カノジョの悪戯心
「…」
…メロンソーダの入ったグラスの縁をつつつ、となぞる。
こうするにも思っての事があるのだが、それにロックは気付かない。
場所は目抜き通りの喫茶店。一等地にあるこじゃれた店だ。
私がここに来たのは、話がある、と、この男に呼び出されての事だった。
「……」
…再びグラスの縁をなぞる。
目前の男は果たしてこのメッセージに気付いてくれるだろうか。
「…ご注文の品をお持ちしましたぁ」
ウェイターさんがやってきて、ロックの目前に一枚のプレートを置いた。
…そして早速彼は食べ始めた。
ーー相変わらず食べ方が汚い。
アイスクリームの載ったフレンチ・トーストは目前の男のお気に入りだが、こうして呼び出しておいて自分だけ食べる、と言うのはどうかと思う。
「…はあ、」
思わずため息が出た。
まあ、彼のそんな所も、相手は幼馴染であるからして私は知り尽くしている訳だが。
「り、リエールちゃん」
情けない。本当に情けない。
少し相手の態度が尖っただけでここまで慌てふためくのだ。ーー今日、私が胸に秘めてきた言葉を告げたら、この男はどんな反応をするだろうか。
…そんな所が可愛いなんて絶対に思ってない、筈である。
「や、やっぱり駄目かなあ」
「…何が」
この日、ここに来て私は初めて口を開いた。
「ーーごめんっ!!!」
「…」
「本当に俺がバカだった! 許してくれえっ!!!」
「……」
…本当に鈍感である。
本当に脈がなければ、相手が大学の先輩からのお誘い(自慢ではないがけっこーなイケメンだ)を放り出して駆けつけたりなんかしない。
「…何に、どうして、そして何?」
「…怒るかもしれないけど、でもっ」
「…」
友人に頼んで少し試しただけだったのだ。
関係は良好そのものだったが、進展がない。そんな所への友人の提案。
私もそれに乗って、そして…
…
…まさか本当に一夜を過ごして、しかも彼のチェリーが頂かれてしまうとは思ってもいなかったが。
「…リエール」
「…」
「俺と、もう一度やっていってくれないか」
…目当ての言葉が遂に出た。
それに対して、私は……
「…」
「…」
「…」
「そ、その」
「ロック」
「な、なに?」
「…私の値段は高く付くよ」
「はい?」
ーー決めた。この言葉はしばらく保留だ。
その方が、いい気がしたから。




