(1-16)役満返しだ!
◇役満返しだ!
妖精さんとの会話中に、全ての演技が終了した。結局競技結果は、僕、梓さん、苦木さんが、トップスリーだった、他の競技が未だ終わって無い為、表彰式迄の時間で控室に戻り、ノートPCで、昨年のPO社の大会の映像を見てみる。
人間用のクワッドスケートはトウが付いているのも有るが、Sキューブは、普通のインライン(シングル)ローラーブレードでフィギュアの演技をしている。
他の演技者が、全身を包んだ衣装に対して、妖精さんだけは、普通のフィギュアの衣装だ。今日の衣装は特別なんだろう。演技の方は他の選手と比べると凄く綺麗で美しいとしか言いようがない、妖精さん以外の演技者も、ステップに関してはとんでも無いステップを披露している。スラロームのテクニックを使用しているんだろが、アイスとは違ったステップは神業に見えてしまう。
抜群の安定間と今日の演技で見せたような柔らかい演技で魅了し、ジャンプでもちゃんと着地している。まだ余裕が有りそうな演技だ。
PO社のSキューブのスペックを見ると、花梨達よりも若干良さそうな感じであるが、実際にPO社のSキューブを使わないと判らないだろう。合わせて、フィギュアを含めローラーブレード競技のルールも確認しておく。
ここ迄見て、表彰式が始まる時間になったとアナウンスが聞こえたので、気分を切り替えて表彰式に向かった。体操部門は、上位3人がTD社で締められている。漸くCC社独占の体操競技の牙城を崩す事が出来た。犬槇さん達も喜んでいると思う。
表彰式の後で、またインタビュアーさんが来て、僕達にコメントを求めて来た。此処に居るのは、僕を含めてちょっとズレた人達だから。
エロ爆笑漫才のコメントになった。胸の話題を出したら梓さんが、超可愛い怒り方で絶対にファンが増えただろう。でも完全に放送禁止だな……夕方のニュースでも放送されないだろうね。
表彰式が終わって。僕は、TD社の控室に向かった。お願いする事が出来たから。
控室に行くと、泡吹さんと木蔦さんがいてくれた。
「お邪魔してすみません」
「全然構わないよ、それより優勝おめでとう」
「有難う御座います」
「それでどうしたんだい? 何か昨年も同じ様な会話した気がするけど」
「そうですね、昨年と同じで、お願いしたい事が四つ有りまして」
「うん、良いよ。全部OKだよ」
「えっと未だ何も言ってませんけど…」
「僕達に出来ない事は、頼みに来ないでしょ。出来る事が判ってるんだから全部OKだよ」
「有難う御座います」
「とは言っても、内容は聞かないとね」
「はい、一つ目は、今週の金曜日のTD社の大会前の事前準備には不参加でお願いしたいのですが……当日は昨年と同様にお願いします」
「木蔦くん、大丈夫かい?」
「ええ今年は、柊さんが対応出来ますので大丈夫です問題ありません。昨年と違って準備は整っていますから」
うん、元々そのつもりで準備して来たし、桜さんに十分教えて来てるので大丈夫だろう。
「二つ目は、PO社の大会のワイルドカードを頂きたいのですが……まだ間に合いますよね」
妖精さんがPO社で用意するって言ってたから多分大丈夫の筈。
「やったな泡吹、これで体操競技三冠になるぞ」
木蔦さんが、口を挟んでくる。
「木蔦くん、先走り過ぎ。樹くんがデーモン・ツリーより目立つのも考えもんなんだからね。まあその辺の行動に制限は無いから、うちからは何も言えないんだけどさ。樹くん、ワイルドカードは大丈夫用意出来るよ。それで体操競技で良いのかい?」
「いえ、フィギュアのワイルドカードを頂きたいのですが。出来れば決勝の予選免除で」
「それは、少し難易度が高いな……でも何とかするよ。先に約束したからね」
「有難う御座います。三つ目なんですが、PO社のローラーブレード競技のルールを見たのですが、他社のSキューブで出場する事を禁止している記載が無いんですよ。実際にTD社のSキューブで出場可能か問い合わせて頂けませんか? 僕が質問しても、ちゃんと回答が得られないかもしれませんので……」
「判った問い合わせは、TD社として質問しよう。そうすればPO社も無視出来ないから」
「樹くん、PO社のSキューブ持って無いよね? 本当にワンメイクだったらどうするの?」
木蔦さんが、僕に対して質問してきた。
「どのみち、ローラーブレードは必要になるので、今日注文しようと思ってます」
これは、事後になるけど父に言わないといけないな、僕のお小遣いで購入出来る金額じゃないから。
「じゃあ、開発部にある、PO社の最新モデルのヴァナディスを貸与するよローラーブレードと合わせてね。大会の後で返却してくれれば良いから」
「良いんですか?」
「うん、まあ僕に貸与する権限なんて無いけど約束する。ちゃんと犬槇さんの許可とって明日到着するように発送するよ。ユーザー登録と保護者登録もしてね」
「有難う御座います」
これで、どっちになっても、出場は出来るだろう。足のサイズは、同じなので、ローラーブレードのシューズを花梨に履かせる事は可能だろう。ローラーブレードからのセンサー情報は受け取れないが、そこは何とかしないと。
「四つ目なんですが、TD社のエクササイズルームを、二日間貸して頂きたいのですが……出来ればPO社の大会の行われる土曜日と前日の金曜日に」
「判った手配しておく、まあ大丈夫問題ないだろう。特に土曜日はね」
木蔦さんが、約束してくれた。良し、これで、必要な環境は揃ったな。後は演技をどうするかだな。泡吹さんが、全部聞いた後で、僕に確認をして来た。
「樹くん、それで、全てかな?」
「あっもう一つ、お願いでは無いんですが、今日の僕の演技での〝剣〟はTD社の大会では問題ないですかね?」
「まあ、今日みたいな凄い技を見せても、加点は無ないよ。落とせば減点されると思うけどね」
「判りました、これで全部です」
「じゃあ、質問良いかな? お願いに対してね。まあ全部繋がっているんだろうけどね」
「はい、構いません」
「じゃあ最初の、前日のキャンセルから。緊急で用事が出来たんだろうけど」
「はい、今日の大会の演技は観ていたと思いますが〝妖精の踊り子〟の演技を観ましたか?」
「ああ、見たよ。凄く滑らかで綺麗な演技だったね。彼女は確かPO社の推薦で出場してる選手だね。うちの大会もPO社から推薦が出ているよ」
「木蔦さんの方も観てましたか?」
「ああ俺も観ていたよ、泡吹と同じ意見だけど、演技観て化物かと思ったよ。樹くんの演技も同じだけどな」
流石、開発部の人だ、妖精さんの凄さをちゃんと判ってる。
「木蔦くん、どういう事?」
「あの演技は、とんでもなく凄い。あの手足の制御は簡単には出来ない。ゆったりして派手な演技じゃ無いけど指先、手首、肘、身体全体、全てを綺麗に動作させている、恐ろしい程高度な制御だよ。樹くんとは違った見せ方だけどね」
「そうなのか……流石は開発者だね」
「いや、犬槇さんと柊さんに鍛えられてるから、昨年だったら気付いてないよ」
「それで、樹くんは〝妖精の踊り子〟さんと何か有ったのかい?」
「ええ、喧嘩を売られまして、正確には勝負を挑まれてるって所ですけど……」
「でも既に勝負は付いているんだろう、樹くんの勝ちでさ」
「どうも、妖精さんは今日は様子見だったようですね、三味線弾いていたようです。TD社の大会で決着つけたいと。僕の今日の演技を観て、余裕で勝てる感じでしたよ。彼女もデーモン級ですね」
「嘘だろう、今日の演技って、昨年のデモを遥かに超えてるのに……」
「本当です。多分体操の技でも僕以上の事が既に出来ているんだと思います。それで、演技を修正変更したいので、前日はキャンセルさせて欲しいんです」
「判った。なんなら前日は、エクササイズルーム使うかい?」
「良いんですか?」
「ああ、平気さどうせ前日は、大会の準備で誰も使わないし、単独イベントだから玩具ショーよりも忙しい位だからね」
「宜しくお願いします」
「それで、樹くんは、勝てるのかい?」
「現時点では、勝てる要因が見つけられてませんね。困ったことに、でも出来る事はしようと」
「そうか、では、PO社の推薦の件は?」
「えっと、何でしたっけ〝売られた喧嘩は、役満返し〟でしたっけ? 役満の意味は判りませんが」
「倍返しだろそれは」
「木蔦くん、樹くんも、全然違うよ〝売られた喧嘩は買わねばならぬ〟だよ。まあ良いけどね。それと役満は麻雀で特に難易度の高い役の事ね」
「泡吹、物知りだなぁ」
「えっと、妖精さんは、PO社のフィギュアの二年連続チャンピオンだそうで、喧嘩は買ったつもりなので、それでその喧嘩で倍返し、役満返ししようかと思いまして、ただこっちも全くプラン無しです。使った事の無いPO社のSキューブよりも花梨で参加した方が可能性が有るかなって」
「良く判ったよ、選手出場だから、プログラムとかのサポートは出来ないけど、まあ場所を貸す位は良いでしょ、昨年も真弓ちゃんに貸してるしね」
「宜しくお願いします」
準備は、整ったな。後は真弓に連絡して明日来て貰おう。僕だけでは女性の動きは判らないから。
TD社の控室を後にして、帰宅した。自宅に帰って、夕食後に、今日の大会の結果と、過去の妖精さんの大会映像の再度確認した。
見ていて、真弓が以前言ってた事を思い出して来た。『体が固くて私が合わせるのが難しい』もしかしたら、妖精さんも、フィギュアの選手なのか……自分の演技を真弓みたいにコピーしてるのかも?
そう思い、フィギュアの大会を検索し映像を徹底的に観て女性の動きを記憶していった。見つけた! この娘だ。今年の妖精さんの演技だ。名前は〝柊 水木〟
もしかして、桜さんの妹? 確かに似てるかも、メガネだし美乳だし。僕の事を知ってて大会に出て来たのか? でも守秘義務を桜さんが破るとは思えないけどな……。
まあ、姉妹かどうかは、今はどうでも良いか。それより演技の方だ。昨年のPO社の大会でのSキューブの方が、本人の実際の演技より上まっている。アイスとローラーブレードの差は有るが音楽、演技構成は一緒だ。まあ人間を超えてるのでそれも有りなのだが…フィギュア全体を見ると人間の演技を上まってるようには見えない。
たぶん、以前から、Sキューブと自分自信で演技が良くなるようにして行ったんだろう。アイスの競技を見ると残念ながら本人は他者を圧倒する才能が有ると言う程では無かった様だが、未だ中学一年生だ伸びしろは未だ沢山ある筈。だけどSキューブの制御は中学一年生で既にデーモン級以上になって来ている。
今の自分の体操演技を修正するとすれば、この柔らかいスムーズな動作を入れる位しか無いなと思ってしまう。多分これだけだと未だ全然追いついていないだろう。一応、明日真弓にも観てもらう為に、プログラムを修正しておいた。細かい所は、明日真弓にアドバイス貰ってから考えよう。
よろしくお願いします。




