幕切れの話
…場所は変わって、猫の足跡亭。
「やれやれ、散々な旅行だったぜ」
「結局殆ど遊べなかったー…」
「ううううー」「…んん」
帰還したコウヤ達はようやく休みらしい休みの時間を過ごす事が出来ていた。
旅行であったが、ツアーが三日間なのに事件に二日取られてしまっては何にも出来ず、結局残った時間はというとホテルに籠もってひたすら食い放題するしか無かったのだった。
そんなこんなで帰ってきたのが昨日で、そして訪れた、冬の休日…
「…んう」
皆がレイチェルに注文をとる中、一人コウヤは、
「…、」
持ってきた新聞を広げてみる。
ーートランスヴァール・スキャンダルーー
見出しにはそう書かれているようだ。
「……」
本来取り締まる筈の警察と、跋扈を続けた盗賊団との癒着という世紀のスキャンダルは、遠く離れたこのトリエステでもニュースになっていた。
話で聞くには、あの悪徳警部と盗賊たちは北の監獄に収監されて、当分暖かな外界に出ることは叶わないそうらしい。
全容の解明には時間が掛かるそうだが…果たしてそれは叶うかどうか。
ーー余りにも多くの人間が関わっていて、多くの傷跡が残された。
それだけでも困難にさせる物であるのは確かだろう。
そして…
「あーあ、フェリアちゃん心配だなー」
「きっと大丈夫さ。しっかり…はしてないかもだけど、レイラさんがついてるしさ」
「そうだろうけどさー」
フェリアが女、だと言う事はいずれ公表するつもりらしい。
そうすれば、いよいよ〈彼女〉はくびきから解かれ、本来の自分の、新たな人生を歩んでいく事になるだろう。
「…………」
そうなる事が果たして本当に良いことなのか、コウヤには分からない。
でも、
「ーー大丈夫!」
「ん?」
…ノエルである。
「だってねえー」
「「うん」」
一拍、置いて、
「だって、ボクたちの友達だもん!」「…んっ」
「おお!」「…それもそっか!」
しかし、自分達に出来た大事な友人の前途は全力で祝福する! それが、コウヤ達流であったのだ。
その時は是非とも自分たちみんなで祝いたい。その旅行の為に、今の内から貯金を始めておこうか…とコウヤは思っている。
「それとねっ」
「「お?」」
ノエルは続けて、
「これっ!」
「「あああー」」…ああ」
そして手元から出したのは、フェリアから頂いた、プレゼントのチョコレート・セットだ。
帰ろうとしていた旅行の最終日、彼女の代理人が自分たちの元に持ってきてくれたのがこれだったのだ。
外装は豪華な金の色紙でボックスが作られていて、まだ開けていないその中身が何とも気になる所であった。
「開けて見よっか!」
「うん!」「賛成!」「…んっ」
アリシアの言葉に頷いて、四人はその封を開いた。
すると…
「「「…あっ」」」…おお」
…手紙が入っていた。
「これって…」
「フェリアちゃんからだよ!」「うーむ」
コウヤが手にとって、二つ折りになっているそれを開いてみると、そこには短く言葉が綴られている。
「なんて書いてあるんだ?」
「…これはねー」
言ってみよっか、分かった! …んっ と頷き合う三人。
「それじゃあ、いってみよう!」「うんっ」「…んっ」
「…」
「「「せーのっ」」」
「「「『ありがとう』!!!!」」」
「!」
…フェリアからの感謝の言葉。
それはコウヤ達にとって確かなプレゼントになったのである。




