夏休みといえばの話
「アリシアー」
「なにー?」
昼下がりのこと。猫の足跡亭、アリシアの部屋。
非番のコウヤは作ったお菓子を持ってきたついでにその話題を切りだそうとしていたのだが、
…ラジオが流れる中、クッションに寝転がったアリシアは足をパタパタとさせながら子猫と猫じゃらしで遊んでいる。
「あれはやったのかいあれは」
「な、何のことかなあ」
とぼけるアリシア。
「しゅ〜く〜だ〜い〜」
「ぴゅ、ぴゅーっ♪」
おどけたコウヤのその言葉に、アリシアは下手くそな口笛を吹いてみたりした。
「夏休みも残り僅かだし聞いておこうと思ってな」
カレンダーの日付は夏の半ばを過ぎていたのだ。
「じ、自由研究はばっちりだもん。ミーちゃんの成長記録だもん?」
アリシアは強弁した。
ミーと呼ばれた子猫はお構いなしで、猫じゃらしをバシバシとやりながらかぶりついている。
「そんなこと言ってたらお菓子抜きだぞー…」
「ひっ、非道い!!」
最終手段をちらつかせるコウヤに、アリシアはついに降伏した。
* * *
「えーっ!! リリスちゃんとノエルちゃんもう宿題終わってるの?!」
「…ん」
「あはは…」
翌日、勉強会と言うことで集まった三人。
「みんな頑張ってるんだぜー」
人数分のオレンジジュースを置きながらコウヤは言った。
「お願い宿題写させてぇ!」
「…あっ」「えーっと」
アリシアにそう言われたリリスとノエルは困ったようにコウヤを見た。
「ダーメだぞ」
「うぎゃん!」
撃沈するアリシア。
「俺より頭良いんだからさあ」
「九九の書き取り面倒くさい〜っ!」
「漢字とか無いんだからいいじゃん」
「知らないけど単語のスペル覚える奴のがあるもん」
そう言うコウヤも宿題は最後までやらない派であったが。
「魔法のなら難しいけど楽しくていいんだけどなーあ」
言いながら、筆記用具と“夏休みの友”と書かれた問題集を準備するアリシア。
…そして数時間後。
「出来た!」
夕方、下に降りていたコウヤに階段を駆け下りて見せに来たアリシア。
「どれどれ…」
勉強が苦手なコウヤもこのレベルなら得意の内である。…が、
「ん?」
…それに気づいてしまったコウヤ。
「ど、どうしたの」
「アリシア…」
言いながらコウヤは問題点を指し示した。
算数の問題はローマ数字であるためコウヤにも分かるのだが、見ると一番上の回答欄が空白で、全部答えが一個下にずれて書いてしまっているのだ。
…問題部分と回答欄が別々の冊子に分かれている為起きる悲劇といえた。
「書き直し!」
「うぇーっ!!??」
…アリシアはへなへなと崩れ落ちた。
「今度は俺も手伝うからさ」
「うーっ!!」
半泣きで唸るアリシア。
ーーこうしてアリシアの宿題片づけは夜までかかったという。




