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雪が降った! の話









とある休日の朝。


「うはあああああ…!!」


猫の足跡亭の玄関前に出たアリシアは歓喜の表情に輝いていて、その目前にはうっすらと掛かった銀景色が。


この日、ベルデは初めて雪が降ったのだ!



「ちょっと遊んでくる!」


「はしゃぎ過ぎんなよー」


喜びのまま駆けだしていったアリシアを見送ったコウヤである。


「うう…寒っ」


…彼女とは対照的にコウヤは気だるそうだった。


なにしろこれからの雪かきの事を思うと気が重くてしょうがないし、何より寒さが! コウヤは寒さに弱かった。


いつも元気だが、今日は日頃の数倍位輝いているアリシアが多少羨ましい…


「…」


思うのだが、アリシアの元気の源とはなんだろう。砂糖だろうか。


それとも積もった雪に何か秘密があるのだろうか…

もっとも昨晩に雪が降り出した時からアリシアははしゃいでいたのだが、


「コウヤも遊ぼうよーっ!!」


「はしゃぐもんですかーっと」


…お子さまとは違う、コウヤは大人なのだ。


まあもうちょっと綺麗にしっかりと雪が積もればコウヤの反応も違うだろうけども。

こんな泥混じりのべしゃべしゃ雪のどこが楽しいのか、なーんてのは言わないのだ。


「いえーい!!!」


尚もはしゃぐアリシア。


「きゃっほーっ!!!!」


少し目を離していたコウヤが再び見た瞬間には、目聡く浅く雪が積もった所を発見して、彼女は腰からダイビングしてスライディングしていた。

…それに通行人達が目を丸くする。


「いーぬよろこーびーにーわかーけまわりー…」


コウヤがへったくそに歌を歌う間にもアリシアの元気爆発は留まることを知らず、玄関前の雪はどんどんかき混ぜられていって泥混じりの汚い色に。


「…犬なのか?」


そして形容しがたい色のペーストとなったそれを、彼女は長靴を履いた両足を使って押し出していって…この瞬間、アリシアは人間除雪機となっていた!


ーーそんな所に、である。


「おーい!」


「ん?」


遠くからこちらに向かい掛けられた声…そして小さな影がこちらに走ってやってきた。


「コウヤーっ! アリシアちゃーん!!」


「ノエルじゃないか。どしたん」


「えへへ、雪が降ったからみんなで遊ぼうと思ったの! だけど……」


言いながらノエルが見ると…そこは最早一面の泥畑と化していて、


「アリシアちゃん駄目だよー、みんなで雪合戦しようって思ってたんだから」


「ああ! それも楽しそうだった!」


失敗! あちゃーっ!! とショックを受けたアリシアに、ノエルも苦笑いだった。


そしてノエルも交えて、雪遊びは尚も続けられて…


     * * *



「しもやけだよーっ!」


「あはは…」


きっかり三十分後。遊ぶべき雪も無くなって渋々中に入ったアリシアだったが、待ち受けていた状況はその様な物であった。


「言わんこっちゃねーの」


「むーっ!!」


口でそう言って見て、そして表情は意地悪げに。けれども優しくストーブを近づけてやるコウヤだったのだ。

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