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大解析! 猫の足跡亭のひみつ の話







「ふわああーっと」


この物語の主人公である小田桐コウヤだが、そんな脱力ともつかない声を出しながら階段を下りてきたのがたった今だ。


「大丈夫コウヤ君? 後でハーブティー飲もっか」


気付いたレイチェルがそう声を掛けた。


やくそうを使ったハーブティー(効果:滋養強壮・体力回復)はレイチェルの自慢の一品であるのだが、


「あっ、え、遠慮します…」


「そう?」


…風味が独特で人を選ぶ。


「ふーむ」


それはそうとして、階段を下りきった所でコウヤは考えに唸った。


今この瞬間も、自室で一人で居るのにつまんなくなったのでここへと降りた所だった、のだが…


「むむむ…」


降りてきた広いホール・スペースはこの猫の足跡亭の中枢といえる場所で、主に食堂として機能している。

階段下のここからはそんな全景が見渡せるのだが、とにかくまあ、そんな訳で人が集まる。


時刻は六時、二十分。ーー書き入れ時である。


見てみると、カウンターやテーブル席は、二階の寝室から起きてきた者や、食事だけを取りに来た者ーーこの宿屋は一般にも食事を提供しているのだーーで賑わっていて、その中にはコウヤの馴染みも何人かちらほらと居た。

そしてアリシアだが、常連さんの間に入る形で、カウンター席の中央で置物になってテレビの虫になっている…


「ふむむ、」


昨日も楽しかったし、暇そうな人が居たら今日もウノの相手にでもなってもらおうか、と考えていたが…残念な事に皆食事やそれぞれの事に夢中だった。


こりゃ今日は諦めるかな、とコウヤは思ったのだが、


「…」


果たしてこの猫の足跡亭であるが、コウヤは中々に気に入っている。


レイチェルの存在は言うに及ばず、美味い料理に美味しい会話。人で賑わっているその活気…と、気付けば自分もその虜になっている様な気がするのだ。


さらに鉱山ギルドの一員で有れば、その魅力は何倍にも高まるだろうと思う。ここの常連の殆どは鉱山関係なのである!

コウヤの仕事上の人間関係も、振り返るとここで知り合ったのが初めて、と言うのが少なくない。…それほどであった。


「レイチェルさーん、今日の晩ご飯なにー?」


「今日は鶏の唐揚げよ♪」


「やりぃっ!!!」


そしてコウヤ達の晩ご飯であるが、店の混雑時を避けて七時頃に食べるのがいつもだ。


レイチェルは何でも作れるので、コウヤはレシピを教えて故郷の味を食べさせてもらっている。

モノによっては店でも出され、例えば鶏の唐揚げ等、そのまま人気メニューになった物も結構多い。


説明を続けると、ベッドルームが集約している二階については、客室数は十六、内訳はダブルが六でシングルが十。スイートは無いが毎朝のルームサービス付き…



「いけ! そこだ!! やっちゃえーっ!!!」



…聞こえてきたそんな声に振り向いてみよう。


「いいぞ、そして必殺のマジカルスープレックスだーっ!!!! …おおおおーっ」


歓声を上げているアリシアが今、魔法少女アニメ『きらめき! トゥインクル・スターSuperRainbow』を見ているのがこの猫の足跡亭で一台しかないテレビである。


入るチャンネルは国営放送が二つ、民放はローカルも含めると八つある。


…本来はホールで食事するお客さんの為にあるのだが、毎週この時間帯はスーパーアリシアタイムになるのだった。


「う〜む、今回も良かったよ!」


そしてしばらくしてアニメが終了し、


「お電話借りるね!」「いいわよーっ」


レイチェルにそう告げると、彼女は電話ーー猫の足跡亭に一台しかない、薄いピンクの公衆電話ーーにダッシュ。


投入口にコインを入れて、どこかへとダイヤルして…どうやら友達と、早速この最新話についての意見交換の様である。


開口一番、今回の作画がどうだ、声優(西友、ではない)の演技はどうだらと会話し始めたアリシアに、素質が有るな…と静かに目線を向けるのが毎度のコウヤだ。


「それじゃあ、またねっ」


五分ほどして通話が終わって、それからのアリシアはと言うと…


「アリシアちゃん、おっちゃんのサンドイッチ食うか?」


「いやいや、俺のポテトフライだぞ」


「いーや、おらのサイコロステーキだ!」


「あ、あはは…」


アリシアはここの常連のアイドルであった。

故郷に家族…特に幼い子供…を残してきている鉱夫や冒険者のおっちゃん達にとって、アリシアはそんな寂しさを埋めさせてくれる良き存在なのである。


「こ、コウヤーっ!!」


おっちゃん達に迫られて、とうとう悲鳴を上げたアリシア。


その目前に置かれたプレートには、これまた食べきれないほどの山盛りになった料理が寄せられていた。


「…にひ」


…自分もおこぼれに預からしてもらおう。


そう思って、コウヤもカウンターの賑わいへと足を向けたのだ。

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