パジャマパーティのお話
………
「コウヤ」「ノエル」
「…」
「コウヤ♪」「ノエルっ」
「…」
呼び合う二人に、ぴく、ぴくり、とアリシアの眉が反応している。ーーしかしながらそれに二人は気付かない。
「コウヤっ」「ノエル〜」
「…」
「コウヤ!」「ノーエール〜」
「…」
今日も猫の足跡亭。
現在ノエルとコウヤは、“ひたすら互いの名前を呼び合う”という遊びを実行中である(提案者はノエルだ)。
何故このような益体も無い事をしているか、というと、まあその場のノリだったりするのだが…
「コウヤ?」「ノエル!」
「…」
「コウヤぁ!」「ノエルぅ!」
「…」
「コウヤ…」「ノエル…」
「…」
…だんだん熱が入ってきたらしい。
「コウヤ……」「ノエル〜?」
「…」
「コウヤあっ!」「ノエルー!」
そして二人はひし、と抱き合った。
それに対して、ぴくく、とアリシアの眉がひきつり切って…遂に、
「ちょっと二人ともー!」
爆発したのである。が…
「えっ?」「ん、どした」
「…」
二人は至って…普通なのであった。
「〜〜!」
「ちょっ、痛いっ! なにす、ぶっ」
「あわわ」
思わずコウヤに八つ当たりしてしまうアリシアだった。
………
「むううううううううううううう!!!!!!」
二人が退散した後も、アリシアはその場に居残って唸っていた。
べたべたいちゃいちゃらぶらぶしちゃって!
それがアリシアはなぜだか面白く無い。
なぜだか。そう、なぜだか。
なんか良く分からないけど、それを見てしまうと何というか、胸がムカムカとして居心地が悪くて、それでいてなんだか寂しいような悲しいような。
それはそう、心が冷たい冬の風に吹き晒さらしにされるような…
「…」
ん?
アリシア、今ので何かヒントを掴みかけた気がする。
「……、」
もう一度とっくりと考えてみて、そしてそれに行き当たった彼女は…
「…!」
今日一番の笑顔になった。
* * *
そしてしばらくして、
「「「パジャマパーティ?」」」
「そうだよ? これから冬の寒さが深まろうと言う中、各の温もりを皆で共有しようではありませんか!」
「「おおー」」…おお」
集めた皆の前で口上をぶったアリシアである。
「ふふふふーん」
今回の作戦であるが、アリシアはかなりの自信をもっていた。
この口実であれば、合法的にコウヤとぴったり一晩過ごす事が出来る!
…違法が何かは分からなかったが、とにかくそのような理屈である。
(見てていらいらするなら自分もやっちゃえばいいんだよっ)
かしこいアリシアだ。
「もうルクレシアさんやターシャちゃんには断り入れてるもんね!」
「相変わらず行動力はあるなー」
「むふふん? 今日から私は行動力だけの女ではなくなるのだよー」
「なんだよそりゃ」
「なーいしょ!」
それを考えていると、アリシアは微笑みが止まらないのである。
使用する場所についてだが、今日は空いてるダブルの客室があるのでそれを使わせてもらう事にしている。
「それではー? パジャマパーティ大作戦、スタートぉ!!!」
「「「おーうっ!!!!!」」」
………
それからずっと、皆で色々な遊びをしたりしながら、壁の時計は今は夜の十時を指しているのだが…
「…、」
「♪」
ーーなんか、近い。
コウヤはふと、思ったのだが、物理的な距離にしても、精神的な物にしても、今日はなんだかアリシアが近いのだ。
「……」
思えばウノをやっている時もそうであったし、その後のお菓子を景品にしたじゃんけん大会の時も、なんとなくで始めたおままごとの時もそうであった気がする。
そして今この瞬間も、隣にいるアリシアは自分との距離を詰めようとしてきていて…
「………」
「? ?」
アリシアのくりくりとした大きな瞳がこちらを見ていた。
「………、」
まあいいか、とコウヤは思った。
「おかわりしようかな♪」
「…私もっ」
「ボクもそうする!」
「んじゃ俺も」
皆が飲んでいたのは、マシュマロを入れたホットココアである。
マシュマロの柔らかな甘みがほんのりと感じられて…オツなのだ。
「戻ってきたらお布団の中に入っちゃおうよ!」
「「おう!」」…ん」
「むふふーん! …でもその前にい♪」
「「「?」」」
アリシアは、みんなの目をしっかりと見てから、
「今ここに、我々の絆は不変である事をっ、我が鉱山愛好部は永久に不滅であることをここに宣言したいと思います!! そしてえ!」
すぅ、と一拍吸い込み、
「コウヤはみんなの物!!!」
「うん!」…んっ」
「ん?」
分からないコウヤだったが、しかし楽しいのは嫌いじゃない。
「ねえコウヤ」
「なんだよ」
「…コウヤっ」
「なんだってーの」
「コウヤ♪」
「だからなんだって」
「えへへー…」
最後に、アリシアは満面の笑みで、
「呼んでみただけ!」
〈了〉




