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機甲見聞録1.0  作者: もにもに+マウンテンヘッド
トランスヴァールの午後
PR
86/93

決着

     * * *





「…行くよっ」


その合図に〈パラディン〉の右手がサムズアップを返した事を確認して、少女はロープを離した。



…大荷物を手放した後の、投下し際の機転…


空に一瞬、翼を生やした少女の、天使の如きシルエットが閃いた。…次の瞬間、


《うわぁ!!》


《ぎゃあ!》


地上の野党達に向かい、猛烈な魔法弾の連射が降りかかった!


連続する爆発、桁違いの威力が野党達を襲う!!


そして数度に渡っての薙ぎ払う様な猛撃の後、爆撃を終えたリリスはルクレシア達を助ける為に次の目標へと空を駆けていった。…そして、



《…ーーっ、あれは!》


気付いた盗賊の一機が望遠で視認したその向こう。


そう、ヴァリアントが、その少年がこの戦場に降下したのである。


「…!」


ーー着地ダイブした瞬間、衝撃で雪の柱が立ち上った。


そして二本の轍を、爪の様に立てたその双脚によって雪面に深く刻み付けながら、斜面を滑る白亜の機体を少年は立て直して……直後立ち上がらせる。




雪が降り注ぎ始めた空と地平の狭間、




…決戦場たる館に向かい、そのヴァリアントは出撃したのであった。



《…白いヴァリアントっ!》


「「コウヤ!」」


無線のレイラのその言葉に、アリシアとノエルの顔が眩く輝いた。






《クソ、どうしたってんだっ!》


《え、エース級の魔導士がまた一人増えて…》


《動じるんじゃない!?》



一方その頃の盗賊たち。


彼らはその内の、レイラ等と交戦中の味方に増援せんと前進していた四機の〈バレン〉である。


…盗賊たちのそのヴァリアント〈バレン〉であったが、今は爆撃によって高く吹き上げられた雪煙の中。未だ混乱の中に居るが、なんとかリリスによる第一波攻撃から立ち直りかけていた。


《チクショウ、クロスボウが有れば撃ち落とせたってのによ!》


《き、肝ぁ冷やしたが大したこたあ無かったなっ!?》


《へ、へへへ、俺たちゃつくづく運があるぜっ》


《同感ですぜ兄貴ぃっ!》


残念な事に黒マギダイト製のヴァリアントは、衝撃を除いて、いかなる魔導士の魔法に耐えうるのだ。


ーー魔法に非殺傷設定がなされていなければの話だが、生身のままならば肉色の花となって雪面に咲いているだろう今の攻撃にも、…そして本来なら凄まじい衝撃波に、諸共昏倒している筈なのにも関わらず、ヴァリアントたる《バレン》に搭乗する彼らは無事であった。その事に盗賊たちは無邪気に喜んでいた!


……これというのが、少年に獲物を残しておこうと言う少女リリスの残酷な遊び心の結果だとは露知らずに。



《ええい、それよりもヴァリアントだ! ヴァリアントを捜索しろ!!》


《わ、わかりやしたぁっ》



しかし、彼らがそれに気づく事はなく、最大の注意は相手がヴァリアントを投下していった事に向けられた。


…爆撃が浴びせられるその一瞬前に目撃した、飛行する魔導士から白いヴァリアントが投下されるその瞬間!

自分たちを邪魔したあのポーターキャリアや、獲物の金持ちの娘との関係性は不明だが、しかし、しかし、



……ヴァリアントと魔導士の戦力差は圧倒的である。


エース級でも無い限り、魔導士が一人増えた所でさした問題にはならないのだ。だがヴァリアントなら別だ。

ヴァリアントを倒せるのはヴァリアントのみ。即ち脅威なのだ…


しかし、自分達は十二機もいる! 


相手が新性能ヴァリアントならば、という冗談は置いといても、自分達が相手を圧倒しているのは自明なのだ。

なのならば、各のその関心事は如何に仲間を出し抜いてそのヴァリアントを倒し、自分の手柄にするか、という事へと移るのである。



そして、そのヴァリアントが、前方の、自分たちとそう遠くない距離に落ちたのは確かだった。


……しかし、真っ白に視界を包んでいる雪の煙はまだ消えそうに無い。


だが、


《ーーき、機影目視!》


ようやくヴァリアント達を包む雪煙が落ち着いてきて、その晴れ間から野党の一機がそう遠くない距離にヴァリアントの影を見つけた時、


《確認します! 機種は……》


自動調整によって機体の望遠がズームされる…白い闇の中に、そのシルエットを確認。


《あれは……》



雪の粒子が輝く中、男には、相手のその真っ白な機体がやけに輝いて見えた。



だが、その特徴的なディテールを。ルクドニアの男なら誰もが一度は憧れるだろう、その騎士王の姿を、男は見間違える筈は無かったのだ!


……直後、彼らはあり得ない恐怖に凍り付く事になる。


《ーーぱ、パラディン・タイプっ!?》


《!》


ーー発せられたその言葉に、野党達に戦慄が走った!








「ふうう…」



……一方の、〈シロガネ〉。


コウヤが雪上に慣れていない事もあって、一歩づつ雪面から足を抜くようなその足運びはやや鈍い。…が、機体の出力任せで強引に走る事で、ぎこちないながらも着実な前進を始めていた。


「あー…少しションベン漏らしちまったぜ」


ーー音速の空中散歩は流石に少し堪えたらしい。


まあ、リリスには適当な所で降ろして貰うように言っておいたのだが、それが功を奏したのか、自機が降下したポイントはレイラ達に向かう増援の、まさに目の先と言う場所であったのだった。


「ふーうむ」


そしてコウヤは、一機づつ、睨むように敵機を確認して行く。


「悪党共が雁首揃えて、ねえ」


館の周りの、真っ白の大地に、空から確認できたヴァリアントのシルエットは合計十二で、その内現在、当機の戦闘機動範囲の中にいる機体は、…まずは四機。


「さあてと、本番だ!」


一気に機体を加速させる。


距離感を見失う様な白い稜線の上で、目に見えて狼狽えているらしき一個分隊相当のそれが、無情にもいよいよ交戦距離に入った事でコウヤは機体を身構えさせた。



《わああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!?》


《く、来るな、来るんじゃねえっ!!》


《ヒィッ》


《ぱ、パラディンが、パラディンが!》



「むふふふふ」



通信から聞こえてくる相手達の阿鼻叫喚に、コウヤはすっかりウサギ狩りの気分であった。


ーーしかし、会敵の瞬間、



《ーー良く見りゃ野郎、武器を持っていない!?》


《!》


…その野党の発見に、彼らの空気が変わった。


《へっへっへ…》


《い、如何にパラディンと言え、武器がないんじゃあなあ…!》


「…」


…静止し、一瞬の刹那。そして、


《無手のヴァリアント一機、何とでも!》


《! 待てっ》


そう言って野党のヴァリアントの突出した一機が無武装の〈シロガネ〉に肉薄して、




《そりゃあああっ!》



「ひええ、やられるーっ!?」





…取り付こうとした、




次の瞬間、







「…ーーと、見せかけてっ!」



《あっ?》




               ・・

ーー兵装トランクから格納状態のそれを取り出し、




「…ーーーっ」


一閃!




《な、がぁ!》



   ・・

一瞬の攻撃に野党のヴァリアントは弾かれ、そして擱座するしかなかった!


目にも留まらぬ一撃を見舞ったコウヤである。…そして、



《今のは!》



示すように横に振り払った〈シロガネ〉のその手には…




《…なんだあれは》


《と、特殊警棒!》




「素手と見せかけておいてね。驚いたか?」



その反応にニヤリとするコウヤ。


ーー〈特殊警棒〉ーー


これというのは、自身の異様な事件遭遇率に頭を抱えたコウヤが、自衛のため携帯する様になった新兵器である。


その獲物を見せつけるようにくるりと回して、そして構えた。



「さあ…どっからでも掛かってきなさいっ」



《ほ、吠え面かかせてやるぜえ!》



円を描くように取り囲んだ野党達のヴァリアントを相手に…コウヤの殺陣が始まった。




「…」


…それを盗賊の頭はオペラグラスで覗いていたのだ。


「畜生、援軍って訳かい…おい!」


《はっ、何でやすかお頭!》


「あんた達も加勢してきな、小娘の方はあたしが止めを刺す」


《わ、わかりやしたあ!!》


そして手勢のヴァリアントがこの場を離れ掛けた…


《! ぐわぁっ!!!》


「! 何っ」


瞬間、ヴァリアントへ空からの魔法弾の攻撃が飛来してきた!


「あああなんてこったい、畜生!」


直撃を受けたヴァリアントは擱座して完全に沈黙し、そして尚も続く攻撃は盗賊の頭の直近にも降りかかる!


「クソッタレ、迎撃しろ!」


衝撃にオペラグラスを飛ばされた盗賊の頭が怒りでそう怒鳴り散らすと共に、手勢の魔導士から上空の少女へ猛烈な魔法弾の弾幕が撃ち上がったのはその時だ。




ーーだが、…その程度で動じるリリスでは無い。



「…っ」


翼をはためかせ一気に増速して、優雅とも言える動きでリリスはその対空砲火を掻い潜った。

そしてそのまま飛び込む様に降下すると、丁度直下にあったーーそこへと目掛けてきたーー、機動するポーターキャリアの荷台へと着地したのだ。


「リリスちゃん!」


「ルクレシア…おまたせっ」


出迎えたルクレシアに、確かな微笑みを返したリリス。


そして向き直り…ーー隣に立つルクレシアと共に、魔法を詠唱…まずは相手の野党達に、百倍返しの反撃の応射を仕掛けよう。



「「〈高速攻撃魔法・最大〉…」」


そして準備は終わって、


『…ーーファイアっ!!!』


刹那、壮絶な魔法弾の弾火が放たれた!



「「ぎゃあああああああっ!?」」


…一秒につき九発の速度で発射される速射魔法の火線。

通常の収束魔法よりも威力は格段に落ちる筈が、リリスの圧倒的な魔力によって下手な殲滅魔法よりも強力となったそれ。


暴風の様に飛来し直撃していくそれにより、盗賊の頭と警部の断末魔も掻き消える中、その痕に何も残さないかの如くの勢いで蜂の巣に耕していったのだ。



そして最後、



ーー爆発!!!



「よく出来ましたね、リリスちゃん?」


「…ん」


轟く爆炎にその横顔を照らされながら、二人は頷き合った。


そして…


「あなた達? ああなりたくなければ大人しく戦闘を止めなさい」


何をやったと言う訳ではないが、利口な警官達は、何が起きていたのかも分からない内に降伏した。






………








そしてその頃のコウヤである。





新性能ヴァリアントたる〈パラディン〉型に比し赤子同然の〈バレン〉との戦闘。


…ーー悪鬼の如き所為であった。


殺陣が終わり、残った野党のヴァリアントと対峙する〈シロガネ〉の周囲には、撃破されて様々の姿で擱座したヴァリアントが雪中に伏していたのだ。



「さあて、まだ戦うか?」


《ま、まだ俺たちの方が数では勝ってる!》



その言葉の通り、野党のヴァリアントはまだ八…七機残っている。


既に倒し掛かっている目前の一機を除けば、後はレイラの加勢に行くのみである。…だが、


《あっ、兄貴ーっ!!》


「ん?」


目前の野党が断末魔を上げた後、ーー直後響いたロックオン警報。


コウヤが顔を上げると、先程援軍に出た四機の〈バレン〉がこちらに到着しようと言うタイミングだった。


「数が増えてもねえ」


《! その声はあの小僧かっ》


「だったら何だってんだ?」


《真冬に一晩放置された恨み、ここで晴らさずかあ!》



次の瞬間、走行する四機の〈バレン〉の一機から、魔法弾の軌跡が煌めきと共に数発打ち上がった!


「!」


…どうやらその〈バレン〉の一機には、操縦者の他に魔導士が二人乗りで乗り込んでいるらしい。


「ぐわっ!」


ー…連続する衝撃。


〈シロガネ〉の直近にかなりの精度で魔法弾は着弾していき、そしてその機体が立ちすくんだ間際、ーー展開した〈バレン〉達は肉薄を開始した。


「くう…っ」


《この連携に適うか!》


「へっ」


接近を進める盗賊達のヴァリアントは最後に剣を抜き放ち、こうして、コウヤの〈シロガネ〉とレイラの駆る〈バレン〉との間は完全に切断されたのである。


「レイラっ」


《人の心配よりも自分の心配をしなさい!》


…ーーそして戦いが始まった。


「そらよっ!」


《ぐえええっ!?》


《ぎゃぶっ》


手近な一機へ直角に体当たりを浴びせながら、もう一方の一機に警棒の一撃を浴びせたコウヤ!


《こ、こうだ!》


「おっと」


振りかぶられた剣の一振りも軽やかにかわし、返す刀で戻し掛けたその剣をコウヤはがっ、と掴むと、


「そうらいっ♪」


刀身にパンチを一発! ーーすると剣は割れて、バラバラに砕け散った。


《なあっ?!》


〈パラディン〉の出鱈目な性能に慄く野党。…そして次の瞬間、


「ほわたあっ!!」


《ぎゃあ!》


切れの良いナックルの連打を浴びせてやって、まずは一機を撃破したのだ!


《つ、強いっ》


「シロガネだぞぉっ!!!」


気分は隻腕のMAパイロットである。



…そしてそんな時、


《後ろのフェリアは寝ちゃったわ。…少し愚痴らせて貰っても良い?》


レイラからであった。


「ん? 何を言って」


《……ルーベルラウトは呪われている。断言できるわ》


「…」


《華やかなるルーベルラウト。その家の者が立つ舞台が、どれだけの血と怨念で塗り固められているかご存じかしら?》


「……」


《私の両親、流行病で亡くなった…って事になってるけど、本当は違う。ルーベルラウトの当主を守って殺されたのよ》


「っ、どういうっ」

          ・・・

《私の血筋はそういうさだめなの。そして私は…それには不満は無い!》


「!」



…戦闘が烈しくなる。



《今日のこの事だってルーベルラウト家の当主…この子の父親は知っていた。でも何もしなかった、出来なかった…あの人は無力だから、周りが流すようにしか流されないの》


「それって…」


《分かるかしら…この子は見捨てられたのよっ》


「っ!」


《…この子の健気さが報われる事は無い。それを理解した時、私は怒りよりも嫉妬の感情が先に来たわ》


「…」


《家族だもの。一方がどれだけ腹の中で裏切り続けようとも、この子は尚も信じ続ける!》


「……」


《……私はこの子に報いさせる為に立っているの》


「………、」


《今さえ、これさえ凌げば…!!》


「…あんたは一人で戦ってたんだなっ」


《同情よりも力が欲しいわ!》


「力はあんただ!」


叫ぶコウヤ。


「っ!」


その時、飛来した魔法弾。

着弾した端から、雪の柱が連続して立ち上って行った!


「なんだっ」


…身構えた視線の先。そこには一体の〈バレン〉ーーあの、魔導士が乗り込んでいるヴァリアントだーーが、倒れそうになりながらも最後の力で立っていた。


そのコクピットハッチが開けられた背部では、今までに無い規模の、魔力のパワーが増幅される閃光が光っていた。


《へ、へへっ、俺が出せる最大の魔法だ。…ーー覚悟しろ、〈パラディン〉!》


「くっ」


殲滅魔法が放たれようとした…その時。


「…」

         ・・・・・

そんな動きの止まるおおまぬけな様を見逃すリリスではない。


ーー収束魔法による狙撃。


最初に威力が無く、色付きの高速魔法弾による一発を放ち、それが着弾し弾けた刹那…ーー


《あっ?》


「…‥っ、」


…放たれた本命の魔法撃がピンポイントで吸い込まれて、そして〈バレン〉は爆発した!


「おお…」


余りの威力に、吹き飛ぶとかもなくその場で立ち尽くしたまま爆炎の中で沈黙した〈バレン〉。


「…私が居ないと、危なっかしい」


「へへっ、サンキュっ」


そのコウヤの感謝に、リリスは照れた様に顔を背けた。


《青春映画みたいで余裕綽々ねっ、そんな事してないで目の前の敵に集中なさいっ!!》


「余裕ぶってるなら当たり前さ、俺たちは時間稼ぎをしてんだからな!」


《!? 何を言って》


「右側方、来るぞっ!」


《ちぃっ》


互いに打ち合う〈コウヤ〉と〈レイラ〉。




「…そろそろ来る頃合いですね」


「ですわね」


頷き合うターシャとルクレシア。




「つ、つかれたーっ…」


「ううーっ…」


すっかりぐったりとなったアリシアとノエル。




「……」


そして空の彼方を見るリリス。



…刹那。




ーー……




《…ん?》


…鳥の鳴き声が遠くに響いた気がして、誰かが空を振り向いた瞬間。東南の方角から、綺麗な五角形で空を進む点のような影が五つ。

                               ・・

それはゆっくりと、しかし確実にこちらへと近づいて来ていて、尚も編隊を保って前進する姿は自然現象とかそういうのでは無い事を見る者に実感させる。


不可思議なそれの登場に、繰り広げられていた戦いも思わず止まった。


《…なんだあれは》


「騎兵隊のご登場、って所かな?」


その正体を知らされているコウヤはほくそ笑む。


…先頭の、比較すると小さな影は、隊を先導するエスコート役である翼竜・ワイバーン。後方の大きな四つの影が彼らの主役である。


尚も接近する編隊。


そして地上のコウヤ達を通過しかける距離になって、その正体が分かった。

…空に瞬くのは巨鳥類〈アルバトロス〉の影だ。


その数、四つ。


翼を広げた状態での全幅がおよそヴァリアント十機分に相当する巨大な鳥のシルエットが、このルーベルラウトの別邸の遙か上を悠々と横切っていく。

そして館と影が交差した直後から、さらに小さな黒い点のような物がその航跡から吐き出されていく…



コウヤ達を除くこの場に居る全ての者は、それをただ呆として見ているしか無い。




そしてしばらくして、“黒い点”のその全てが空中に展開し終えた時。意志を持って徐々に降下しているそれらの正体を見抜ける者はどれだけ居るだろうか?


《…あれは!》


ヴァリアントに乗っている者ならば機体の望遠で確かめればいい。ヴァリアント〈グスタフ〉で構成される精鋭のパラシュート部隊だ。


精強で知られるトランスヴァール軍。その中でも猛勇でその名を轟かす第131空挺連隊から選抜された三個小隊が、今回の任務に参加していた。




「と、トランスヴァール軍」


「軍のヴァリアントが何故ここに!」



「レンヌヴィルと親善関係にあるトランスヴァール王家の勅命を受けての作戦よ。もう貴方達の領分じゃ無くなったの」


慄く警官達へ冷静に告げるルクレシア。



「…あ、あんた達は一体何者なんだ」


「ふふーり」


そんな声が挙がった頃、荷台にはターシャがノエルを連れ出て来ていた。


「お見逸れあれぃっ!! ここにおわす方は何を隠そう、紋章国レンヌヴィルの第二皇女であらせられるノエル・レーエンヴェルト・ウェレスシアその人にあるのだ。皆の者頭が高いっ、ひかえおろー!」


「ひかえおろー!」


口上を立てたターシャに、万歳をして賛成したノエルである。



『なっ、何ーっ!?』



驚愕と愕然と戦慄がない交ぜになったような、悲鳴のような絶叫が上がったのだった。



《ど、どういう事…》


「よーするに、俺たちを敵に回したらとんでも無く怖い目に遭うって事さ」


コウヤはにっと笑った。



…降下する三個小隊の〈グスタフ〉に威圧されて尚、戦闘が出来る根性のある者は盗賊達には居なかったらしい。


《第一分隊降下終了。展開、開始!》


既に降下を終えた機体も出始めたので各が武器を捨てて降伏する中…



「ぜい、ぜいっ、全く、いったい何なんだい…」


「わ、私だって分からん。まるで全てが悪夢のようだっ」


…復活した盗賊の頭と警部は二人だけで脱出を試みていた。


「あとそろそろで正門だ…うぅっ」


「ひぃ、ひいっ…年寄りは労る物だと「誰が年寄りだって!?」い、いえ何もありませんっ」


すっかりヨボヨボとなるしかない二人である。…そして、


「! あ、あれはっ」


「おおっ」


そんな所に一台のポーターキャリアが走ってきて、そして目前で止まった。


「う、運転手の方、頼むから乗せてってくれーっ!」


「お、お願いだよ、あたしゃもうへとへとだよー…」


「…」


それを聞いたドライバーは、ゆっくりとウインドウを下げた。すると…


「あ、あんたは!」


その顔を見た盗賊の頭は慄いた。


運転席のその人物は、蚊を見るような目でこちらをじっとりと見つめるターシャの姿だったのだ。


「た、頼むから、もう降参するから! ね、もういいでしょ? ね?」


「お願いだよ、見逃してくれーっ!」


「……」


尚も無言が続いた後、運転席のドアを開けた少女。すると中からさらに幼い、幼女と言うべき年齢の子供を連れて出てきた。そして、




「ノエル様、剣です」


「うんっ」



「「!?」」


瞬間、戦慄に慄く盗賊の頭と警部。


…もしや子供に自分たちの首を切らせるのか、と思ったが違うらしい。剣を渡された子供はしかし、重そうに頭上へそれを掲げると、


「やられたら倍返し、だもんねっ」


次の瞬間には眩いばかりの白銀の光が、その剣に宿るように満ちていく。



「あ、あれは、あれはあっ?!」


「そんな筈はない、無いはずだ……魔法剣士とでも言うのか!?」


それを見た二人は、驚愕を通り越して、壊れた。


…目前の現象は二人も知っている。いや、知らない物はこの大陸にはいない。


しかし、なぜならば、それは、そんな筈は!





「違う、ノエル様は…」





二人の視界に、ターシャとノエルが点滅するように切り替わって…





「勇者なのです!」




「てえいっ!!」



直後、爆発が放たれた!




『こ、こんな事ってーーー…っ!!??』



光に呑まれる中…盗賊の頭と警部の、最後の断末魔が響きわたる。



…悪党は二度敗れるのだ。



    

     * * *


な、なんだってーっ!!?

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