か、なんか大したこと出来ないうちに時間が過ぎちゃったな……お弁当用意してくれるって言ってたから良いけど、今日は何か悪いな、自分の都合だしTD社関係無いし。


「桜さん午後からって聞いてましたけど……」


「無いの?」


「まあ想定してましたから、用意して有りますよ、余れば新人に渡すとこでしたけどね」


「気が利くようになったわね。偉いわ」


「褒めても、お昼だけですからね」


「良いわよ、役員用の高級弁当でしょうね」


「ええそうですよ。樹くんが来るんですから当然です」


 何? 役員用って、って言うか何で僕だと当然なの? もしかして前食べたのも役員用?


「場所は? 何処?」


「第一応接です」


「良くやった。褒めて使わす」


「ははー、恐悦至極」


 なんでギャグやってるの?


 木蔦さん、桜さんと一緒に以前何度か食事で来た、第一応接室へ。今日は鰻! 超凄い!ふっくら。全然泥臭くないし、もう最高と言ってもいい感じ。創業一八六七年は流石だ。


 役員さんて何時(いつ)もこんなの食べてるの? なんか毎日だと不健康になりそう。


 食事中に午前中の事を話した。新人さん達の事では、木蔦さんが、凄かったと言ったら、その位出来て当たり前って言ってた。桜さん厳しいです。


「木蔦くん、営業でも無いのに良く、弁当と第一応接取れたね、泡吹くんに頼んだの?」


「いえ、今週は泡吹は殆どいないですから、どうして良いか判らなかったんで、直接、山車さんに頼みました」


「随分無茶な事するわね、私もいきなり山車さんに頼む事は出来ないわよ」


「いや一応、青木社長と山車さんにSキューブ教えてるんでそんなに緊張もしませんでしたし大した事無かったですよ、山車さんも樹くんの件なら今後も直接頼みに来て良いって言ってくれました。第一応接は、その場で総務に電話一本で済みましたよ」


「そうなの?」


「ええ、後で様子見に来るみたいですけど……」


 えっ黄門様来るの? 今日は驚くもの無いんだけど……。


「樹くん、私も凄く興味有るから後で演技観せてね」


「ええ構いませんよ」


「犬槇さんは、夕方四時位に来るって言ってたわ、まだ明日のリハとかいろいろやってるから」


「そう言えば今年のティーザー広告は最初は何だと思いましたよ。赤と黄色だけですもん。その後、果物の林檎と檸檬でしょ。林檎と檸檬の後ろ姿が出て、S―CubeH Controlled by 〝悪魔の樹〟も出てたのに、今日になってネコとネズミですからね。予想は出来てますが僕の知らない何か有るんでしょうね。明日楽しみにしています」


「ええ期待して良いわよ」


 昼食が終わって本格的にフィギュアに取り掛かる。木蔦さんと新人さん達は、桜さんと交代する様にして居なくなった。明日の会場準備に向かったらしい。代わりに桜さんと女性社員三人が部屋にいる。今日も皆さん美しい。ミニスカが標準なのかなこの会社って。


 メール着信していたので確認したら、泡吹さんからだった。朝送った僕のメールについて、了解との事。メールには、木蔦からのメール見て、策士だね樹くんと書いてあった。


 なんとなく『お主も悪よのう、ぱふぱふの為にそこ迄やるのか、ふぉっふぉっふぉっ』とか言われてそう。熱いパトスがそうさせるんですよ。溢れ出てはいませんがね。


 さて妖精さんは、僕の出場を知った後、何処までレベルを上げて来るか? 昨年の妖精さんのレベルならたぶん大丈夫。負けない演技は出来る。


 だが昨年の動画を見ると、妖精さんの演技はバランスOFFにした場合でも、ほぼ安定した動作する様に見えるから。妖精さんは絶対気付いてるバランス機能をOFFにしても演技可能だと。じゃなければ一人だけ肌が露出した衣装を来て演技させてない。転ばない演技に自信が有るからだ。フィギュアでも周りに合わせた三味線を弾いている感じだ。


 僕が、花梨で出場する意味を理解して一気にレベルを上げて来るだろう。皆さんには役満返しとか言ったけど、実際には互角になりそうだ。


 演技内容はこれからだ。人間の競技に合わせる必要も無い。というか合わせられない。でも出来そうな所は入れていこう。先ずジャンプについて、人間の競技と違い、演技後半で加点がある訳ではない。妖精さんは昨年、全て単独でジャンプしていた。コンビネーションジャンプは入っていない。


 花梨でも縮小比で言えば人間レベルを超えているので、四アクセルが出来ると思う。PO社のヴァナディスは花梨よりも性能が若干高いが流石に五アクセルは無理だろう。


 アクセルジャンプは、四アクセルを入れるようにする。次にステップからのソロジャンプ、昨年は三サルコウで演技していたが、妖精さんは五サルコウで来るかもしれない。僕は四サルコウを実際にやってみてから検討しよう、Sキューブの性能も有るが衣装が重いので。最後にコンビネーションジャンプ。四ループ連続二回で行く事に。


 ノートPCで、コツコツと、ジャンプ演技を入れていく。


 桜さん達は、新人さん達が置いていった、ローラーブレードを装着した林檎で何かやっているようだ。Sキューブ制御の勉強かな?


 エミュレータ上では、取り敢えずジャンプは入れたが、実機では転倒するだろう、ローラーブレードのデータのチューニングが必要になるはずだ。ステップも入れて行くようにする。参考にしたのは、人間のローラーブレード演技でセー○ームーンの音楽で演技している女の子。


 観ていて可愛いしとても上手なので、これを参考にして行く。


 ローラーブレードのチューニングがしたいので、桜さんから、ローラーブレードを返して貰おうと声をかけ様としたら。向こうから声を掛けてきた。


「樹くん見てみて! 私達もフィギュア動かしたんだよ」


 うーん、可愛い声出してもね。まあ見てあげましょう。時間が勿体無いから早く終わらせておきたい。


「はい、どうぞ。終わったらローラーブレード使いたいので貸してくださいね」


「判ったわ」


 桜さんが、林檎を起動させて、滑らせて見せるが、途中で転んだ。可哀相に林檎が痛そうだ。ちゃんとバランスはOFFで動作させて居たけどね。


「フフンちょっと途中で転んだけどどう?」


 桜さんの遊びには、ちょっと付き合ってられない。


「スゴイデスネー。コンナタンジカンデ、デキルナンテ、ソンケイシマス。もうローラーブレード林檎から外して良いですか?」


「なんか、全然感動してないわね。良いわよ外しても。つまんないなー」


 仕事しなくて良いんですか? 桜さん。林檎から、花梨に付け替えて、今作ったのを入れようとすると。


「先に、演技観せてくれる?」


「ええ、良いですよ。どっち見たいんですか? 体操、フィギュア?」


「うーん、両方」


 判りました。仕方無いなぁ、まぁ場所借りてるんだしね。


「じゃあ体操から」


 花梨を起動し演技させて見せる。


「い、樹くん、な、何この演技」


「CC社での大会の演技を修正したんですよ。妖精さんに負けそうなので」


「嘘でしょ、この演技で負ける事は有り得ないわよ」


「木蔦さんにも観て貰いましたが、妖精さんと『同等位』になったそうですよ。判りますか? 『同等位』って負けてるんですよね。まあ、これが僕の限界なのでこのまま勝負します」


「でも、でも信じられないわ」


 事実なんだもんな、まあ妖精さんがどう言う判断するかは、判らないけど。互角って認めて貰える位にはしたつもり。


「次に、フィギュア見せますね」


 午前中の演技と同じ物を、桜さんに見せる。


「何で、ちゃんと滑ってるのよ、私達があんだけ悩んだのに」


 あんだけって一時間位でしょ、十分凄いと思うけど。


「これに、どの位時間掛けたの?」


「昨日と水曜日の夜ですね」


「それだけ? 樹くんの事で今更驚かないつもりだったけど、もう良いわ。これだけでも予選なら勝てそうね」


「優勝しないと駄目なんですよ、じゃないとボスキャラと較べて貰えませんから」


「なに、それ?」


「妖精さん、二年連続チャンピオンですから、競技参加して無いんでラストにデモ演技披露だけなんですよ。採点はするみたいですけどね」


「あの娘そこまで凄くなってたんだ」


「ええ、妖精さんも、水木で〝木〟が付いてますし〝水木〟って樹木の名前だから、僕が負けたら、妖精さんが〝悪魔の木〟になっても良いかもしれませんね。妖精さんの場合は、デーモン・ウッドになっちゃうかもしれませんが」


「えっ? それは不味いわ」


「何処がですか?」


「他社が、〝悪魔の木〟とデーモン・ウッドを商標登録したらどうしよう。犬槇に伝えなきゃ。来週直ぐにも、うちで商標登録申請しなきゃ、まだ間に合うかな…」


 そんな事、心配してたのか……まあ営利団体だしね。


「樹くん、負けちゃダメよ! デーモン・ツリーが、デーモン・ウッドより弱いのは良くないからね」


「今回は、杜樹で出場だし…デーモン・ウッドは未だいないでしょ」


「それでもよ、CC社が登録してきたら、絶対に〝悪魔の樹〟を超える開発者って言って来るわ、おまけに勝負しろとか……」


 そうなのかなぁ……そこまでバカな事はして来ないと思うけど。あーっ桜さんと会話してるのは楽しいけど、時間が……。


「すみません、フィギュアの調整したいのでこの辺で……」


「あっゴメンナサイね」


「私も、犬槇と連絡とって来るから」


 そう言って、部屋を出て行った。今がチャンスだ。良し進めるぞ!



よろしくお願いします。

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