(1-14)パンツへのこだわり
◇パンツへのこだわり
夏休みに入って直ぐの七月。CC社主催のSキューブ大会が行われる。今年はタイトなスケジュールで一週間毎にCC社、TD社、PO社の大会が開催される、三週空いてVC社の大会だ。
CC社から予選免除の案内が到着して、出場すると連絡したのがTD社でのデモが終わった後。それ以前から、準備をしていたので、演技の準備は特に問題無い。
真弓の方は、今年はCC社の大会は前回タイトル保持者だがキャンセルした。TD社の大会に的を絞っている。正当な評価されない可能性もあるのでその方が良いと僕も思った。
今年は、本気でタイトルを取りに行くつもりで、演技を見直している。床運動の要素を全て折り込んで、着地も見直した。衣装は、メーカー物の花梨の衣装。当然、チラっ、揺れ、萌えは、標準仕様で搭載済です。少し、バトントワリングの演技の一部(どちらかと言えば新体操かも)を組み込んでいる。たぶんこの位なら問題無いよね?
CC社の大会当日、午前中から、会場の嫁入りドームに行って、出場者の演技を観ていた。今年は参加Sキューブが、エントリーリストを見ると半数がTD社に変わったようだ。TD社五割、CC社四割、VC社一割って所だ。昨年まではCC社九割だったのに。
TD社の一世代前のモデルも出ている。真弓の影響が大きいのだろうと思う。ダンス優勝モデルだし値段も安いしね。センサーと動作レスポンスを除けば、花梨達と較べてもそう大した違いは無いし、僕も動作レスポンスは体操競技では、一世代前でも十分だと思ってる。
競技を見ていて、昨年と較べてレベルが上がって来てると感じた。それに衣装もカラフルで全く体操と関係無い衣装が増えて来ている。僕の影響なのかもしれない。とても良い事だと思います。
午前中は、レベルが上がったとは言え今の所、強敵と思える相手はいないようで、安心反面、少しがっかりもしていた。だが強敵が現れるのは午後からだろう。今更プログラムの変更は出来ないが……僕が緊張しても演技には影響も出ないけどなんかドキドキしてくる。
午前の競技が終わって休息を挟んで、午後の開始時間になる。僕も控室に行き準備を始める。これと言って何かするわけでも無いが、花梨を出して、ノートPCで接続してチェックする位だ。
僕の順番は、午後の八番目。全体で言えば二四番目。午後になると、これはと思う選手が出場してくる。午前中、TD社のSキューブを使用してきた選手達は、今日、僕が使用しているデフォルトの衣装で出場して演技していた。まあ衣装のデータは、昨年のTD社の大会直後にブーツデータと合わせてTD社に花梨、胡桃両方とも提供していたので、そのまま使えるからだと思うが、午後の予選免除組には、オリジナルか市販の別の衣装を着せて演技させて来ている。昨年と比べ随分とカラフルになった。逆に普通のレオタードは少ない。悪い意味で影響を及ぼしたのかも知れない。
市販の衣装は、衣装データが無いのが殆どだから、自分でデータを作らないといけない。
控室でモニターを観ていて注目したのは、ブルマと体操服、白ソックスにバレーシューズで登場した胡桃。
なんですか? その衣装? マジで注目です。
花梨達はアニメでは小学六年生、Sキューブは変身後の高校生位のスタイルになっている。小学生の体操服を高校生が着た様に、ぱっつんぱっつんでヘソ出し。おまけにゼッケンに〝六ねん二くみ くるみ〟って。参りました。これは凄いインパクト有ります。これだったら衣装データもレオタードをそのまま使えると思うけど。別な選手は、スク水です。あなた達、マジスゲーです。斜め上の発想です。おまけにその髪型どうしたの、三つ編みツインテって自分で編んだの、市販のウィッグ? 萌えでは完全に負けていました。どちらかと言えばエロなのか? マジ神衣装です今回の衣装グランプリをあげたくなります。
僕の演技前の中でも、本当に凄いと思える選手が二人いた。実際の体操演技は未だまだだと感じたが今後は凄くなるだろうと思える。先ほどの体操服やスク水は色物系だったけど。この二人は凄い。
一人は、セーラー服だった。紺ソクにローファー。それ何処の学校? って聞きたくなります。市販の衣装だと思うけど、衣装とローファーのデータは自分で作って来たのだろう、データを作るのは結構難しいのに。それでも、きちっと演技しているのはSキューブの事が解っている証拠だろう。それに、チラっと見えたのは、ピンクのシマシマ。白が正義だと思っていたが、シマシマも素晴らしい。
もう一人は、白のナース服、ナースサンダル、ご丁寧にナースキャップも装着して、聴診器まで首からぶら下げている(演技で暴れないように留めているようだが)この選手も、データを自分で用意して来ていると思われた。
こちらの選手は、もっと凄い。セパレートの白のストッキングをガーターで留めて。な、な、なんとチラっ見えしたのは、白のレース。素晴らしい。僕はまだまだだと思えた。
今の所演技の破綻も無くこなしたこの二人が一位二位の様だ。後で、この二人には挨拶に言ってこよう。
是非お友達になって入手経路を押さえておきたい。
漸く僕の出番になって、会場に向かう。先ほどの選手達がSキューブを抱えて会話している。年齢が良く判らない男の方は高校生位だけど女の子は、小学生に見える。もしかしたら兄妹なのかもしれない。男の方と視線が交差する。お互いに感じる所が有るからだと思う。こう言うのは匂いで判るもんだ、実際の匂いでは無いが、趣味が会うと言うのは、こう言うピンとくる感じだろう。演技が終わったら早速会話しなければ。なんとなくだが師匠と呼びたくなって来た。
自分の演技になり、花梨をセットする。音楽が始まれば自律で動作するので、コントローラーからの起動は不要だ。今年は優勝を目指して来ている。もちろんSキューブ制御と言う意味で、衣装では、負けているが演技では負けていない。
音楽は昨年と同じ、挿入歌。昨年と異なるのは、アニメ上、花梨の標準装備になっている二刀流のレイピアを装備している事。床体操の要素を入れた剣舞で演技させる。
本来ならこんな武器を持たせる事は出来ないがTD社に頼み込んで装備出来る様にデータベースに登録して貰った。僕のパーソナルID専用になっているので他の人は装備出来ない。
『剣を装着してるぞ!』
『あれで、演技するのか?』
そんな声が聞こえて来た。まあ、観てくださいな。
音楽が始まる。昨年はコーナーから開始したが今年は競技エリアの中心から演技開始。最初の軽くジャンプの入りは同じ、その後、剣を抜いてバレーダンス風の剣舞を舞いながらコーナーに移動して3回転スピン、剣を納剣、右手の剣を左腰の鞘へ、左手の剣を右鞘に、そして最初の大技、対角のコーナーへ向かいロンダートからの、バク転、伸身二回。二回目の伸身の着地直前で左右の剣の柄へ手を添える様にして着地と同時に抜剣。ステップしながら滞空時間の長い開脚ジャンプ。納剣し横方向へ流れる演技で向かい、コーナーから二回目の大技。同様にロンダートから入り、後方伸身一回半捻り、再度ロンダート、後方伸身宙返り二回半捻りで着地。前方開脚回転を行い、ステップしながら真ん中を経て次のコーナーへ移動。最後の大技。ここで抜刀。対角のコーナー目掛けて剣を高く投げ上げる。対角のコーナーへ向かいロンダートからの、バク転、後方伸身宙返り三回半捻り、連続して前方伸身宙返り二回半ひねり着地と同時に手を出し剣を掴み最後のポーズを決める。うん上手く行った。
一年ぶりのスタンディングオベーション。
『すげー技だな、あの剣をきっちり取るなんて』
『この演技、昨年のデーモン・ツリー超えてるぞ』
拍手の中そんな声が聞こえた。そうでしょう僕もそう思って居ますよ。えっへん。
採点表示が出て、観客から凄いブーイングが起こった。一応今の所トップだが圧倒的と言う点数でも無い。僕も、もう少し点数が出るかなと思っていたが、やはりCC社の採点は機械判定をしてるのだろう。衣装は減点対象から外れたようだが、剣を持ってる演技は減点対象になったようだ。
いつもの、インタビュアーさんが寄ってきた。
「チェンジ!」
「なんでですか? 樹くん」
樹くん? そんなに親しかったっけ? まあ毎年漫才してるからかな?
「あれっ、お姉さん、やれば出来る子ですね。偽乳ですか?」
「ち、違うわ、寄せて上げてるだけよ……(ちょっとパッドも入ってるけど)」
「いつもそうしていれば良いのに。彼氏も出来るようになりますよ」
「ホントですか、彼氏できますか?」
「ええ、その姿なら大丈夫だと思いますよ。でもチェンジお願いします」
「なんでですか!」
「まだ、足りないんですよ。僕にとっては」
「そんな事言わずにインタビューお願いします」
「判りました」
観客も、毎年の事だと思ってくれているだろうから、まあ良いかな。
「素晴らしい演技でしたね、すごく格好良かったですよ」
「有難う御座います。もう少し点数が出るかなと思ったんですがね。何が悪かったんでしょうね?」
「えーっと、剣じゃないですか?」
「ルールに剣を持ってはいけないって書いて無かったですよ。だとすると、やはり審査員が、白に飽きたのですかね三年連続ですし」
「なんの、話ですか?」
「パンツです」
「なんで、パンツが関係有るんですか?」
「関係ありますよ、審査員の好みを把握出来ていなかったのが敗因か……とすると、色はいや、デザインに問題があったのか? Tバックとかじゃないといけないのか?」
「そんなの、関係ないですよ。多分きっと、でももしかしたら……」
「お姉さん、今日のパンツの色は?」
「白ですが……って何言わせるんですか!」
「やはり白は正義のですよね。うーん。判らん。それでは」
「えええー! 待って下さい」
インタビュアーのお姉さんを無視してその場を離れる。花梨を抱えて向かう先は、先ほど、ナース服とセーラー服で好演技した高校生? 達の所。現時点で二位三位の二人。
「先輩。初めまして、杜樹です。ご一緒しても宜しいでしょうか?」
「ああ、構わないよ、僕達も君とは話したいって言ってた所だったから丁度良かった」
良かった、邪険にされなくて。
「僕が苦木憂、こっちが塩地 梓だ。よろしく杜樹くん」
「宜しくお願いします」
苦木さんは大学二年、梓さんは高校一年だそうだ。どっちも見た目がオカシイ……兄妹では無い様でした。
もしかしたら恋人同士かも。でも梓さんは、どう見ても小学生だし……もしかして苦木さんの趣味が……違法ロリ? それは不味いですよ、後三年待たないと、合法ロリになりませんよ。
梓さんは、かなりちびっ子で白のワンピが凄く似合ってます。僕より年下の幼女みたい。二人共Sキューブ花梨と胡桃を使用している。昨年TD社の大会のデモを観てTD社ブースで予約して購入したそうだ。でも届いたのは、十一月末になってからって言ってた。
「樹くんの演技は凄いわね、私より年下なのに、確実に昨年のデーモン・ツリーの演技を超えてるわね。私達も昨年デモを間近で観てたけどそれだけは間違い無いと思うわ」
僕の演技を梓さんが褒めてくれたので、素直にお礼を言う。
「有難う御座います。真似されていますからね、僕の意地です」
あー、嘘じゃないよね、デーモン・ツリーとしてパクったのは事実だよね。
「御二人共その衣装は自作か市販品ですよね、衣装データ御自分で作ったんですよね、凄いと思います。僕のはデーモン・ツリーさんの衣装データ使ってますから……」
「まあ、確かに自分達で衣装とシューズデータ作ってるのは事実だけど、デーモン・ツリーが公開した作り方を参考にしたから、そんなに大変でも無いよ」
誰でも簡単にと言う訳では無いけどスキルがあれば比較的容易にデータを作れる手法を公開しておいた。それを参考に作ったらしい。
「それよりも、デーモン・ツリーが公開した、床の反発力の調整方法の方が驚きだったわよ。あれは普通なら、モジュールアプリ化してお金取っても不思議じゃ無いのにそれもかなり高額で。私も、あのやり方を知らなきゃ、未だに回転不足とかしてるわね」
梓さんが言った通り、昨年のTD社の大会の後に、手法を公開した。プラグインアプリの公開にするか悩んだけど、手法ならば、他の人が別な手法や、自作のプラグインアプリを作成してくれると思ったし、Sキューブ制御プログラム開発者達のレベルアップに繋がって行くと思ったからだ。事実ユーザー作成のモジュールが幾つか公開されて来ている。フリーウェアじゃ無いのも有ったが特に気にしてはいない。
「衣装の話しに戻るけど、樹くんも作れるだろう。昨年のCC社の大会は、オリジナル衣装だったろ」
「まあ作れますがデーモン・ツリーさんのデータの方が正確ですね、それに最初から衣装データが有れば、楽ですから。それよりその衣装何処で入手したんですか?」
これは是非、聞いて置かなければいけない最重要情報だ。
「TD社の大会行った事有るかい?」
「ええ、昨年僕もデモを見るのに行きました」
「じゃあ樹くんも、知ってるんじゃないかな。ショップが出ているホールの端の方にピンクのお店が有っただろう。そこのネット通販で入手したんだよ。梓ちゃんの分も僕が購入したんだ」
な、なんですと。あの店ですか。
「知ってますが、入ったら『まだ早い』って追い出されました」
「まあそうかもな、お店事態はR-15だし」
「残念です。パンツならお小遣いで買えると思ったのに、R-15だと買えない……」
女性の前だけど、許して貰おう。お金は有るんだけどね、でもセーラー服とかナース服とか買うのに、TD社から貰ったお金使いたいって言ってもダメだろうし、拳骨(父)は無いと思うけど、包丁(母)が出そうで怖い。
「樹くんは、TD社の大会には出場するのかい?」
「ええ、ワイルドカード頂いたので、エントリーしています」
「僕達は、エントリーして無いんだ、こっちは予選免除だったから出場したけどね。でも観戦には行くよ。良ければ僕が、パンツ位買ってきてあげるよ」
マジですか! 苦木さん、神様のような方だ。やった、これで新パンツが装備できる。
「是非、お願いします」
さて、どんなパンツが有るんだろう…お金も用意しておかなきゃ。
「パンツ一枚いくら位なんですか?」
「うーん、物にもよるけど、僕の縞々水色は¥300だよ。梓ちゃんのはちょっと高いな¥800するから」
「結構な値段ですね、あんなに小さいのに」
「樹くんも衣装作った事があるなら判るでしょ、人間と同じ素材で作るとSキューブには布が厚く感じるのよ、当然フワッとしないし、凄い薄い素材が必要になるから高くなるのよ」
「そうですね、僕も結構苦労しました、糸も極細にしないといけないんですよね」
「そうよ、衣装は素材探して来れば、まだなんとかなるけど、パンツの自作は難しいのよ」
「そうか、そうですねパンツは本物もって無いから作り方判んないし…」
「私が居る前で、堂々とパンツの話しをする樹くんも凄いけどね。まあ、インタビューでもしてるから今時の小学生の男子はこんな感じなのかもしれないけど」
「ごめんなさい」
「別に良いわ、人形用だしね」
「そういう梓ちゃんだって、白ナースだろ。高校生で何処目指してるんだ?」
「その方が萌えるでしょ。ねっ樹くん?」
「えっと、僕はどっちでも…でも、白のレースは、ドキッとしました」
「ほらっ、今時の女子高生が、シマパン穿いてると思うな。バカ苦木、変態苦木、ロリ苦木」
「いや、定番だろコレは……バカは良いけど、変態とロリは止めてくれ。梓ちゃんが近くにいるだけで、変な目で観られて疑われてるから」
「苦木さんはね、一昨年の大会の時、私をナンパして来たのよ。変態でしょ」
「苦木さん、それって危なくないですか、色々とロリロリで」
「いや……事実だけど、話しを捏造しないでくれ。梓ちゃんが、ずっと僕のこと睨んでいたんだよ。だから理由が知りたくなったんだ。それと手招きしたのは梓ちゃんだろ」
「苦木さんも見てたでしょ私の事を」
「まあ、それは否定しないけど、気になったからね」
「ほらっ色々とロリロリ苦木なの」
一昨年だと僕も予選から出ていたけど、気付かなかったな。でも今このレベルになってるんだから凄く制御が上手くなって来たんだろうな。それに何かこの人達凄くフィーリングが会う感じがする。
「えっとパンツの値段は判りました。五,〇〇〇円位用意します。後は当日どんなのが有るか教えてください。沢山は要らないですが拘りたいです」
「流石だな樹くんは、拘る所が判っている。先ほどのインタビューもそうだが昨年の揺れへの拘りも中々だ」
「有難う御座います」
「私の前で胸の話題はするな!」
こそっと苦木さんが
『貧乳だからな気を付けて会話しろよ』
『ハイ、判りました』
「なにコソコソ話してるの、私はこれから成長するんだから」
「ハイハイ」
真面目なパンツ的会話(本人達にとっては)をしながら演技を眺めていた、残りの演技者は、4人となっていた。今の所は、ここに居る三人がトップスリーだ。
よろしくお願いします。




