日常に戻るの話
アルグランデでの戦いが終わり、コウヤは猫の足跡亭へと帰還した。が…
「「むー」」「…」
出迎えて早々むくれるアリシアとノエル。それには理由があった。
「おーみーやーげー!」
「悪い、忘れちまってた…」
「むーっ!!」「うーっ!!」
…コウヤはおみやげを買うのを忘れていたのである。
「埋め合わせとしてお菓子を要求する!!」
「まあ、明日からな」
「やったっ」
一転、喜びにジャンプするアリシア。
「…でも、コウヤが無事に帰ってきてよかったっ」
ほっと一息ついた様な顔でノエル。
「ありがとな、ノエル」
「えへへ、コウヤ。お帰りなさい!」
「ありがと〜!!」
その言葉に感極まって、コウヤはノエルをハグしたのであった。
「わっわっわっ」
ビックリした様子のノエルは顔を赤らめながら、そして嬉しそうである。
「あっ…お、お帰りなさい!!」
負けじとアリシアもそう言ったのだったが、
「本当にそう思ってるかー?」
「ほ、ほんとだよーっ!」
「ふ〜ん」
「そうだよ? 明日からまたコウヤのお菓子が食べられるんだもん。こんなに嬉しい事は無いよ!」
「アリシアはお菓子の事ばっかりだな〜…グスン」
「ちっ違うもん、コウヤが帰ってきてくれて嬉しいんだもん!!」
声を作りながらのコウヤの言葉に、全力でそう返したアリシアである。
「分かってるよ。意地悪してごめんな」
「むーうっ!!」
「あーっ、アリシアが怒ったぞーっ!」
ぽかぽかと叩くアリシアの攻撃にそう言いながら顔を伏せるコウヤ。
…本当は、余りに久しぶりなアリシア達とのやり取りに涙が滲んでしまったのであった。
そしてそんな時、叩くのをやめて思い出した様にアリシアが取り出したのは一冊のスクラップ・ノート。
「これね、コウヤが新聞に載ってたの!」
中を開いて見せてくれると、そこに貼られていたのはアルグランデ紛争を伝えた新聞記事の切り抜きであった。
「おお…」
手にとって改めていくコウヤ。
最初に貼られていたのは開戦速報の号外で、戦闘の詳細が書かれた次の日の物が続くと、その次がアルリア襲撃を報じる記事。
「コウヤから電話があった時は本当に安心したんだっ」
思い出す顔でアリシアは言った。
ーーページをめくっていく。
…日々移りゆく戦線、双方の戦力状況、その日の被害。
そしてエリーゼが決闘をしたときのリバティー紙の特集ーーコウヤと〈シロガネ〉の写真も小さく載っていたーーと、セレスティアの反攻作戦の開始を伝える記事、…そして停戦。
こうして読むと、コウヤも感慨深かった。
最後には終戦と〈ブリック〉撃破を記念する祝賀会の報道である。
堂々と掲載された、あの夜明けの戦いに参加した両軍の全員が集まった記念の集合写真。…そこにはコウヤの姿はない。
「…」
式には確かに招かれた。だが、公的にはあの戦争に参加したコウヤの存在は、相応しくないものとして抹消されていた。
思うところが無い訳では無いが、まあ割り切っていた。最初から最後まで巻き込まれただけだったのだ。
「…、」
それでもコウヤは振り返る。あの一ヶ月の戦いを。
ーー仲間達との記憶を。
「…思い出はちゃんとある、もんな」
敬礼の形に手を作って、コウヤはそう呟いてみた。
「…それじゃあタイミング合わせて、だね」「うん」「…ん」
「?」
ふと聞こえてきたみんなの声、それにコウヤは顔を上げた。そして…
「「「せーのっ」」」
「「「おかえりなさい!!!」」…なさいっ」
「…おうっ」
ーー再び始まった日常。それにコウヤは改めて戦いの終わりを感じたのであった。




